Shazamの実力 “Strawberry Fields Forever”を通じて

出先で、特にカフェで仕事をしていると、たいていの場合BGMが流れています。ほとんどはどうでもよい曲なので聞き流しているだけなんですが、時に気になる曲が流れてくることがあります。

私が高校生の頃なんかだと、この曲誰の曲なんだろうと気になっても、なかなか正解が得られませんでした。レコード店(そんなものが昔はあったのですぞ)であれば、 “Now Playing”と表示された棚に再生中のレコードが飾られていたり、店員さんに聞いてみたりすることも可能で、情報が得られたんですが、店先やラジオでたまたま聴いた曲なんかだと、ほとんど絶望的なのでした。

検索エンジンが一般化してからは、断片的に歌詞を覚えておいて、帰宅してから(昔はスマホなんてなかったのですぞ)、家のPCで歌詞検索してみるなんてことをよくしていました。大体の場合はそれで演奏者やアルバム名が判明します。そんなレベルでも、当時は「素晴らしい時代が来たものだ」と大感動していたものです。判明したアーティスト名・アルバム名をAmazonで検索すれば即座にCDも購入できますしね。

それから少し後にはYouTubeに代表されるような動画サイトも一般化してきて、音楽をちょっと聞くだけならば、音盤を購入する必要もあまりなくなってきました。素晴らしすぎる。

そこからさらに時は流れ、平成時代も末となりました。今や音楽は「ネット配信」で聴くのが主流となり、レコードやCDを購入するのは「老人」もしくは「アイドルオタク」だけなんじゃないでしょうか(偏見ゴメン)。

やや塾ブログには好ましくない話題かも知れませんが、アダルト雑誌がコンビニに置かれているのは、ネットに疎い老年層向けだと聞いたことがあります。確かに恥ずかしい雑誌をわざわざ店頭で買わなくても、普通のPCリテラシーがあれば、そんな類いの動画をいくらでもネットで見られるわけですからね。


それはさておき、私が愛用しているのは、”Shazam”というアプリケーション。iPhoneでShazamを立ち上げて気になる音楽を聞かせると、あっという間に演奏者名・曲名を表示してくれます。

認識にかかる時間は数秒。長くとも10秒は掛からないですね。クラシック系は弱い気がしますが、ロック・ジャズ・ブラックミュージック・アフリカ音楽系だと、ほとんど「分かりません」という表示を見ることはありません。超・頼りになるヤツです。今まで何度このアプリケーションに新しい曲を教えてもらったか分からない。

最近は認識率が向上してきただけではなく、使い勝手も一気に上がってきました。AppleMusic(音楽聴き放題のオンラインサービス)と連携させておくと、認識した曲を自動的にプレイリスト上に加えていってくれるんですよね。便利すぎ。本当に、高校生の頃の自分に今の環境を見せてやりたい気分です。いいだろ〜。


どうしてこんな話をしているかというと、先日、某カフェでShazamの認識能力に舌を巻いたからなんです。

とある平日、朝から長時間Macに向かっていたんですが、たまには外で仕事しようとカフェに向かいました。そのカフェ、ヒット曲がかかるということはまず無く、少し「ズレた」音楽が流れていることが多いんです。最新ヒット曲でもなく、古いヒット曲でもなく、少しだけズレた感じ。

(歌謡曲が流れていることはないんですが)歌謡曲で言うと、AKB48でもなく、西城秀樹でもなく、山下達郎が流れている感じと言えばご理解いただけるでしょうか(笑)。

この日も、気になる曲が流れるたびに手元のiPhoneでShazamを立ち上げて、「おお、エラ・フィッツジェラルド、こんな曲を歌ってたんだ」とか、「ふむふむ、Mojo Boogie って元は J.B.ルノアが歌ってたんだ、後でジョニー・ウィンター翁のバージョンを大音量で聴こうっと」などと心の中で呟きながら作業を続けておりました(仕事しろ)。

そのうち流れてきたのが、「ポーッポーッポーッポーッ」というイントロ。そう、”Strawberry Fields Forever” です。ロック好きな人ならすぐ分かりますよね(無理です)。

この曲、The Beatlesの超・超・有名曲で、イギリス人に「あなたの好きなビートルズの曲」というアンケートをとると、たいてい1位になる曲です。こんなサイケデリックな、ある意味歪んだ曲を選ぶのがいかにもイギリス人らしいヒネ方だと私などは思います。

で、よく聞き耳を立ててみると、ビートルズのバージョンではありません。おっと、トッド・ラングレンが完コピした “Strawberry Fields Forever” じゃないですか。

トッドは私が大いに敬愛するミュージシャンの一人。ものすごく良質なポップソングを書く人なんですが、不思議とポピュラリティがないんですよね。反面、ミュージシャン仲間からの評価が異常に高い、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンです。

私は昔から彼の大ファンでして、かなりの数のアルバムを持っているんですが、その中に “Faithful” というアルバムがあります。

このアルバムのA面(昔のレコードには表面と裏面という概念があったのですぞ)は、トッドが幼い頃から傾倒してきたアーティストの曲を「完全にコピーする」という趣旨で作られていまして、具体的には、ビートルズ、ボブ・ディラン、ジミ・ヘンドリックス、ビーチ・ボーイズ、ヤードバーズの曲を、敬意を持って完全にコピーしています。だから “Faithful” 。しかも、全楽器を一人で演奏して多重録音するというマニアックさ(笑)。高校生の頃からの愛聴盤です。

「うわ、珍しいバージョンだな」と思うと同時に、「そうだ、Shazamの実力を調べてやろう」という気になりました。この完コピをしっかり判定できるなら、つまり、ビートルズとトッド・ラングレンのバージョンを聞き分けられるなら、Shazamは正真正銘、本物です。

さすがにジョン・レノンとトッドの声は大きく異なるので、ヴォーカル・パートの終わったところで、Shazamの認識を開始してみました。

すると、なんと数秒で、Todd Rundgren “Strawberry Fields Forever” と表示されるではないですか!Shazamすごい!どんなテクノロジーを使っているのかよく分かりませんが、音程やテンポだけで判定しているのではないということですね。

これからも付いていきます、Shazamさん!


お暇な方は聴き比べてみてください。

Strawberry Fields Forever – Restored HD Video

 

Todd Rundgren Strawberry Fields Forever