前回の続きです。
10月17日、ラファウ・ブレハッチ(Rafał Blechacz)の「オール・ショパン・ピアノ・リサイタル」を聴いて参りました。会場はシンフォニーホール。
前回にもご説明しましたが、今年はショパンの生誕200周年を記念するショパン・イヤー。加えて、10月17日はショパンの命日。この日は世界各地でショパン関連のコンサートが開かれていたのではないかと思います。2010年は「ショパン国際ピアノコンクール」の開催年でもありますしね。
そんな日の記念リサイタルとして、演奏者がブレハッチなら文句の付けようがありません。何と言っても前回ショパン国際ピアノコンクールの覇者ですからね。
実は、私と副代表は、4年前にも一度彼のショパン・リサイタルを見ています。尊大さとは無縁の謙虚な姿勢、堅実・丁寧な曲の解釈&演奏、そしてショパンに似ているとされるちょっと貴公子然とした風貌。私達は一気に彼のファンになったのでした。
それ以来、我が家では彼のことを「ブレ様」と呼ぶようになったんですが、最近では何も分からない息子もCDのジャケットなどを見て「あっ、ブレ様!」などと言うように……(笑)。
2006年のコンサートでは、ピアノ・ソナタ第3番(Op.58)の第3楽章に大きな発見をし大感激したんですが、これはまた別の機会に。
さて、2010年のプログラムは下記の通り。
<前半>
1.バラード 第1番 ト短調 Op.23
2.ワルツ 第2番 変イ長調 Op.34-1《華麗なる円舞曲》
3.ワルツ 第3番 イ短調 Op.34-2《華麗なる円舞曲》
4.ワルツ 第4番 ヘ長調 Op.34-3《華麗なる円舞曲》
5.スケルツォ 第1番 ロ短調 Op.20
<後半>
1.ポロネーズ 第1番 嬰ハ短調 Op.26-1
2.ポロネーズ 第2番 変ホ短調 Op.26-2
3.マズルカ 第26(27)番 ホ短調 Op.41-1
4.マズルカ 第27(28)番 ロ長調 Op.41-2
5.マズルカ 第28(29)番 変イ長調 Op.41-3
6.マズルカ 第29(26)番 嬰ハ短調 Op.41-4
7.バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
<アンコール>
1.ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53《英雄》
2.ノクターン 第20番 嬰ハ短調 KKIVa-16《レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ》
3.マズルカ 第30番 ト長調 Op.50-1
1曲目のバラード第1番。演奏が始まってすぐに気づきました。4年前に比べて驚くほど成長している!以前の演奏よりもはるかに深く勇壮にショパンの諸作品が彫り込まれてゆくのが分かります。隣に座っている副代表も全く同じ感想。
どの曲の演奏も新鮮さと深みがあり、聴いていて色々な発見をしたんですが、とりわけスケルツォ第1番は、こんな形の曲であったのかと蒙を啓かれた気がしました。
後半終了後も、オーディエンスのアンコールを求める拍手は鳴り止まず。そっと目頭にハンカチを当てるご婦人が多いのも、ショパン在りし日を髣髴(ほうふつ)とさせます。スタンディングオベーションの人もかなりいて、アンコールはポロネーズ第6番英雄。本当に若々しくて力強い「英雄」です。ノクターン第20番はショパンの遺作とされる作品で、過度に感傷的な演奏になることが多い曲であるように思うんですが、彼の場合、過度なセンチメンタリズムが排されていて素晴らしい演奏でした。
もしショパンがタイムマシンで現代にやってきたら、ラファウ・ブレハッチを是非聴かせてみたいですね。彼好みの解釈・演奏であろうと思います(勝手な想像ですが)。
ショパンの生誕200周年を記念するショパン・イヤー、その年のショパンの命日を記念するリサイタルとして、世界最高の演奏を聴けて本当に大満足。私も副代表も幸せな気分でシンフォニーホールを後にしました。またブレ様の演奏を聴く機会がありますように。
ラファウ・ブレハッチ / 前奏曲 第24番 ニ短調 Op.28-24
激烈にして優美。最後の低音3連打がいつまでも胸に残ります。