修飾語には二種類がある
小学生の答案や文章を見ていて頻繁に感じることをご紹介しましょう。修飾語の話です。
ただ、小学生向けの記事ではないので、小学生に説明する際は大人の方で噛み砕いてあげて下さいね。ひょっとしたら大人の方にも役立つかも知れません。
まず、修飾語には二種類があります。連体修飾語と連用修飾語です。中学生レベルの基本的な事柄ですが、一応定義を確認しておきましょう。
連体修飾語:体言(名詞)を修飾する語
連用修飾語:用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する語
「体」言に「連」なる修飾語だから「連体修飾語」
「用」言に「連」なる修飾語だから「連用修飾語」
と覚えておけば忘れないと思います。
あ、ちなみに「用言」は「活『用』する『言』葉」と覚えておいてくださいね。
連体修飾語はまず大丈夫
小学生の文章や答案を見ていてよく感じるのは、連用修飾語の配置のまずさです。連体修飾語についてそう感じることは稀なんですけどね。
ちょっと例を挙げてみましょう。まず「連体修飾語」から。
暑い日に長い橋を歩いて渡る。
文節に分けるとこうなります。
暑い/日に/長い/橋を/歩いて/渡る。
「暑い」は連体修飾語として「日」を修飾し、
「長い」は連体修飾語として「橋」を修飾していますね。
私の経験上、小学生でも、この修飾・被修飾関係を読み損ねたり、書き損ねたりすることは稀です。「暑い」が「橋」を修飾すると思うことは非常に不自然なので、そう解釈する小学生はいません。同じく、「長い」が「日」を修飾すると考えることもまずない。
これは、原則として連体修飾語は修飾される語(被修飾語)の直前に置かれるためだと思われます。
連用修飾語の配置には気を付けて
問題は「連用修飾語」の方です。こちらも例を挙げてみましょう。
よく文章の意味がわからないと言う。
文節に分けるとこうなります。
よく/文章の/意味が/わからないと/言う。
読んでみて何か不自然な、または割り切れない感じがしないでしょうか。もしそう感じる小学生がいれば、すごくセンスがいいですね。おっと、そう感じなくても問題はありません。さあみんな、宮田国語塾の門を叩こう!
いや、宣伝ではないのでした。この問題、本ブログ記事で解決してしまいましょうね。
一体どこに「割り切れない感じ」が残るのでしょうか。それは「連用修飾語」の「よく」がどこを修飾するか(どこに掛かっていくか)が不分明なところです。
この文には、「わからない」(動詞+助動詞)と「言う」(動詞)、二つの用言が含まれています。そして、「連用修飾語」の「よく」はどちらを修飾していてもおかしくありません。どちらでも意味が通る。
つまり、「文章の意味がよく(あまり)わからない」という意味にも取れるし、「文章の意味がわからないとよく(しょっちゅう)言う」という意味にも取れてしまいます。
こういう文を答案に書くことは避けた方がいいでしょう。採点者に理解がしっかりと伝わらず誤解を招くからです。ではどうすればいいのか。
実は簡単なコツがあります。それは、「連体修飾語」の場合と同じく、「連用修飾語」も修飾される語(被修飾語)の直前に置いてやるようにするということです。
試しに先程の文をもう一度使ってみましょう。
よく/文章の/意味が/わからないと/言う。
「文章の意味があまりわからない」場合
→ 文章の/意味が/よく/わからないと/言う。
「文章の意味がわからないとしょっちゅう言う」場合
→文章の/意味が/わからないと/よく/言う。
これだと採点者・読者にスッキリと伝わります。
もちろん文脈があれば、連用修飾語がどちらの用言を修飾しているのかを判断することは容易です。
国語がとても良くできる小学生。いつもテストでは満点。でも今日読まされているのはウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』。何言ってんのか全くワケワカメ。
この場合は、「よく文章の意味がわからないと言う」=「文章の意味があまりわからないと言う」と捉えるべきでしょう(分かる小学生がいたら恐い)。
国語がとても苦手な高校生。いつもテストでは赤点。心配してくれた教師が中学生向け教科書を持ってきてくれた。けど、何冊読んでも国語が苦手な感じはやっぱり拭えない。
この場合は、「よく文章の意味がわからないと言う」=「文章の意味がわからないとしょっちゅう言う」と捉えるべきでしょう(勉強頑張ろうね)。
しかし、答案という場では短い文しか書けません。つまり文脈に頼ることはできません。そんなとき採点者に甘えてはなりません。当塾の語録にあるんですが(笑)、「採点者は神」です。採点者に要らざる負担を絶対に掛けてはなりません。
連用修飾語の配置・類題
最後に類題。下記の文を文脈に合うよう適切な語順に直して下さい。
上司はいつも妻の料理がおいしいと言う。
文脈
上司は愛妻家で部下にしばしば妻の料理自慢をする。「昨日の唐揚げは絶品だった」「昨日の揚げ出し豆腐は本当に美味かった」「昨日のグラタンは最高だった」。
正解
上司は妻の料理がおいしいといつも言う。
上司の奥様が近所の総菜屋さんでしょっちゅう買い物をしていらっしゃることは黙っておくべきでしょうね(笑)。