奈良県佐保川の桜をちょっと切ない気持ちで見た話

皆さん、花見には行かれましたでしょうか?私どもの庭には今春も桜が咲き乱れ、それはそれは美しい眺めでございました。

私どもの庭というのは当塾裏手にございます真田山陸軍墓地でして、正確には国有地なんですけれどね。今は大阪市が無償で貸与を受けて管理責任を負うという法的構成になっていまして、国税も市民税も納めている私どもは、まあ「自分の庭」と言ってもいいかなと。いや、ダメか(笑)。

大阪陸軍墓地・観桜

さて、たまには奈良の桜を見るのも良いかと、我が家と義母とでちょっとしたお出かけを計画したんですが、義母は用事が出来てしまい、我が家だけでミニ花見に行きました。目指すは奈良市の佐保川。

奈良市にある佐保川沿いの桜並木。ここは春になるとそれは見事な眺めになるという話を以前から聞いていたんですが、この並木道を通る時はいつも桜シーズン以外だったんですよね。我が家から30km程度の場所ですし、バイクや車でよく佐保川を横切ってはいたんですが。

なんでもこの桜並木、全長5kmもあるそうで、一度家族で散歩してみたいなと思っていたのでした。詳しくは下記の奈良県公式ホームページをご覧頂ければと思いますが、この桜並木、江戸時代末期に川路聖謨(かわじとしあきら)が奈良奉行として整備したらしい。川路聖謨という人はとても頭の切れる能吏というイメージがありますが、後の人々の眼を楽しませる桜並木を整備するなんて、理だけでなく情も解する人であったんだなと素直に思います。

奈良県景観資産―桜並木が眺望できる佐保川・奈良県図書情報館付近―/奈良県公式ホームページ

さて、桜も少し散り始めた某月曜日、車を停めるべく奈良県図書情報館に向かいます。家族の者が看板を見て口々に言います。「今日は休館日って書いてあるよ!」「休みだから入れないよ?」

一体私を誰だと思っているのでしょうか。日本有数のダンドリスト(段取りのうまい人)なんですよ、私は!(笑) 春の桜シーズン中は休館日も駐車場だけ開放しているという情報を前もって調べて知ってるんだよ。加えて、この駐車場近辺がベストスポットなんだよ。

家族とどこかに出かける時、計画立案、回る場所の下調べ、チケットの手配、自動車の運転、支払いや精算などなど、ほとんど全てを私が担当しています。誰も感謝してくれないんだけどさ……。「なんかお寺から歩いて駅に着いたら、ちょうどタイミング良く電車が来たよ!」「ラッキー!帰り道にちょうどいい感じのカフェがあるから入ろっか!」

違うんや、皆の歩く速度と電車の到着時刻を計算して出発してるねん、カフェの前を通るようにルーティングしてるねん。車で出かけた帰り道なんかは、運転手である私以外はみんな爆睡。確かに運転がうまくてスムーズなんだけどさ(と思うようにしている)。

ちょっと愚痴が入りました。お気になさらず。

桜並木は聞きしに勝る見事さ。平日ということもあって、観光地観光地していません。地元の家族連れやご老人がおだやかな顔をして歩いている。シートを敷いて飲み食いすることができないようになっているのもとても私好みです。桜を見てのんびりと歩くのがいい。春風駘蕩、春はのどけし。私たちが歩いたのはせいぜい往復で2km前後でしたが、桜を満喫しました。

真ん中に流れているのが佐保川。万葉集にも詠まれています。

散歩する親子連れを多く見かけました。子供って本当にすぐに大きくなりますよね。

みんな楽しそう。万葉人もこの辺りを歩いていたんでしょうか。

桜の花びらが川面を染める佐保川。奈良には紅葉が川面を染めるので有名な竜田川もあります。

 

少々私事をば(って本記事全編が私事ですが)。私どもの息子、今年大学受験だったんですが、残念ながら意中の大学に縁がなく、某私立大学にだけ合格致しました。息子もこのまま進学するべきかかなり迷ったようなんですが、何度か息子と相談した結果、もう一年頑張るということに相成りました。

私も何人も大学受験生を見てきましたので、息子であっても客観的に学力や着地点を見る自信はあります。高校1年生の終わり頃、「お前のこのままの勉強姿勢・勉強量だと○○大学は厳しいぞ、おそらく国公立なら△△大学、私立なら△△大学ぐらいになるぞ」と忠告したことがあります。その際は、絶対にそうはならないと反論されたんですが、2年後、その忠告が現実に。

私にも妻にも「絶対に○○大学に行け」というような気持ちはありません。18歳ともなれば自分の人生は自分で決めて欲しいし、決めねばならない。自分の人生に責任を取れるのは自分だけ。親が責任を取れるわけではない。自分自身、高校生頃からそう思って来ましたし、息子にもそう伝えてきました。

ただ、親としては、不完全燃焼を避けて欲しいという気持ちも否めません。全力で勉強してダメなら諦めも付きますが、親としての眼からしても、指導者としての眼からしても、完全燃焼にはほど遠かったという気がします。親からするとまだまだ頼りないところばかりが目に付く息子ですが、この一年、自分を鍛えて成長してもらえたらと思います。私どもとしては、今年で子育て終了と考えていたんですが、もう少し頑張らないと。


今回の花見、そういう意味で家族皆がちょっと切ない気持ちでの花見でありました。来年の桜は明るい気持ちで見て欲しい、見せてやりたい、見たい。こんな気持ちの花見も一度はいいのかもしれません。

万葉集にこんな和歌があります。

あをによし奈良の都に花咲けど
わぎへに春のやや遠きかも
(奈良の都に桜が咲くけれど、我が家の春はまだ少し遠いなあ)

すみません、嘘をつきました。私の贋作です(笑)。

来年はこんな感じにしたいですね。

あをによし奈良の都に花咲きて
わぎへも春のたちにけるかも
(奈良の都に桜が咲いて、我が家にも春がやってきたなあ)

浪人生の皆さん、浪人生を抱える家族の皆さん、頑張りましょうね!