登川誠仁氏(セイグヮー)を悼む

先程ニュースを読んでいて、セイグヮーがお亡くなりになったことを知りました。私、セイグヮーは100歳ぐらいまで唄を歌い続ける人だと勝手に信じ込んでいたので、80歳で逝去されたのは本当に勿体なく残念なことに思えてなりません。

誠小(セイグヮー)という愛称で呼ばれることの多かった、登川誠仁(のぼりかわせいじん)氏は、沖縄民謡の第一人者。唄巧者・三線(さんしん・沖縄三味線)の名手であるのはもちろん、誰からも愛される人格者でもありました。もちろん、直接の面識はありませんが、彼のもとに様々な人が集ったことや、琉球民謡協会の会長を務めていらっしゃったことは、その証左でしょう。

戦前生まれ世代の沖縄民謡歌手としては、嘉手苅林昌(かでかるりんしょう)氏や、喜納昌永(きなしょうえい)氏などが思い浮かびますが、どなたも既に他界されており、今回のセイグヮーの逝去は、沖縄民謡界からの戦前生まれ世代の総退場を意味することになります。セイグヮーのお弟子さんに知名定男氏という素晴らしい唄者がいますが、この方も昨年で引退。沖縄民謡ファンには何とも寂しい話が続きます。

私は沖縄の地を踏んだことがないにもかかわらず、あれこれと沖縄民謡のCDを聞いては沖縄芸能に思いをはせるのが好きなんですが、セイグヮーと嘉手苅林昌氏はやはり別格。三線と唄だけで出来上がったシンプルな島唄は、テクニックや唄の上手さもさることながら、究極的にはその人の才能や人格に全てが委ねられているもの(文学で言えば、和歌や俳句といった定型詩に似たイメージがある)。この二人はそういう意味でも別格なんですよね。

私などがあれこれ言うより、いくつかの映像をご紹介する方が適切でしょう。

嘉手久 – 登川誠仁

嘉手久(かでぃくー)というカチャーシー(ダンサブルで派手な曲だと思って下さい)の名曲。セイグヮー得意の三線の速弾き。

ヒヤミカチ節ー登川誠仁

この唄が昔から大好きなんです。歌詞がとてもいい。このサイトによると、「沖縄戦で荒廃した沖縄と人々の心を奮い立たせたいと、平良新助氏が作った歌詞に、山内盛彬氏が曲をつけたといわれる」とのこと。セイグヮーが唄うと、パワフルなメッセージが心に響いてきます。ちなみに「ヒヤミカチ」というのはウチナーグチ(沖縄語)で、「えいっ!と飛び起きる」ぐらいの意味です。

Seijin Noborikawa – Kunjan Jintoyo

先の曲と同じく『Spiritual Unity』から(このタイトルを見て、アルバート・アイラーを思い浮かべる人もいるかもしれませんね)。「精神的な団結」という言葉は、堅い言葉でありますが、セイグヮーのこの暖かい歌声を聴いていると、それが自然に成し遂げられているように思えてなりません。思わず涙がこぼれそうになります。
(※とてもいいライブ映像を見つけたので動画は差し替えました。)

セイグヮーのご冥福をお祈り致します。