子供の読解力に関する勘違い

最近、子供が読解力を身に付けていく方法について、勘違いされている方が増えてきたのではないかと思うことが多々あります。その辺り、当塾のスタンスも含めてちょっと書いておこうと思います。

以前からよくある読解力向上に関する勘違い。それは、「優れた授業を受ければ、あっという間に読解力が向上する」という勘違いです。これは「読解力が足りないのは、優れた授業を受けていないからだ」という考えと紙一重であることもお分かり頂けるかと思います。

正直な気持ちを言わせてもらうと、これはとても甘い考えです。生徒さんも保護者様も今すぐ窓から投げ捨てて下さいね(笑)。

そもそも読解というのはとても「能動的」な作業です。人が手取り足取り教えてくれるのを待つという「受動的」な立場の対極にある。つまり、「自分から」文章に立ち向かい、筆者の伝えたいことをしっかりと読み取る姿勢が必要です。立ち向かうのは「文字」ですから、会話のように相手がこちらの理解力や顔色に合わせて内容を変えてはくれません。だから、書かれている文字・文章に真剣に集中することがまずなにより重要。

その際、自分の勝手な思い込みや独断は捨てねばなりません。真剣に相手の書いていることに耳を傾ける(いや目を傾けるというべきか)が最も重要。

逆に言えば、読解のコツはそれに尽きます。一字一句ゆるがせにせず、全力で相手の伝えたいことを汲み取る。それだけです。嘘だと思うなら、あなたの周りにいる国語のできるとされる人に聞いてみて下さい。上記と同じようなことを言うと思います。

そういう人がいないなら、「高学歴」とされるコメンテーターとか芸能人が書いた勉強に関する本を読んでみてもいいかもしれません(最近よくありますよね)。私は立ち読みするだけですのであんまり偉そうに言えませんが、ほとんど同趣旨のことを書いていらっしゃる本を何度か目にしています。

しかし、しかし。

その「一字一句ゆるがせにせず、全力で相手の伝えたいことを汲み取る」ということが、小中高生にとっては本当に難しいんです。おそらく私はもう4桁近い生徒さんを見てきたと思いますが、そこがスラスラできる人はすごく少ないですね。

書かれている文字全てに目を通すべきなのに、飛ばし読みをしていたり、勝手な思い込みで曲解していたり。比喩を比喩としてとらえられず文字通りの意味に受け取ったり、傍線近辺だけを読んでまったく筆者の意見とはかけ離れた内容を読み取ったり。

ただ、安心して欲しいんですが、そうした部分はトレーニングで改善可能です。つまりちゃんとしたトレーニングを積めば、読解力は向上する。

当塾では(宮田国語塾はもちろん完全少人数制宮田塾でも)、読解力向上を求める生徒さん達・ご家庭にそのトレーニングを提供しているわけです。もちろん、十把ひとからげに同じ伝え方をしているのではありません。各生徒さんの精神年齢や性格、持ち味、集中力は百人百様。

小学低学年で国語力・読解力の向上を目指す方々については、完全少人数制宮田塾の方で指導させていただいておりまして、私と副代表が直接の指導にあたっております。私ども二人で最大限5名を見るというのは、上記のような事情から経験的に割り出したシステムです。

生徒さんの勉強・文章に対する姿勢を私と副代表の二人で見、答案を二人でチェックし、修正すべき点をその子に応じた形で伝え、疑問があれば説明を加えて解消する。集団授業ではどうしても手が届かないところにリーチするには、どうしてもそれぐらいの規模になるという次第。

以上からお分かり頂けると思いますが、「何か目の覚めるような授業があって、それを受ければ読解力がめきめき向上する」なんて幻想は捨てて下さいね。講師のするどい読解を聞いて「へぇ〜なるほど、そういう風に読むんだ」と思っても、それは自分の読解力ではありません。別の文章を持ってきて同じように読めるようになっているかというと、まずそうはならない。

野球のビギナーが大谷翔平のプレーをいくら見ても、大した参考にはなりませんよね。野球の力は、日々地道な基礎トレーニングを積んで、球場で実際に試合をしながら身につけていくものだろうと思います(実際に大谷選手もそうしてきたはず)。大谷選手の試合を観ていたら野球の力がめきめき向上しました!そんなに世の中は甘くない(笑)。

読解もまったく同じです。「自分の力で」真剣に文章に取り組む。「自分の力で」筆者の伝えようとすることに迫っていく、その繰り返しこそが、確かな読解力につながっていく。

ですから、しつこくて申し訳ないんですが、「論説文はこうやったら絶対に読めるようになる!」「小説はこうやったら100%読めるようになる!」といった、何にでも対応できる「素晴らしい授業」があって、それさえ受ければどんどん成績が上がるというような簡単な話はありません。


読解力というのは、それを身に付けるのも、それを教えるのも、本当に地味な作業が必要なんです。中には爆発的に読解力や成績が上がっていく人もいますが、皆がそうではありません。なかなか効果が上がらず、こんなやり方でいいのかなと不安になることもままある話。

でもやっぱり古人の言う通り、学問に王道なし、誰だって地道にコツコツやるしかないんです。文章を読み解く力はそう簡単に身にはつかないかもしれませんが、身に付けばそれは一生役立つ力であるはず。というか、その力がないと中学入試であれ、高校入試であれ、大学入試であれ、難関校からはもう全く相手にされない時代が来ています。

当塾では、門を叩いてくれる生徒さんには、是非そうした力を身につけてもらいたいと思っております。

ただ、なにぶん当塾のような指導は地味に見えるせいか(笑)、当塾のスタンスが体験授業ではあまり伝わっていないことが増えてきたように思えるんですよね。そんなわけで、体験授業の方法も少し改善してみようかと考えております。