伯母との永の別れ

私には父方の伯母・叔母がいます。亡くなった父は四人兄弟姉妹の長男なんですが、姉二人、父、妹一人という構成だったので、親からも姉妹からもそれはそれは特別扱いされ、可愛がられたと聞いています。

私は父に瓜二つなので、父の幼児期を思い出すのか、伯母・叔母には幼い頃から本当に可愛がってもらいました。夏休みや冬休みの時期に、伯母・叔母の家に泊まりに行き、従兄弟たちとワイワイ騒ぐのは、今振り返ってみても胸がときめく思い出です。

ずいぶん前から、長姉である伯母は身体の調子が思わしくなかったんですが、私は一度家族でお見舞いに行ったきり。忙しさにかまけ、足を運ぶ機会がなかなかありませんでした。

8月末日夜、親しくしてもらっている従兄から電話を受けました。先週から伯母の心臓が弱ってきて、入院しているとの由。当方の多忙を気遣ってくれていましたが、従兄の声には差し迫ったものがありました。

来るべき時が来たのかもしれません。

その時になすことはただ一つ。命尽きる前に永のお別れを告げに行くことです。この世を去る人のために。その人の親族のために。そして自分のために。

ありがたいことに翌9月1日は午前中に授業がなかったため、3〜4時間程度であれば、仕事を空けることができました。妻・息子や母と時間のすりあわせをしている余裕はありません。単身病院へ向かいました。電車では時間が掛かりすぎ仕事に支障が出るため、高速道路をバイクで移動します。

久々に会う伯母はすっかり憔悴し意識も混濁していました。可愛がってもらったこと、いつも美味しい料理でもてなしてくれたこと。年月を経て美しく昇華された思い出が、次々と脳裏によみがえります。

苦しい息遣いの伯母は最晩年の祖母とそっくりで、祖母の最期を看取った日のことが思い出されてなりませんでした。思いは言葉にならず、涙になるばかりで、ただ伯母の痩せた腕をさするのが精一杯でした。

仕事に合わせて帰宅。当日の授業が終わった頃に従兄から再び連絡を受けました。夜になって伯母が他界したとの由。

最後に永の別れを告げられて本当によかったと思います。伯母のために。自分のために。

今まで可愛がってくれてありがとう。またあちらでもよろしく。