指定された単語を含む短文を作るという問題(短文作成問題)は、中学入試でもそれなりに出題されます。
その時の注意点として、私が授業で指摘しているポイントは次の通り。
1.主語・述語がしっかり対応した文を作る
2.指定された単語を理解していることをアピールする
もちろん、字数制限があればそれに従わねばなりませんが、そんなことは指摘するまでもないでしょう。
1.主語・述語がしっかり対応した文を作る
小学生の答案を見ていると、意外に出来ていないことが多いのがこの点です。最近の授業で取り上げた「むしろ」という語を例に説明してみましょう。
むしろ本を読みたい。
どうですか?かなり唐突な感じがしますよね。
主語が示されていませんし、後ほど説明する「単語の用法の理解」も示されていないのが、その原因です。少なくとも、主語と述語はしっかり対応させて欲しいですね。
私はむしろ本を読みたい。
一歩前進しました。細かいことを言えば、「私は」という部分は「主語」というより「主題提示」ですが、中学であれ大学であれ、受験レベルでそんな細かいことは気にしなくて構いません。
あと、「文」になっていないものはもちろんダメです。言い換えれば、「句」や「節」のレベルで止まっていて「短文」にすらなっていないものは不可だということです。
2.指定された単語を理解していることをアピールする
試験一般に言えることですが、もっとも大切なのは、採点者に「理解している」ということをアピールすることです。例えば、英文和訳の試験問題なら、こなれた意訳なんて目指すべきではありません。文法構造や単語の理解を示す直訳の方がはるかによい。(もちろん、それは試験政策上でありまして、試験を離れて勉強する際は、そんなセコいことは考えなくてよいと思います。)
そんな考えから、中学入試における短文作成でも、「私はこの単語・表現の使い方を知っていますよ」とアピールしてもらうよう指導しています。美文や名文をものす必要は全くありません(そもそもそんなのは短文じゃ無理だ)。少々不細工な文章でも構いませんから、しっかりと語の理解をアピールするべきです。
先程の「むしろ」という表現を考えてみましょう。
明鏡国語辞典によると、次のような語義が示されています。
二つの事柄のうちどちらを選ぶかと言えばこちらの方がよりよいという意を表す語。どちらかといえば。
私が思うに、この語のポイントは、
「二つの事柄を比較・選択する際に使うということ」
「積極的に選択しているというより、消極的に選んでいるというムードがあること」
の二点でしょう。
もちろん、小学生がそこまで明確に意識化する必要はないと思いますが、指導する側としては、さりげなくその辺りを意識できるように持っていきたいところです。
いままでの要点を前提にしますと、
私は音楽を聴くより、むしろ本を読む方が好きだ。
といったところが、入試問題の解答としては適切でしょう。
誰ですか?ダジャレを書きたがる人は。
むしろの上に座って、犬の毛をむしろう。
試験では0点です(笑)。