塾とは何の関係もない話ですが、ロバート・ジョンソンというブルース・シンガーがいます。かつては、ロバート・ジョンソンを知っている人というと、戦前ブルース愛好者、または、かなりの音楽マニアというのが相場でしたが、今はロック・ミュージシャンが言及することも多いので、意外にファン層は広いのかもしれません。
詳しいデータはWikipediaをご覧頂きましょう。
ロバート・ジョンソン – Wikipedia
1911年誕生、1938年死去(27歳)。女性問題で毒殺されたというのが通説なんですが、本当のところはよく分からない。これだけでも、何やら凄そうなブルースマンなんですが、実際に曲も凄い。
上記Wikipediaにも紹介されていますが、「クロスロード伝説」というのがあります。ある時期を境に、ロバート・ジョンソン、猛烈にエモーショナルな表現力を身に付けたようなんですが、これを評して周囲の者曰く、「十字路(十字架に通じる)で悪魔に魂を売り渡し、それと引き換えにブルースを身につけた」と。
戦前ブルースの場合、録音がまともに残っていないことが多いんですが、ロバート・ジョンソンの場合、夭折した割にはちゃんとした録音が残されています。といっても、27年間の生涯で、29曲(全42テイク)だけですが……。
私が高校生の頃は、ロバート・ジョンソンのアルバムと言えば、2枚しかありませんでした。いずれのジャケットもロバート・ジョンソンを描いたイラストです。その頃は、写真が残っていないとされており、ロバート・ジョンソンの正確な風貌がよく分からなかったんですね。私も1枚だけ所有していたアルバムを何度も聴いて風貌を想像していた次第。
こんなジャケットです。
キング・オブ・ザ・デルタ・ブルース・シンガーズ
ロバート・ジョンソン
今では研究が進み(米国ではポピュラー音楽の研究が盛んです)、写真も公開されています。下記のアルバムジャケット参照。
The Complete Recordings
Robert Johnson
この『The Complete Recordings』、初めて全録音を網羅した作品で、1989年に発売された際は大きな話題を呼びました(と言ってもマニア内でですが)。私も発売前に予約した覚えが(笑)。英文120ページ程度・和文120ページ程度の小冊子が付属しております。ほとんど研究内容発表みたいな内容なんですが、ビッグネームの紹介文を引用しておきましょう。
キース・リチャーズの推薦文より引用
それにあのギターの演奏—ほとんどバッハを聞いてる感じだった。自分ではブルースを何とかやれるって思っていても、ロバート・ジョンソンを聞くと、同時に演奏しうたっているあのリズムを聞くと、「こいつにはきっと脳味噌が三つあるんだ」って気になってね。
(中略)
あのレコードはいまかけても、初めて聞いたときと変わらず新鮮で、興味しんしんだね。誰もが、この29曲を知るべきだよ。誰もがロバート・ジョンソンのことを知るべきだ。
エリック・クラプトンの推薦文より引用
(ブログ筆者注:15歳の頃に初めてロバート・ジョンソンを聴いて)
拍子とかハーモニーの規則なんかにはしたがっていない。ただ自分のために演奏している。あまりにも鋭くものごとを感じとっていて、ほとんど耐えがたい気持ちでいるという感じだった。実際、長いことそのイメージがずっと続いたね。
最初は痛ましすぎてたまらないほどだったけど、半年ほど経ったらまた聴き出して、そしたら他のものは一切聴かなくなってしまった。25歳になるまでは、相手がロバート・ジョンソンのことを知らなかったら、そいつとは口をきかない。ほとんどそんな感じだったね。
クラプトン、どんだけ偏狭なんですか(笑)。まぁ、上記のロック界の大御所二人とも、宣伝で言っている訳ではないということがよく分かります。先駆者への真剣なリスペクトは、表現者の基本だと思います。
Robert Johnson “Sweet Home Chicago”
ブルースのコンサートに行くと、この曲で大団円になることが多いんですね。シカゴがブルースの一大拠点であったということもその一つの理由だと思うんですが、この歌詞、よく考えてみると少々不思議です。
Oh baby, don’t you want to go
Back to the land of California
To my sweet home Chicago
帰りたくないかい?
あのカリフォルニアへ、
あの懐かしの故郷シカゴへ。
カリフォルニアとシカゴ?いや、メチャクチャ離れているんだけど……。聴衆には色んな土地の人がいるということを想定していたのかな?いや、でも州と都市を並列するのも変だしな。そもそも、戦前の黒人がそんなに大規模な移動をしていただろうか?うむむ、と高校生の頃は不思議に思っておりました。
答は意外に簡単。実は、カリフォルニア州にあるシカゴという小さな町のことを歌っているんですね(笑)。
keith richards blues acoustic
Eric Clapton – Stones in my Passway
先駆者への真剣なリスペクト。