中学入試模試問題への苦言

ちょっと苦言を呈したいことが。某進学塾の模試のことです。
(偉そうで済みません、テヘッ。)

当塾の場合、生徒さんが大手塾の模試を受けてきて、生じた疑問点を解消すべくその問題を持ってくるということがよくあります。

原則として、私の方で問題文・問題・解答・答案のすべてに目を通して、解答の作成方法や、問題との距離の取り方(志望校の問題と関連性が高いからちゃんと復習しておくべきだとか、悪問だから無視してよいとか)を伝えるようにしています。

何度かこのブログで取り上げているように、正直に言って、(特に中学入試の場合)実際の入試問題と比べると、著しく問題のレベルが低く、生徒の学力を上げるのに適した問題でないことがままあります。

加えて、私の方としても多大な労力がかかるので、あまり気乗りのしない作業なんですが、現時点では対処可能な範囲において、模試の問題についてもアドバイスしているという状況です。


で、某進学塾の模試。あまりにもひどすぎて、もう何とアドバイスしてよいのやら困惑するレベルなんです。ほとんど受験生を馬鹿にしているんじゃないだろうかという域に達しているんですよね。

最近受け取ったもののなかでは、尼ヶ崎彬氏が「舞踊に関する身体観」を論じた文章を題材とした問題があったんですが、この文章、大学入試センター試験の文章より難解なんです。おそらく普通の教養レベルの大人が読んでも、意味はチンプンカンプンなんじゃないでしょうか。

私はこうした文章を読むのが仕事ですし、舞踊も好きですから、別に難しくは感じません。しかし、対象は小学6年生ですよ。題材とされる「舞踊」や「身体論」に興味を持つ小学6年生も稀でしょう。

こうした文章を、限られた試験時間の中で小学6年生が的確に読み抜いて、問題に取り組むということは、全国トップレベルの受験生を念頭に置いても、ほとんど期待できないと思うんですよね。私の経験上。

とすると、この模試問題は一体誰のためのものなのか、全く分からない。受験生は意味不明な文章を前に焦りまくる。保護者さんはどうしてウチの子どもは出題文章を読み取れないのかと焦る。指導者は大学入試より難解な文章をどうやって小学6年生に説明しようかと悩む。私はそうした問題を持込まれてどう対応したものかと四苦八苦すると。

いや、私の場合仕事ですし、楽しくやらせてもらっているので全然構わないんですけどね(笑)。


本当に、模試を作成する方々には、受験生の立場に立った問題作成をお願いしたいと思うんですよね。具体的には、各中学の求める国語力から逆算した問題こそが求められているはず。まあ、言うは易く行うは難き事業なんですが……。

先述のようなレベルの文章は、難関中学といえども「絶対に」出題されませんので、ご安心いただきたいと思います。しつこくこのブログで書いている内容ですが、受験する学校の過去入試問題こそが、「求められる国語力」ひいては「身に付けるべき国語力」を示してくれています。模試に振り回される必要はこれっぽっちもありません。

模試が原因となって、地に足のついていない国語の勉強に走っていってしまう受験生・ご家庭が多いんじゃないかと危惧しています。そうした方が少しでも減ればと思い、記事にしてみた次第ですが、とりわけ受験直前の小学6年生などは、妙な模試問題に悩む時間があるなら、厳選された過去問にこそ頭をひねって欲しいと考えています。