海上保安学校の学校祭(五森祭)に行ってきた話

今日はふとしたきっかけから参加した学校祭の話をば。

一昨日の日曜日、午前中は自由時間が取れたので、早朝から京都府北部をウロウロしていました。もちろんバイクです。いつものことですが、目的地は特に決めないので、空いていそうな道・楽しそうな道をつなぐようにして走ります。天気もいいし、昼過ぎまでは自由に過ごせるとあって気分は最高です。

鼻歌交じりにバイクを走らせているうちに、何となく舞鶴湾でも見て行こうかなという気持ちになりました。ついでに舞鶴名物の赤レンガ建築物でも(走りながら)見て帰るか。

で、バイクを停め、iPhoneのGoogleマップで目的地を設定していると、「海上保安学校」という文字が目に入りました。海上保安官って重要なお仕事だと思うんですが、よく考えてみると自分の身近にはいない存在です。もちろん、海上保安学校がどんな学校なのかも全く知りません。

外側からでいいから一度校舎を見てみようかな、という気になり、目的地を京都府舞鶴市長浜に設定します。走ること数十分。海上保安学校のそばまでやって来ました。

日曜日の朝ということもあり、休日の学校特有の閑散としたムードを想定していたんですが、あれれ、自動車が渋滞しているじゃないですか。どうやら学校の正門前まで自動車が列を作っている模様。一体何があるんだろう?何でも首を突っ込んでみる性格なので、車を横目に渋滞の先頭までスパッと出てみます。

すると、海上保安学校の学生さんが自動車を学校敷地内に誘導していました。

「あの~、すみません。今日は何かイベントがあるんでしょうか?」

「ハイッ!本日は『五森祭』という年に一度の学校祭の日となっております。」

「そうでしたか。ひょっとして私のような一般人も参加してよろしいんでしょうか?」

「どうぞ、ご参加下さい。」

学生さんの対応が大変礼儀正しくて、何だか嬉しくなってしまった私は、厚かましくもバイクを構内に案内してもらい、入構することに。本来なら自動車の最後尾で待つべきなんですが(普通はそうしています)、まさか学校祭を開催しているとは露知らず、渋滞先頭に出てしまいました。また最後尾に戻るのも逆に迷惑であろうと、案内してくれた学生さんの指示に甘えて入構。もちろんドライバーの方々には会釈を忘れずに。

で、海上保安学校に入構してすぐ気付いたんですが、何となくピリッとというか、キリッというか、そういうムードがあります。校舎の作りや、集まっている人々もそういうムードに寄与しているんでしょうが、何より学生さん達の雰囲気がいいんです。質実剛健な感じがあって、身体の挙措も言葉遣いもピシッと折り目正しい。チャラい感じ・たらーっとした感じの学生は皆無です。

彼ら・彼女らの制服がそう見せているだけではありません。私も色々な生徒さんを見てきていますので、その人の持っている本質を見抜くことについては、それなりの自信があります。この学校の緊張感は、学生全員が近い将来「海上保安」という国家の重責を担う自覚を有していること、また、学生とはいうものの給与が支給され公務員としての自覚が求められていることによるんでしょう。防衛大学や防衛医科大学などと同じ理屈ですね(訪問した事がないので想像ですが……)。

海上保安学校が、レベルの高い学生さんたち集まる学校だということを肌で感じて、俄然興味が湧いてきました。舞鶴近辺をバイクでぷらぷら走る予定は変更です。学校内を色々見て回らせてもらおう。

こういうのって「縁」だと思うんですよね。用もないのにたまたま舞鶴をブラブラしていると、そこにたまたま海上保安学校があり(今の今まで舞鶴に海上保安学校があることを知らなかった)、たまたま年に一度の学校祭が開催されていて、たまたまその前を通りかかって。私はこういう時、いつも流れに身を任せるようにしています。何らかの縁か運があって、自分の前に何かが現れてくれたんですから、それを楽しまない手はない。


校舎は日本海から湾入した舞鶴湾のど真ん中と言っていい場所に構えられています。校内に港湾施設があるというより、港湾施設に学校が付属しているというような感じですね。どの校舎も派手さはありませんが、きちんと管理が行き届いているのはさすが。

