授業や授業準備は仕事の本体なので、それで忙しくなるのは構わないんですが、ここ最近、雑用が多いのにはちょっと閉口しています。誰か雑用だけでも代わりにやってくれないかな……。
そんな愚痴はいいとして、たまには漫画の話をば。
気に入って講読しているコミックがいくつかありますが、そうしたコミックについては、時々アマゾンを巡回して新刊が出ていないかをチェックしています。2013年10月に見つけて購入したのは次の三冊。
どれも本当にいい作品なんですよね。
まず、三宅乱丈『光圀伝』。こちらは第1巻が出た際に、下記記事を書いています。第2巻は少年期から青年期にかけての光圀を描いているんですが、大藩を統べる者の後継者となることについての懊悩がよく描かれています。ノーブルな人間はノーブルな人間で庶民と違った悩みがある、どんな者にも悩みは尽きぬ、ということでしょう。あと、光圀が人を殺めることの意義を深く考え出すのも、後々の伏線となりそう。3巻が楽しみです。
次に、三宅乱丈『イムリ』。これも、上記の記事に書いておいたんですが、超大作かつ超名作。「二つの星における三民族の確執の歴史」という話のなかに、生きとし生ける者の争いと尊厳、家族のつながりというテーマが描かれます。1巻から読まないと何の事やらよく分からないコミックというのは、(門外漢ながら)売り上げという面を心配してしまうんですが、一種の文学作品として素晴らしい作品だと思っています。これまた次巻が楽しみ。
最後に、羽海野チカ 『3月のライオン 9』。これまた以前記事にしたことのあるコミックです。
羽海野チカ『3月のライオン』マンガ大賞受賞:国語塾・宮田塾のブログ
そちらにも書きましたが、羽海野チカの作品は(先述の三宅乱丈と同様)、その全体に詩情が満ち溢れています。主人公の棋士と、東京の下町に住まう家族(お爺さんと三姉妹)との交流を中心に描かれる世界が、本当に素晴らしい。
今回は、将棋世界に絶対的に君臨する名人位宗谷と、名人戦で彼に立ち向かう土橋のエピソードが特に印象的でした。土橋は超人的な努力で名人戦出場権を勝ち取り、名人に挑むんですが、その部分の描写に終われば、平板なエピソードになっていたと思います。しかし、羽海野チカの筆は土橋を支える家族を描きます。
日本最高峰のレベルで死闘している息子。当然のことながら、初老の両親が将棋の面で息子にしてやれることは何もありません。家族ができることは「見守る」ことだけ。土橋の母は布団の中でこうこぼします。「情けない…… 家族なんて 結局いつもこうやってただ見てるだけ……」でも、そうじゃないですよね。孤独に闘っている者からすれば、家族に見守ってもらうこと、それだけを欲しているのであり、それだけで十分すぎるほど十分なわけです。
このあたりは、受験生の家族の心理にも似ていると思います。受験生の保護者さんが勉強自体を教えるのはなかなか難しい。でも、お弁当を作ったり、一緒に夜中起きていたり、何らかの形で受験に立ち向かう子どもと共に歩む、できる限り見守ってやる、それが受験生の家族に求められることだと思うんですよね。
土橋の両親が将棋自体に口出しをしないのはとても賢明だと思います。というか、神様のようなレベルで将棋を指しているので口出ししようにもしようがないんでしょうけれど。ハイレベルな受験生の親御さんが、勉強に口出ししないのとよく似ています。
『3月のライオン』も次巻が楽しみでなりません。