人体は不思議だらけ

最近、いくつかの医学書をよみました。えへん。

ちょっと大層な言い方をしてみましたが、実のところは漫画です。ただ、この漫画が素晴らしいものでした。茨木保さんという現役の医師かつ漫画家(!)という方の、『まんが医学の歴史』『まんが人体の不思議(ちくま新書)』なる書です。

この二冊を読んで思ったのは、医学って人体(正確には生命体)の40億年の歴史をたどる営為でもあるんだな、本当に人体って不思議の塊だな、ということです。

自分の魂が乗っかっていて、毎日使っている、というより、それに支配されている「身体」。なのに、分からない事だらけ。それはすごく不安なことでもあり、楽しいことでもあるような気がします。

漫画だから子供向けというわけではありません。大人向けの素晴らしい啓蒙書。医学の陰に壮大な人間ドラマあり。また時間があれば、この書籍については記事にしてみたいと思います。


さて、当塾小学生生徒の理科の採点をしていると、驚くような解答に出会うことがあります。人体内部の図に各器官名を書き入れる問題ですと、腎臓のところに「肺」と書かれていたり(たしかに二つで対になってますけれど)、膀胱のところに「胃」とあったり、大腸・小腸が「大腹」「小腹」になっていたり。

ただ、それを笑う気にはなれません。というのも、上記医学史の本を読んでみると、人間の内部構造がある程度はっきり分かるようになったのは、そう遠い昔の話ではないんですよね。

我が国で言うと、江戸時代初期の医師などは、腑分け(人体解剖)が許されていませんでしたから、中国伝来の超嘘っぱち人体図をもとに治療していたわけですし、高貴な人を診る時には「糸脈」なんて技法を使っていたぐらいです。糸脈というのは、直接に高貴な方のお身体に触るのは失礼だということで、患者の手首に糸を巻き、医師が隣室でその糸の振動から脈拍を計るという技法、というか、儀式です。

更に歴史をさかのぼると、西洋では、静脈には血液が、動脈には空気が流れていると「科学的に」信じられていた時代もあったりして、現代人の常識から考えるとありえない医学知識だらけなんです。それを考えると、本当に人間って凄いな、短期間でよくこんなに遠くまで来たよなと思わざるを得ない。そして同時に、小学生にとって人体の構造がよくわからないものである、というのも無理はないように思えます。


最近見た中でちょっと驚いた解答をご紹介。「呼吸とはどのようなものかを説明せよ」という記述問題に対する解答です。

「口から酸素を取り入れ、鼻から二酸化炭素をはきだすこと。」

私にはそんな器用なことはできません(笑)。