『かんさい絵ことば辞典』

最近、関西でベストセラーになっているらしい『かんさい絵ことば辞典』。母親が購入した本なんですが、早速読んでみました。

かんさい絵ことば辞典
ニシワキタダシ 早川卓馬

かんさい絵ことば辞典

おもろいです!めっさおもろいです!と、普段使っている関西弁で書いてしまうぐらい楽しい本です。あなたが関西人なら、狂おしいほどの関西愛に目覚めてしまうやもしれません。

ブログ記事がもとになった本ということですので、そちらのURLもご紹介しておきましょう。

かんさい絵ことば辞典

特筆すべきは、ニシワキタダシ氏の描くイラストの可愛らしさ。関西のほんわかした温かさが伝わってきます。言葉・文章だけでも関西ことばを伝えることは可能でしょうが、このイラストがあることによって、読者には、はるかに多くの情報が届けられているように思います。

さりげないギャグはとてもセンスが良いですし、何より出てくるキャラがしっかり立っています。私のお気に入りは「阿瀬るこ」(高校2年の優等生、お弁当がいつもエキセントリック!)、「山下くん」(コンビニのアルバイト店員、ちゃんと接客しようよ!)。「熊野内くん」「たぬ吉くん」もいいなぁ(下記参照)。

あと、関西ことばのチョイスもセンスがいいんですよね。本当に日常生活の中で使っている関西ことばが選ばれています。コンテンポラリー関西弁とでも言いましょうか。

非関西人がよく勘違いしているんですが、今時の小中学生は、「わて、宿題してきてまへんねん」なんて言いません。それはオールド関西弁。生きた関西弁を知るという意味で、『かんさい絵ことば辞典』は、関西人以外にもお薦めできる書籍だと思います。
(なお、古い関西ことばも別立てで紹介されています。)

イラスト部分がさりげなく連作になっているのも、とても楽しいですね。私が特に気に入ったのは次の二コマ。

その144.げら|かんさい絵ことば辞典

その145.へん|かんさい絵ことば辞典

熊野内君、それ失礼やで! たぬ吉君、ええ人やなぁ。


生徒達と話していると思うんですが、大阪の小学生って、関西弁(大阪弁)を「方言」とは認識していません。

どうやら、日本語を、「標準語」「関西弁(大阪弁)」「方言」から成るものと考えている節があります。つまり、関西弁(大阪弁)は方言ではなく、標準語とほぼ同レベルの共通語という認識です。

生徒「センセ、今日な~、東北から転校生来てんけどなぁ~、めっちゃ方言やねんわ~。めっちゃなまってんねん。どんだけなまってんねん、ていうぐらいに。でも、めっちゃええ子やねんで~。さっそく友達になってん!」

あの、大阪弁も立派な方言なんですけれど……。僕たちも負けず劣らずなまってるんですけど……(笑)。

ま、大阪で生まれ暮らしている上に、テレビでも大阪弁が幅を利かせているとなれば、大阪弁=準共通語と思うのはやむを得ないことなのかもしれませんが。

ただ、こうして方言を持つことができ、それを楽しむことができるというのは、本当に素晴らしい事だと考えます。共通語も方言も操る、一種の二重言語生活というのは、やっぱり豊かですよね。厳しい同化主義より、ゆるい多文化主義がいい。

ちょっと大げさかもしれませんが、『かんさい絵ことば辞典』は、豊かなバイリンガリズムを生きる私たち関西人を言祝ぐ書だと思います。