慶應義塾中等部の国語問題に関する記事

仕事柄、国語関係のニュースにはできるだけ目を通すようにしています。今は便利な時代で、自分の興味分野に関係するニュースをまとめてくれるネット上のサービスを利用すれば、かなり合理的に情報収集ができるようになりました。ありがたや。

さて、先日のこと。「中学受験過去問に挑戦 慶應義塾中等部<国語>」なんて大人向けの記事を見かけたので、早速目を通しました。通常、こうした大人向けの軽い記事の場合、「読解問題」はあまり取り上げられません。著作権の問題をクリアするのが難しいですし、記事分量も多くなりすぎますしね。いきおい「知識問題」が取り上げられる事が多くなります。

さて、瞬殺してやろうと(笑)、読んでみたんですが、うむむ、どうもおかしい。問題文には、「言葉の使い方に誤りがあるものが4つある。」と記されているんですが、私の考えではどう見ても5つ誤りがあります。あれれ?

宮田国語塾、慶應義塾中等部に敗れたり?いいや、中学入試ごときに負けてなるものか。よろしければ、みなさんも一緒にお考えください。

問題:次のア~ケの文のうち、言葉の使い方に誤りがあるものが4つある。その組み合わせとしてもっともふさわしいものを、後の1~9から1つ選び番号で答えなさい。

ア 世間を騒がせた事件の真相が明るみになる。
イ 何を言ってもまともに相手にしてもらえず、とりつく島もない。
ウ 彼は気の置けない友人なので、腹を割って話すことができる。
エ 君に教えてもらった答えだけど、実際は違かったよ。
オ かつての友人の活躍を風のうわさに聞く。
カ 彼は押しも押されぬ球界の四番打者だ。
キ 明治の文豪である漱石は、先見の明がある作家だった。
ク 第一志望の学校に入学するため、寸暇を惜しまず学問に励む。
ケ 有名人の突然の訪問で、会場は上を下への大騒ぎとなった。

1.ア・イ・エ・キ
2.ア・ウ・オ・ケ
3.ア・ウ・カ・ケ
4.ア・エ・オ・ク
5.イ・ウ・ク・キ
6.イ・エ・カ・キ
7.イ・カ・ク・ケ
8.ウ・オ・カ・ケ
9.エ・オ・キ・ク

 

私が入試国語の観点からおかしいなと思ったのは次の5つ。

ア × 明るみになる
「明るみに出る」が正しい言い方。「おおやけになる」という意味です。

エ × 違かった
「違っていた」が正しい言い方。細かいことを言えば、「違う」という五段動詞を、形容詞として活用してしまっています。

オ × 風のうわさ
「風の便り」が正しい言い方。「どこからともなく伝わってくるうわさ」という意味です。

カ × 押しも押されぬ
「押しも押されもせぬ」が正しい言い方。「びくともしない、争う余地のない」という意味です。

ク × 寸暇を惜しまず
「寸暇を惜しんで」が正しい言い方。寸暇とは「わずかの暇」のことですから、わずかの暇も惜しんで学問に励んでいるという状況ですね。

解答が「4」だとはわかりますが、どうして誤りが5つあるのか?うむむむ。

と、記事の下の方にある画像を見てみると、カの選択肢が異なっています。

どうやら実際の慶応義塾中等部の問題では、
「カ 彼は押しも押されもせぬ球界の四番打者だ。」となっていたのに、
記事の方では間違って、
「カ 彼は押しも押されぬ球界の四番打者だ。」
と表記してしまっていたようです。

な〜んだ。ホッ。

別にこの記事の作成者を責めようというわけではありません。誰にでも表記ミスやタイプミスはありますし、私もやってしまうことがありますしね(ご寛恕下され)。

私が言いたいのは、「大人でも間違ってしまう・見落としてしまうような難しい言い回しを、中学受験生は覚えたり使ったりすることが要求されている」ということなんです。単純な知識問題でもこんなレベルであるわけで、いわんや読解問題をや。

ちなみに、この記事、発表時は上記のような間違い(転記ミス)があったんですが、数時間後に再び見てみると、しれっと間違いが修正されていました(笑)。誰かが突っ込んだのかもしれませんね(私ではありません)。

しつこいようですが、記事をけなしているわけではありません。責任をもって記事の正確性を保っていらっしゃるわけで、大いに好感を持った次第。

受験生の皆さんは、辞書で調べるなどして、自分で裏を取りながら勉強して下さいね。