一人旅 奥の細道 #3

前回の続きです。

さてさて、首都高を抜けた後は、千葉県流山市をかすめて、茨城県へと進みます。常磐自動車道は少し渋滞気味でしたが、そこはバイク。渋滞を適当にこなしながら北進します。友部JCTで北関東自動車道へ乗り換え、栃木県を西進。だんだん渋滞の距離が長くなってきます。ふぅ。

栃木都賀JCTでようやく東北自動車道へ。しかし、ここに至って渋滞の嵐。GWの東北自動車道が渋滞するのは折り込み済でしたが、やっぱり楽しくはありません。あまり大きな声では言えませんが、ここもバイクらしく上手く進みます。

しかし、福島県に入った頃から、どうも雲行きが怪しい。降水確率0%だったんだけどなぁ……と思っていると、高速道路上の表示板に「雨注意!」の文字が。バイクに乗る人はお分かり頂けると思うんですが、すごくテンションが下がるんですよね、あれ。

本当にポツポツ来始めたので、サービスエリアに入ってカッパを着こみます。福島県を縦断して宮城県に入ってそこから山形県に向かうという道程が残っているので、体力を残しておかねばなりません。

以前、新潟県から自宅まで500km程度、土砂降りの中をバイクで帰った経験があるんですが、その日は天気予報を信じてカッパを持っていっていなかったんですよね。エライ目に遭いました。走行開始10分後には首から足の先までずぶ濡れ。ブーツの中までプール状態。ヘルメットの中以外は完全に濡れ鼠です。もう逆に楽しくなってきて、鼻歌交じり走行(笑)。サービスエリアのレストランでも歩くところ・座るところを水浸しにしてしまい、隅っこの方でショボボンと休憩したのも、今となっては楽しい思い出。

でも、今回は往路なのでそんな馬鹿なこともできません。素直にカッパを着こんで更に北進。福島県のことを考えながら走ります。明治維新の時には冷や飯を食わされ、東北大震災の時には未曾有の原発事故に襲われ。震災の時に何もできなかった自分を情けなく思いながら。

そうこうしている内に、雨は小降りになってきましたが、次は風が徐々に強くなってきました。先にも書きましたが、バイクにとって風は大敵。冗談抜きに危険です。むむむ、嫌な予感。予感は的中して、ぐんぐん風が強まってきます。高速道路上の表示板に目をやると、「強風注意!」の文字が。

一定の方向・風速で吹いてくれるなら、それほど問題はないんです。風向とバイクの操舵のバランスを取れば済みますから(ベクトルの和)。しかし、山あいの風はとにかくメチャクチャです。右から猛烈に吹いたかと思うと、次は左から強く、次は前からまた猛烈に、といった具合。しかも、風はどんどん強まるばかりです。

私もここまで強風の日に走った経験はありません。とりあえず、安達太良(あだたら。猪苗代湖の近くです)サービスエリアに入って、名物「ずんだもち」を食べながら、ルートを再考します。

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サービスエリアで隣に止まったバイクの兄ちゃん達も、「やべーよ!風に煽られすぎてやべーよ!とにかくやべーよ!」などと話し合っていたので、私も心が折れそうだったんですが(笑)、ここで下道に降りると地図を見ざるを得ません。既に日も沈んでいましたから。まぁ、もうちょっとこのまま高速道路で頑張ろうかな、本当にやばくなったら高速道路も通行停止になるだろうし、と美味しい「ずんだもち」に勇気をもらい(?)、再び東北自動車道を北進することとしました。

で、サービスエリアを出ていきなり、0.7車線ぐらい振られました。早くも心が折れそうに。「マジ?アカンで、これ」「ヤバイで、これ、ホンマに」と横山やすしみたいにブツブツ言いながら走ります。後で知りましたが、この頃既に、「強風」は風速20メートルを超す「暴風」に変わり、暴風警報が発令されていたのでした。

表示板を見ると、全車時速50kmに制限されていたんですが、これはバイクにとっては余計に怖い話です。先述したように、一定以上の速度を出さないとバイクは安定しないからです(コマと同じ原理)。自動車の流れもありますし、そこは適当に付き合って、「安全運転」で進みます。

