授業補助資料 – 京大入試2010年国語問題 津島祐子『物語る声を求めて』

京大入試2010年国語 津島祐子『物語る声を求めて』
授業補助資料

この記事は、受講生が出題文章をより深く理解するための補助資料です。出題文章概要・問題解法・答案などの本質的な部分については、授業で説明します。なお、本問題について合格点を取るにあたり、本ブログ記事の内容まで知っておく必要はほとんどありません。あくまでも出題文章をより深く理解し、類似テーマの文章が出た際に読みこなせるようにするための資料だと考えて下さい。ということで、一般読者の方を対象としていない記事になっています。すみません。

4段落・13段落「見せ物小屋

まがまがしさ・こわいもの見たさという表現に直結することを理解する。下記リンク先の画像を参照のこと。少々おどろおどろしい部分あり。
見世物小屋 – Google画像検索

11段落「赤い鳥

日本の近代児童文学に大きな影響を与えた児童向け雑誌。問題の注には鈴木三重吉の名が上がっているが、芥川龍之介、有島武郎、泉鏡花、北原白秋、菊池寛、西條八十、谷崎潤一郎らの著名な作家が寄稿した。芥川の『蜘蛛の糸』はこの雑誌に掲載されたもの。

内容が啓蒙的すぎる傾向あり

出題文筆者の批判的な見方につながる

14段落「河内音頭

日本の芸能は「語り」と深いつながりのあることを理解する。昔から日本民族は「語り」を聞くのが大好き。

<例>
平家物語を琵琶法師が語る「平曲」(耳なし芳一を想像せよ)
能の音楽「謡曲」
人形浄瑠璃の音楽「義太夫節」
すべてストーリー性の高い音楽

河内音頭や江州音頭→ストーリー性の高い都市型ダンス音楽
その土地で起こった事件や庶民的ヒーローの事績を「語る」

河内音頭最後の常套句
「昔の人はよう言うた、山と山とは会えないけれど、人と人とはまた会える、またの機会とお預かり」→物語の結末欠落性

文楽や歌舞伎の物語構成→物語の結末欠落がよく見られる

出題文中にも示される「近代文学と口承の物語の差」を表す

18段落「マジック・リアリズム

ラテンアメリカ文学における「魔術的リアリズム」
代表的作家:ボルヘス,ガルシア・マルケス
日本:安部公房や大江健三郎にその影響あり

18段落「クレオール文学

ピジン語からクレオール語への流れ(授業で説明予定)

クレオール語ネイティブスピーカーの矜恃としての文学

クレオール語の一例として「パトワ(patwah)」
ジャマイカで用いられる、英語を起源とするクレオール語

パトワを用い精力的な活動を行っている著名人として
リントン・クウェシ・ジョンソン (Linton Kwesi Johnson)
・在英ジャマイカ人
・ダブポエット→ダブに乗せて詩を朗読or歌う
(ダブ=大まかに言えば前衛的なレゲエ)
・ミュージシャン(ダブポエット)として活動しながら、大学教授も務める
・出題文にある「いかにも教養のない、出来損ないの言葉だとされてきた言葉」に矜恃を持ち、武器として用いる

口承文学の復権

リントン・クウェシ・ジョンソン – Wikipediaより引用
「文学とは政治的活動であり、詩は文化的武器である」という信念を持つジョンソンの作品はイギリスのアフリカ系及びカリブ系コミュニティの被差別経験を下敷きにした政治的かつ映像的に描写されたものが多い。

Linton Kwesi Johnson – Want Fi Goh Rave

I woz
Waakin doun di road
Di addah day
When a hear a lickle yout-man say

Him seh
Y’u noh si mi situation
Mi don’t have noh accamadaeshan
Mi haffi sign aan at di station
At six in di evenin’
Mi seh mi life got no meanin’
Ah jus’ livin’ widout feelin’

Still mi haffi mek a raze
Kaw mi come af age
An mi want fi goh rave

英語を下敷きにある程度の理解が可能
例えば最初のフレーズは本来なら
I was walking down the road the other day
とでも表記されるところ