今日は日曜日で授業はありませんでしたが、ひたすら雑用や教室メンテナンスをこなす一日でした。ふぅ。
ゆっくりブログに向かえない日々が続きますが、たまには国語豆知識をば。
最近どういう経緯だったか忘れましたが、「びらしゃら・びらしゃら」という言葉が脳裏に浮かんで仕方がない日がありました。「びらりしゃらり」や「ひらりしゃらり」よりもちょっと古風な感じですね。
例のごとく日本国語大辞典にご登場願いましょう。
びら‐しゃら
一〘副〙 (「と」を伴って用いることもある)①衣服などが垂れ下がってなびき翻るさまを表わす語。
*仮名草子・元の木阿彌(1680)下
「その名も高き小紫、だてな振袖びらしゃらと」②女性の言動のなまめかしいさまを表わす語。
*仮名草子・都風俗鑑(1681)二
「のふれんのかたすみより顔いだし、又はぴらしゃらしてゆるぎ出らるるは」二(長い衣装をなびかすさまから) 女性、特に娘をいう。
*雑俳・柳多留−一七(1782)
「母くろうひらしゃら斗二三人」日本国語大辞典(精選版)より引用
出典を見ると、江戸時代っぽい言葉ですが(私もこの語を最初に知ったのは浄瑠璃を介してだったと思います)、今で言えば「びらびら」とか「ぶらぶら」とか「ぷらんぷらん」といった擬態語に通じる語でしょう。ただ、なんとなくイケイケな感じがあるんですよね、この「びらしゃら」には。
まず、もとの意味は「衣服などが垂れ下がってなびき翻るさま」ですが、あんまり武将とか侍の衣服には合う感じはしません。例文には「だてな振袖」とありまして、やっぱり女性、それも派手な感じのある女性にぴったりという気がします。
とすれば、「女性の言動のなまめかしいさまを表わす」というのは、とても自然な意味の派生です。例文は、のれんから顔を出すちょっと「パリピ」な感じの女の子です(笑)。
こんな説があります。男性には狩猟本能があって、動くものに気を引かれる性質があるために、女性のふわふわした巻き髪や、イヤリングなど「揺れるもの」に魅了される傾向があるとか。個人的には結構納得なんですよね、って私の趣味はどうでもいいんですが、江戸時代の人々も「ぷらぷら」「ちゃらちゃら」揺れる感覚と「なまめかしさ」の共通性を感じ取っていたんだと思うんですよね。
そうすると、「びらしゃら」が擬態語から「女性、特に娘」を指す名詞に変わるのも大いに納得できます。今で言えば、「生活感のないパリピな若い娘さん」という感じでしょう。
用例として柳多留、つまり『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』の川柳が挙げられていますが、これ、秀逸な川柳だと思います。
「母くろうひらしゃら斗二三人」
私の解釈。
けっこう裕福な商家。跡継ぎの男子はなかなか生まれず、女の子二三人の姉妹に恵まれる。富裕層ゆえに娘は苦労も知らず、当主たる父親も娘を甘やかす。かわいい服や化粧に散財しては町をぷらぷらするパリピな娘を見て、母親はため息。「こんなんでいいお婿さん来てくれるんかしら、はぁ……。」
ちなみに、「斗」は「はかり」=「ばかり」と読めばいいでしょうね。
まとめ。
「びらしゃら」という語は、「パリピなイケイケ女子」やその言動を想起していただければ、遠くないのではないかと。