先日、イギリスの女性歌手エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)が死去しました。享年27歳。私自身、特にファンというわけではありませんが、彼女の歌唱力が近時の女性歌手の中でも傑出していたことは、まぎれもない事実でしょう。3年前にグラミー賞を受賞した際も、順当な感じで受け止められていたように思います(彼女自身に問題があって授賞式に出られなかったことは、異例中の異例として話題になりましたが)。
ドラッグ中毒やアルコール中毒、体中に施された稚拙な落書きのごときタトゥー、そして自らのキャリアを傷つけてゆくような失言・差別発言。
個人的には、彼女に、広い意味での「自傷傾向」とでもいうムードを強く感じます。「おそらく長生きはしない人であろう」と、妻とも話していた矢先の死去です。惜しまれる歌唱力ではありますが、ある意味彼女自身の選択であってみれば、やむを得ない気もします。
Amy Winehouse – Love is a Losing Game
さて、27歳の死去は、客観的に見てあまりにも早い死なんですが、ロックの世界では「厄年」とでもいうのか、この27歳で世を去った有名人が多くいます。彼・彼女らを人呼んで、「The 27 Club (27歳クラブ)」。
具体的には下記の人々。ロックが好きな方には説明不要の、60年代のカリスマ的存在です。
ブライアン・ジョーンズ(ローリング・ストーンズのメンバー)
ジミ・ヘンドリックス(不世出のギタリスト)
ジム・モリソン(ドアーズのカリスマ的ヴォーカリスト)
ジャニス・ジョプリン(ソウルフルな女性歌手)
少し時間枠を広げれば、カート・コバーン(ニルヴァーナのボーカル・リードギター)も27歳で死去。ブルース界に目をやると、ロバート・ジョンソンも27歳で死去しています。
ここはエイミーに弔意を表して、女性歌手のジャニスをご紹介しておきます。あちらで出会っているでしょうか。
janis joplin-move over
27歳というのはあくまでも象徴的な年齢でして、30歳までに逝去したミュージシャンという風に幅を広げれば、枚挙にいとまがないぐらいのミュージシャンが存在します。
無軌道な生活が祟って早死にした人、自ら死を選んだ人、殺された人、色々いますが、自らの才能一本で人気を集め、常に衆人環視の環境下で生活するという人生は、やはりストレスフルなものなのでしょうか。
私としては、死の淵を覗き込みながら、そこから戻ってくるミュージシャンの方が好みです。ドラッグでボロボロになりながらも、すべての生活を失いながらも、しぶとく曲を作り、演奏し、人前に立つ。そして、いつしか人生の難局を切り抜けるようなミュージシャンです。例えば、キース・リチャーズ。例えば、エリック・クラプトン。
有能なミュージシャンには、「夭折クラブ」なんかではなく、ボロボロでも長生きする「ロックおじいさんおばあさんクラブ」に入って欲しい。真剣にそう願っています。