(普通、授業で話した内容は、話すべき人には話したということで満足してしまうのか、あまりブログの記事にしようという気持ちになりません。で、関係ない話ばっかり書き散らしてしまうという次第……。今日は入試期間中と言うことで、珍しく授業内容に近いことを(大人向きに)書いてみます。)
前回、中学入試国語頻出テーマについての考えを取り上げましたが、その続きです。
中学入試国語の頻出テーマは、的確な指導の下、きちんと勉強していれば、必ず身に付きます(もちろん、的確な指導でなかったり、きちんと勉強しなかったりすれば、身には付きませんが、そんなことは勉強一般の当たり前の話)。
今回は、近時論壇などで取り上げられるようになった比較的新しいテーマのうち、今後出題される可能性が十分にあると思っているものを断片的に取り上げてみます。
1.セレンディピティ(serendipity)
ちょっと詳しい方は、ここ数年前から有名な話じゃないかとお思いかもしれませんが、中学入試のテーマとして本格的に取り上げられるのはこれからだと思います。既に某難関中では近い形のテーマが出ていたはずですが、これから色々な中学で出題されてくると予想しています。長くなりそうなので、ヒントになりそうな部分だけ。
まず、辞書の定義を挙げておきましょう。英米圏から入ってきた概念なので、英和辞典から引用します。
セレンディピティ
serendipity〔別のものを探しているときに、偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、素晴らしいものを発見したりすることのできる、その人の持つ才能。◆【語源】イギリスの作家ホレス・ウォルポール(Horace Walpole)が1754年の書簡で使った造語。次々に予期せぬ発見をする”The Three Princes of Serendip”というペルシャの童話から作ったもの。〕
(英辞郎 on the Webより引用)
次に英英辞典(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)で語源を見てみましょう。
WORD ORIGIN
1754: coined by Horace Walpole, suggested by The Three Princes of Serendip, the title of a fairy tale in which the heroes “were always making discoveries, by accidents and sagacity, of things they were not in quest of ” .
私が思うに、国語的なポイントは、素晴らしいものを発見する「才能」という部分です。「偶然」というところに力点が置かれている概念ではない。言い換えれば「運」じゃないんです。語源の説明にある「sagacity」とは、「good judgment and understanding」、つまり「優れた判断力・理解力」をさす語ですが、これがキーワードだと思います。
入試問題の文脈では、「努力しているうちに知らず知らず身に付いた、素晴らしいものを発見する能力(判断力・理解力)」と言い換えてよいかもしれません。語弊を恐れずさらに言えば、「運をつかみ取る努力と能力」。いかにも難関中学が好みそうな題材だと思います。
2.バイオミミクリー(biomimicry)
「生物を模倣して産業に生かす」という新しい学問領域なんですが、私もつい最近、雑誌『考える人』の紹介で知るに至りました(ちょっと不勉強ですね)。英語好きな方なら、bio=生物、mimic=まねをする、というところから「生物模倣学」という類推が働くかと思いますが、まさにその通り。
こちらは、今すぐに出題されるテーマだとは思いませんが、近い将来、どこかの中学で出題されそうな気がします。一般的な説明や具体例は、下記のリンクを見ていただきましょう。
『考える人』から、入試問題のテーマになりそうな重要部分を引用しておきます。
「三八億年の進化の歴史を生き延びた生物こそ超一流のエンジニア、建築家、科学者であり、地球環境に適応的な彼らの技術を学ぶことによって私たち人類の自然界での持続可能性も高まるというバイオミミクリーの思想には、一八世紀以来の産業革命以来延々と続く大量消費と使い捨て経済から脱却するための鍵があるように思われた。」
雑誌『考える人』「特別レポート バイオミミクリーの源流を訪ねて」(最相葉月執筆)より引用
上記レポートによると、バイオミミクリーには三段階があるらしい。第一段階は「形態の模倣」、第二段階は「プロセスの模倣」、第三段階は「生態系の模倣」。それぞれの具体例は挙げませんが、この段階論なんかを考えても、とても入試問題を作成しやすいテーマであるように思います。
また気が向けば、出題の予想される面白そうなテーマを取り上げたいと思います。