いただいた五森祭パンフレットから。

受付でもらったパンフレットを片手に進んでゆくと、大きな船が見えてきます。パンフレットを見ると、巡視船「みうら」という船らしく、本日は一般公開されているとの由。みうら号の前の受付で氏名住所などを記入して乗船しました。私の場合、船って旅行の時にしか乗らない乗り物ですから、なんだかワクワクするんですよね。あの燃料やオイルの匂いも好きなんです(妻はあれが嫌でフェリーによる旅を却下されるんですが……)。

立派な船。船内も管理が行き届いていました。

船室を見学したり、甲板を歩いてみたり。停泊中の船とはいえ、海を渡る風を浴びながら船上を歩くのはとても楽しい。この船は学生達の実習船になっているんですが、ここでの教育・学習が日本の海上安全を守っているのだと思うと、少し厳粛な気持ちにもなります。

学生さんを捕まえて(厚かましくてゴメン)、船の速さやエンジン形式を聞いてみたんですが、やっぱりキッチリした感じの応答で、いい学校だなと思うことしきり。

売店で買った「海軍カレーパン」を第一食堂で食べていると、食堂の前の方では学校案内のビデオが上映されていました。広い食堂とあって、ビデオ映像自体は眼の悪い私にはよく見えないんですが、学生の学校生活(全員が寮生活を送っています)についての説明はよく聞こえてきます。「……と、この時間は自由に休息してよい時間なのですが、私の先輩方は足りない部分の筋トレなどをなさっている方が多いです、云々……」って、どんだけ頑張り屋さんなんですか(笑)。いや、笑ってはいけないんですけれど、今後の日本の海上安全がこうした学生達によって支えられていくと思うと、安心感を覚えます。

おいしかったですよ。190円。

参加こそしていませんが、教舎の方ではオープンキャンパスや模擬授業も開催されていたようで(おっさんが邪魔してもね……)、この道を志望する高校生には参考になる一日になったでしょう。また、ミニ制服を試着させてもらっている子供たちがいたり(なかなか格好いい)、小型艇の試乗会があったりで、海上保安に対する市民の理解を深めようとする学校側の姿勢も明確です。海上保安に対して無知な私にとっては勉強になりました。

楽しそうだったんですが、乗船はせず。

校内にて。一回乗ってみたいなと思いつつ撮影。


帰宅してから、採用試験(国家公務員になる試験なので「入試」ではないのです)について調べてみると、課程によって異なりますが倍率は大変なもの。平成29年の場合、人事院の下記データをもとに計算すると、船舶運航システム課程の倍率は8.4倍、航空課程は12.8倍、情報システム課程は2.7倍、管制課程は3.1倍、海洋科学課程は4.4倍となっています。学生さんの質は、こうした高い倍率に裏打ちされたものでもあるんでしょうね。

海上保安学校学生採用試験 実施状況 平成29年度
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/sennmonnsyoku_kousotsu/kaigaku/kaizyou_gakkou_29.pdf

もう少し調べてみると、平成24年度は受験者数が大幅に増加して、船舶運航システム課程の倍率が33.4倍になったらしいんですが、これって『海猿』の影響なんでしょうか?

個人的には、遠泳訓練とか行軍とかすごく楽しそうに思えます。

そうそう、校内では参加者層もそれとなくチェック。多くの方は学生のご家族だとお見受けしましたが、意外なほど標準語の方が多い感じがしました。バイク置き場に向かう際、駐車場に置かれた車のナンバープレートを見ていると、関東圏・中国圏からいらっしゃった方が多いように見えます。決して関西圏ばかりではありません。入学・入寮している人たちの出身地は日本全国に散らばっているんじゃないでしょうか。東大など首都圏の高偏差値大学も段々とローカル化が進んできている(関東圏出身者の占める割合が大きくなってきている)というデータがありますが、対照的ですね。

何となくなんですが、内陸県(海に面していない県)、具体的には奈良県や長野県・岐阜県などですが、それらのナンバープレートは少なかったような気が……。「海洋」に縁遠いからでしょうか。あと、大阪府のナンバープレートもほとんど見なかったような。もちろん大阪府は大阪湾に面しているわけですが、大阪市内に住んでいると「海洋」を実感する機会はほとんどありませんしね。居住地の「海洋プレゼンス」と志願者数は比例しているのかも。

いままで全く触れたことのなかった、海上保安官の職業教育の世界が垣間見られて、意義ある学校祭(五森祭)参加でした。学生さん達の将来の航海・業務遂行の安全を願って敬礼。

五森祭 | 海上保安学校

Wikipedia「海上保安学校」