私、アマゾンで書籍を購入することが多いんですが、時々アマゾン側から「あなたのおすすめの商品」といったメールが来ます。作家○○の新刊が出ました、グループ○○のニューアルバムが出ました、といった内容のリコメンド・メールです。
私の購入履歴から好みの作家・バンドやジャンルを割り出しているわけで、本来なら不愉快な気がしそうなものですが、このメール、なかなか私の好みをよく分かってくれていて、楽しい作品に出会うこともしばしば。結構重宝しています。
先日送られてきた上記のメールで知った作品が、三宅乱丈『光圀伝(第一巻)』です。
「えええぇぇぇ~!三宅乱丈が新しい作品を描いているんや!」と独りごちながら、大喜びで即座に購入です(2012.09.04初版発行)。
あまり漫画に詳しい方ではありませんが、私の知る限り、三宅乱丈氏は誰に劣ることのない最高級の実力を有する漫画家です(断言)。数年前、現在も連載が続いている『イムリ』を読んでからというもの、三宅乱丈氏の絶対的ファンになりました。
この『イムリ』については、また記事を書きたいと思っているんですが、SFファンタジーに分類されるであろうこの作品、構想といい画力といい(そして難解なところといい)、圧倒的な力を持っています。簡単に言えば、「二つの星における三民族の確執の歴史」という話なんですが、生きとし生ける者の争いと尊厳というテーマが通奏低音のように流れていて、良質な文学作品を味わうような喜びを味わえる作品です。2009年の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞していることも付言しておきましょう。
さて、今回の『光圀伝』ですが、やはりこれも最高に楽しめる作品でした。私の場合、徳川光圀(水戸光圀)というと、「大日本史」を編纂して水戸学を興した水戸徳川家の藩主、そして「天下の副将軍であらせられるぞ!」「はは~っ」という水戸黄門のモデルということぐらいしか思い浮かばなかったんですが、今回の光圀はかなりアクの強い人物として描かれており、興趣をそそります。調べてみると、平凡社の世界大百科辞典には次のように記されています。
18歳のころ《史記》の伯夷伝を読んで発奮するまでは,三家の世子としてふさわしくない言動が多いとして,周りの人々を困らせたことは,守役の小野言員の残した《小野諫草》に詳しい。
結構暴れん坊だったのか……(笑)。
そして、本作品の帯にはこう記されています。
「江戸の天才、水戸光圀 その生き様、虎の如し。」
第一巻では光圀幼少の時期しか取り上げられていませんが、「虎」のように荒々しく雄々しい性質の萌芽が描かれています。まだ幼い光圀(子竜)が父に命ぜられて、斬罪に処せられた者の生首をズルズルと引きずってくるシーンは、その後の彼の血塗られた人生を予見させるシーンなんでしょうか。続編がとても楽しみに待たれます。
本作の原作は今をときめく冲方丁(うぶかた・とう)。冲方丁の原作小説も同時期に出版されていますが、そちらを読むと漫画の面白味が減殺されてしまいそうなので、原作はまだ読まないでおくつもりです。