便利なYouTubeが人々の日常に入り込んでずいぶん経ちますが、反面、YouTubeが日常生活を侵食しているということも言えます。
一つ一つの動画が比較的短いうえに、途中で見るのを止められると思うせいか、ついつい次々と動画を見てしまいます。自分の興味分野にぴったり合ったものがタイミング良くサジェストされることを考え合わせれば、もうYouTubeは時間を喰いまくる非常に危険な装置だと評価しても過言ではありません。まあ、無駄が人生を楽しくしているということも言えますけれど……。
そんな中、いい意味で啓蒙的な動画を見ていると、ちょっと罪の意識が軽くなります。最近見つけた動画で、これは良くできているなと感心したのが、「ぴよぴーよ速報」というチャンネルが作成している『歴史的偉人が現代人を論破するアニメ』シリーズ。
哲学思想・経済思想・古代中国思想などが、子供にも理解できるレベルで分かりやすく説明されます。個人的には読んだり聞いたりしたことがある内容が多いんですが、「現代人を論破する」という切り口が新鮮であるのに加えて、偉人・思想家(リアルな肖像画)が現代人(いらすと屋のイラスト)とが会話しているというシュールな図柄が良くて、ついつい次々見てしまいます。塾で子供にどう伝えるかの参考にもなりますしね。
塾ブログに適した内容の動画をいくつかご紹介しましょう。
歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第3弾】 – YouTube
孔子先生のお話。
ルー大柴のような話をする人、現実社会ではあまり見かけませんが、ネットの記事なんかではよく見ますよね。私たちの仕事には、「小学生の子供にも分かるように説明する」ことが含まれておりますので、そういった話し方は絶対にしないように意識しています。
「辞は達するのみ」という言葉を、このブログのどこかで書いたなと思って調べてみると、2008年にこんな記事を書いていました。「ことばは意志が伝われば十分だ。余分な修飾は不要だ」というのは、「ことばは意志が伝わらねば意味がない」と言い換えても構いません。
歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第11弾】 – YouTube
次は法家思想家・韓非の主張。これは当塾としても、受験生にぜひぜひ見ていただきたい内容です。「努力する前にどう努力するべきかを知れ」という話なんですが、あさっての方向に勉強が進んでいるとの自覚がある受験生やその保護者様には、特にオススメ。中学受験生の場合はまだ幼いですから、周囲の人がこの観点を持ってあげる必要があると思います。
歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第16弾】 – YouTube
マルクスとエンゲルス。「物質的生活条件が人の思考過程を規定するが、そのことを意識できる人は少ない」という話です。
ゲームで勉強ができないならゲーム機を破壊すればいいだけ。スマホが気になって勉強できないならスマホを捨てればいいだけ。何度もこの話を生徒さんなどにしたことがありますが、実行する人はほとんどいません。ゲーム機やスマホの損失なんて、勉強機会の喪失に比べれば極めて些細なものだと思います。勉強してお金を稼げるようになってから何台でも好きなだけ買えばいい。
歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第25弾】 – YouTube
経済学者アダム・スミス。奉仕活動の無意味さについての話。
個人的には、奉仕活動(ボランティア)や寄附が無意味なものだとは思っていません。ただ、極めて危険な側面があることについては意識的である方がよいとも思っています。この動画はその「危険な側面」を説明するものだと思っていただくとよいかと。
実は関西の某有名中学で、アダム・スミスやケインズの考え方を平易に説明した文章が出題されたことがありまして、それ以来、折りにふれて授業の中で(小学生にも分かるような形で)経済学的な考え方にも言及するようにしております。
この動画では「ラーメン店」を例に出していますが、「塾」でも同じことが言えます。「無料塾」や「善意や良心だけに頼っているシステムの脆弱性」については、昨年こんな記事を書いていました。
歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第27弾】 – YouTube
再び『韓非子』から。『韓非子』っておもしろいですからね。これも塾と大いに関係のある話題。
論客が主君に何かを説こうとする時、難しいのは説くべき内容を考えることでも、その内容をいかに言葉に落とし込むかでもない。説くことの難しさは、「相手の心を読みとってこちらの説をそれにいかに合わせるか」にある、という話。
特に低学年の生徒さんの場合に言える事ですが、私たちが指導している勉強内容は、さして難しい内容ではありません。仮名遣いであったり、一桁のたし算であったり、初歩的な漢字であったり。
保護者様が実際に体験授業にご参加下さる際も、私たちは普段通りの指導を致しますので、「これだったら家で親が教えても同じだ」と思われることもあるように思います。もちろん、それには私たちの力不足という側面もあるでしょう。ただ、親が子に教えることと、他の大人が子供に教えることの間には、目には見えにくいものの、大きな差があることも事実です。
色々なお子さんを見せてもらってきた経験から、私たちには一応それなりに多くの引出しがありますし、何より「親以外の大人」から物を教わるという営み自体に、子供の集中力を高め、力を向上させるという契機があるからです。
そこをどう評価するかは人によって異なりますが、塾を経営なさっている方や、教職関係者のお子さんを当塾にてお預かりすることが珍しくなく、また私たちも自分の子を他塾に預けていることは、そのあたりの機微を示しているのではないかと思います。
さて、YouTubeはこれぐらいにして、6月も頑張りますか!