大阪府立高校文理学科の入試問題分析(国語編)(2011年前期入試)

昨日(2011.02.23)、大阪府立高校の前期入試が実施されました。今朝の朝刊に入試問題が掲載されていましたので、少し感想を。昨年は数学について書いたので、今年は国語について。
(数学はブログ上で数式を書くのがとても面倒なのです(笑)。)

他科目と異なり、国語については、文理学科だけを対象とした問題が用意されています。他科目のように他学科と共通の問題ではないので、高めの難度になっているのかと思いきや、それほど高いレベルには設定されていませんね。

受験生やその保護者さん以外の方々にもお読みいただいているようなので、問題から少し幅を広げて、思うことを書いてみます。


大問【一】は、伊藤整の随筆『若い詩人の肖像』。梶井基次郎と志賀直哉について語るという内容です。梶井も志賀も私の大好きな作家ですが、中学生にはあまり馴染みのない作家かもしれません。伊藤整については、ちょっと詳しい方なら、『チャタレイ夫人の恋人』裁判を思い出されるかもしれません。文学界に大きな衝撃を与えた事件ですが、塾ブログなので深入りはしません。

伊藤整の鋭さは次の部分に表れていると思います。梶井基次郎から、志賀作品を書写しているという話を聞いて、感想を述べる部分です。

「書くことの技術、その字配りの中にある気息というものを理解しなければ何を言っても駄目だ、だからやって見るのだ、という技術的真剣さが彼の言葉に漂っていた。」
(カラーリングはブログ筆者による)

「技術的真剣さ」という部分に伊藤整の詩人たるゆえんを感じます。梶井基次郎は、もともとエンジニア志望で、旧制北野中学校(今の北野高校)を卒業したあと、第三高等学校(今の京大)理科甲類に入学します。その後、文学に目覚め東京帝国大学文学部に進学するものの、31歳で没。

注目したいのは、もともとエンジニア志望で理系の学生だったという部分です。この経歴が彼の文章に理系的なセンス、つまり、分析的なセンスを与えているように思うんですよね。制作姿勢にもそのセンスは表れていたはずで、伊藤整はそのあたりを敏感に感じ取っていたのでしょう。

さて、脱線しすぎましたが、問題の分析です。

受験生のレベルを考えたとき、問題はどれも平易です。取りこぼしは出来ないでしょう。あまり言うべき事がないんですが、小問(6)では、先述の「技術的真剣さ」という言葉が解答になっています。もちろん、この文章のキモがそこにあるからでしょう。


大問【二】は古文です。大人からするととても簡単に思える文章ですが、やや抽象的な内容の随筆ということもあり、受験生からすると、少し難しく見えるかもしれません。

文章の要旨は「桜や梅だけではなく、松や竹といった常緑植物の情趣も解すべし」ということですが、それがつかめるかどうかが、勝負の分かれ目。逆に、その要旨をつかめれば、小問(1)~(4)すべてが容易に解けたと思います。


大問【三】は日高敏隆の論説文。これも平易な文章、素直な問題です。日高先生は著名な動物行動学者(京大名誉教授)。一般人向きに面白い文章をたくさん残して下さっており、特に中学入試の世界では大人気です。読んで面白く、論理的にスッキリとしているので、確かに入試問題には最適です。とりわけ灘中学が出題してから(受験界での)人気が高まったように思います。

問題の分析を少々。

小問(2)は短文挿入問題。「そのかわり」という表現がどちらの短文にも入っているので容易です。短文と逆の(取引状態にある)部分を探せばOK。

小問(3)は選択問題。仮に本文を読まなくとも、理科的な知識だけで、アかエに絞ることが出来ますね。簡単すぎ。

小問(4)は指示語の問題。そのまま抜き出さず、50字程度に整形できるか否かが勝負。いい加減な抜き出しだとアウトでしょう。


大問【四】は漢字の書き取り問題。小学生でも解ける問題です。全問正解しないとなりません。


文理学科とはいえ、公立高校の入試問題ですから、あまり難解な問題にはならないと思っていましたが、予想以上に易しい問題だと思います。文理学科を受験する生徒の場合、満点近い得点を狙う必要があるでしょう。

今年の国語の問題を見る限り、難関中学の入試問題よりはるかに簡単かつ素直だと言えますから、入試対策としては、少し難しめの私立中学入試問題をやってみるとよいかもしれません(プライドが傷つくかもしれませんが……)。

今年は、英語についても書こうと思っていたんですが、またの機会に。