シャマユ・ブレハッチ・グリモー・ポリーニ

AppleMusic(1ヶ月980円で音楽聴き放題のサービス)は私の生活と切っても切り離せないサービスになっています。ふと思い立って、しばらく見ていなかったクラシック系を探してみると、あれこれと興味深い新録音があるじゃないですか。

Bertrand Chamayou “Ravel: Complete Works for Solo Piano”

亡き王女のためのパヴァーヌ ~ラヴェル:ピアノ・ソロ作品集

ラヴェルって時々無性に聞きたくなる作曲家なんですよね。そういう日は一日中ラヴェルのピアノ曲を聴いて過ごすんですけれど、このベルトラン・シャマユの2016年度発売のピアノ曲集、そんな一日に最適だと思います。不勉強でシャマユのことは知らなかったんですが、フランスの作曲家をフランス人ピアニストが弾くのはやっぱりいいなあ。1曲目の “Jeux d’eau” からグッと引き込まれます。

異論は有ると思うんですが、ラヴェルのピアノ曲って、どこか歪んでいて狂気がかすかに潜んでいるのが好きなんですよね。シャープな人だけれど、どこかがひずんでいる。作られた狂気ではなく、否応なしににじみ出てくる狂気。

この年齢になると、歪んでいない素直な曲を聴くなんてアホらしくてかなわない。いや、ずいぶんひねくれた大人になってしまいました。

 

ラファウ・ブレハッチ “バッハ・リサイタル”

バッハ・リサイタル

2017年発売の最新盤。以前記事にした覚えがありますが、私にとってブレハッチといえばショパン。でも、バッハもいいですね。この盤だと、パルティータ第1番と第3番が特に好みです。心地よい音の奔流。

私の中で、バッハのピアノ曲はすべてグレン・グールドで再生されるんですが、これはもう多分死ぬまで変わらないと思います。その上に、他のピアニストが色を添えるという感じ。ブレ様ならあまり違和感なく聴けますね。

エレーヌ・グリモー  “パースペクティヴス”

パースペクティヴス

これも2017年発売の最新盤。グリモーは確かブラームスの何かを持っていたと思うんですが、よく覚えていません。というかブラームスにあんまり興味がないんですよね。以前、妻と某ピアニストのリサイタルに行って、ショパンの部はとても楽しく聴いたんですが、ブラームスの部はついついウトウトとしてしまったことが……。あとで妻にどんな演奏だったかと聞くと、妻もブラームスに入ってすぐ眠りに落ちていたとの由。あかんやん(笑)。

でもこの作品は良いですね。バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ラフマニノフなどなど、彼女の今の興味対象と思しき曲のアソート盤です。グリモーって美しい女性ですが、どことなく風変わりなところが興味深い人。精神的に特殊な傾向をもっていらっしゃるのか、狼と暮らしていたはず。この盤はリストの「エステ荘の噴水」が良かったな。

マウリツィオ・ポリーニ “幻想ポロネーズ、舟歌 ショパン後期作品集”

幻想ポロネーズ、舟歌~ショパン後期作品集

ポリーニ翁って、舟歌を録音してなかったっけ?ショパンの舟歌はいつでもツィメルマンを聴くので、うろ覚え。調べてみるとやっぱり昔一度録音していて私も音盤を持っていました。2017年発売のこの盤は新録音らしい。

ポリーニが立派なピアニストなのは言を俟ちませんが、そもそもショパンの舟歌(バルカロール)が、天才的な作曲だと思うんですよね。初夏の一日、船の上で寝転がり、水面を渡ってくる風を顔に浴びる。ゆるやかな揺れ。船体が水を切る音。水しぶきの香り。

何年か前、滋賀県は近江八幡の水郷で船をチャーターして遊んだことがあるんですが、家族で船に揺られていると、ショパンの舟歌が思い浮かびます。そして舟歌の情景描写がいかに的確なのかを思い知らされます。完璧と言っていい。

クラシック新録盤を縦糸に、隠しテーマ「水」を横糸に記事を書いてみました。

さて、GWまであと一息。頑張ろう。