しかし、東北自動車道に限らず、地方の山あいを縫う高速道路の夜は本当に真っ暗です。自車のライトだけが頼りなんですが、バイクのヘッドライトはそれほど強力でもなく、こんな日は何とも心細い感じ(それがいいんだけど)。加えて、かなり高い場所を走る高架・橋梁になっている部分が多く、もう風が増幅されまくりです。

あと、遮音を考える必要がないからでしょうか、都市部の高速道路と違い、道路側壁もすごく低いんですよね。自動車だと感じないんですが、バイクだと落っこちそうな気がする場所が多く、実際にそういう事故もあるようです。

真っ暗であまり周りが見えない、側壁に寄りすぎると確実に下に落っこちそう、高架で猛烈な暴風に吹かれる、時々時速140kmぐらいで自動車が自分を追い抜いていく、そんな中を0.5車線ぐらいフラフラとぶれながら走るって、どんな罰ゲームなんですか(笑)。

実際、先の安達太良サービスエリア以降、バイクを見かけることは皆無になりました。「はぁ〜、宮城に入ったらきっと風も弱まるよね」という何の根拠もない願いは粉砕され、「でもでも、さすがに山形自動車道にまで入ったら、風は弱まってくれるよね」という切なる願いも粉々に。それどころか山形自動車道では、更に風が強まりました(涙)。

そんなこんなで、山形県寒河江に着いたのは午後9時頃。「バイクよ見よ、あれが寒河江の灯だ!」と言いたいぐらいでした(リンドバーグ……)。ホテルはそこから5分程度。ふぅ。

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フロントでバイクの駐輪場を尋ねると、ちゃんと私のために自動車用の一区画をリザーブして下さっていました。そうそう、宿泊予約した際に電話対応してくれた女性が、優しそうな感じの人だったっけ。もう山形県大好き!最高!って単純すぎですか。

ちょっと休んでから夜の寒河江の町を散策。何もありません(すみません)。開いているのはスナックや居酒屋が数軒。お酒もタバコも全くダメな私には入る店がありません。

家族には、「せっかく行ったならその地方の名産品ぐらい食べてきなよ」と笑われるんですが、食には何の興味もないので、いつも適当です。ということで、いつものようにコンビニでインスタントラーメンなどを購入することに。

購入した唐揚げを、店内入り口付近でモシャモシャと食べていたんですが、店員さんに「あの〜すいません、店内でのお食事はご遠慮ください」と、山形イントネーションで叱られてしまいました(優しい言い方で嫌な気は全然しませんでした)。ついつい私も「あ、すんませんでした」関西イントネーションで返答したんですが、コンビニってやっぱり店内で食べるのはダメなんでしょうかね?

というのも、関西では、コンビニ入口付近で購入したものを食べていても、注意されたことが無いんですよね。もちろんイートインの無いコンビニです。ゴミもちゃんと所定の場所に捨てています。バイク乗りはみんなそうしているような気がするんだけどな……。

山形県独自のルールなのか、それともその店舗独自のローカルルールなのか、関西人が厚かましいだけなのか、私が非常識なだけなのか?ちょっとモヤモヤしています。何か書いているうちに、私が非常識なだけであるような気がしてきた(笑)。ともあれ、食べ終わった頃を見計らって言ってくれるのが、山形県民の優しさ。あとで気付いて嬉しくなりました。

ホテルの部屋に戻ってインスタントラーメンを作りましたが、お湯の量を間違えました。全然足りてない!もう一度お湯を沸かして足しましたが、生煮えのモニャモニャした感じになってしまいました。まぁ、お腹に入ったら一緒です。「豪華」なディナーを終え、大浴場へ。

寒河江って温泉地としてもそれなりに有名であるようなんですが、関西人の私は全く知りませんでした。大浴場には私一人。電気を節約していらっしゃるんでしょうが、浴場内のほとんどの電灯が消されています。10本ある蛍光灯の内、2本しか点灯されておらず、ちょっと言葉は悪いですが、霊安室っぽい感じ。でも、それはそれでなかなか楽しめました。幽霊がス〜ッと入ってきても、ごく自然に「こんばんは」と挨拶してしまいそうな(笑)。

暴風恐怖体験も、のど元過ぎれば何とやら。「わ〜い、明日は日本海沿いに走って帰ろうっと!むふふふふ!」と独りごち、12時ごろに就寝しました。

長くなってきたので、次回に続きます。

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