お盆も過ぎ、ようやく8月も終わりに近づいてきました。例年、8月は仕事漬けなので、9月が待ち遠しいんですが、あと少し頑張っていきたいと思います。
さて、今日は言葉についての話。街で見かける表現で、すこし気になったものを取り上げたいと思います。
下の写真は、先日、某所を歩いていて見かけた看板です。
「放置自転車は、やめましょう。国土交通省」
この表現、何となく引っかかりませんか?私には、どうも落ち着かない表現に見えます。その理由を考えてみましょう。
日本語の場合、原則として連体修飾語(名詞を修飾する語です)は、名詞の前に置かれます。大型の自動車を表現する場合、「自動車大型」とは言わず、「大型自動車」と言いますよね。
とすれば、「放置自転車」とは、「放置されている自転車」と考えるのが自然であり、「自転車の放置」とは考えにくい。それゆえ、この看板の表現だと、「放置されている自転車は、やめましょう」という妙な言い方に思えてしまう、というわけです。
純粋にこの文だけを取り出して考えると、単なる修飾語の「放置」ではなく、主たる名詞(被修飾語)の「自転車」に重きが置かれていることになる可能性が高く、文をさらに煮詰めると、「自転車はやめましょう」と解釈することも可能であるように思います。
もちろん、国土交通省は「自転車の放置」をやめて欲しいはずですから、看板を作成した係員も、文を作った後で、やや不自然に感じたのかもしれません。そこで、「放置」という風に赤文字にしたのかなと思うんですが、どうでしょう。
で、私の思う改善策です。
「自転車放置は、やめましょう。」として、主たる名詞(被修飾語)を「放置」にする。
「自転車の放置は、やめましょう。」として、主たる名詞(被修飾語)を「放置」にした上で、目的格を示す助詞「の」を差し挟む。一文字分のスペースがなければ、句読点を削ればよい。
こちらの方が、スムーズな文になると思います。
もしかすると、この看板には国道交通省の深慮遠謀があって、国交省は、本当に「自転車をやめましょう」と言っているのではないか。国民が、「自転車」のようなエコな乗り物に乗らず、「自動車」に乗りまくれば、道路・高速道路の建設・整備にジャンジャン予算が下りてきて、外郭団体もウハウハ、天下り先も沢山できて退職金も……。
いや、文章の解釈からそれて、妄想の域に達してしまいました(笑)。
写真を見ていただくとお分かりになるかと思いますが、この看板の横には、放置自転車のみならず、違法に駐車されている自動車まであるんですよね。看板にはどことなく空虚感が漂っています。