恥ずかしい指導 – アメリカンフットボール暴行事件を見て

日大アメフト部の部員による「暴行事件」(と言ってよいと思う)が問題になっていますよね。これ、どう見ても「組織的な犯行」なのであって、関西学院大学のQBに直接加害行為を行った部員だけを責めるべきではないでしょう。

もちろん、成人なんですから、直接加害行為を行った部員が一定の責めを負うのは当然です。ただ、加害・攻撃を指示した監督やコーチが最も悪質なのであり、彼らの責任を追及しないと意味がないように思います。

というか、一介の大学生に、強大な権力を握っている「大人」が悪辣な行為を指示しておいて、いざ問題が表面化したら、「そんなこと指示してないよ、学生が勝手にやったんだよ」なんて逃げを講じるのは、超・超・醜い行為だと思います。


私が在学していた頃、京大のアメフト部は大学選手権のみならず社会人リーグを含め日本のトップに立っていました。その頃の関東の覇者は日大でしたが、彼らの戦法を徹底的に攻略して大学選手権に優勝した試合は、私も妻も甲子園で実際に観戦していました(いわゆる甲子園ボウル)。日大ショットガン戦法破れたり。

というのも、その頃の京大ギャングスターズ(「チンピラ」っていう意味のチーム名なんですけどね。京大らしいネーミング)を司令塔たるQBとして率いていたのは、母校高津高校陸上部のK先輩だったんです。日々一緒にクラブ活動をしていた先輩が、毎日のようにテレビで取り上げられ、新聞の一面を賑やかしているとあって、京大アメフト部の試合は、高校の同窓生がよく集まるミニ同窓会のような観を呈していたんですね。

体格や経験に劣る学生の多い環境で、合理的なトレーニングシステムを組み、泥臭い練習に耐え、日本選手権まで制したのは本当に立派だったと思います。京大ギャングスターズは学生・選手の自主性を重んじる風があるクラブだったようですが、それが大学スポーツの本義じゃないでしょうか。

一方、その頃の日大は「鉄のような組織」というイメージがありました。監督の指示は絶対的で逆らうことは許されない。その代わり、4年間監督を絶対的に信奉していれば、(補欠選手であったとしても)良い就職口を世話してもらえるという話でした。

確かに大学生からしたらメリットのあるシステムかもしれませんが、どうも風通しの悪くなりそうな環境です。主従関係・こびへつらうような権力関係が生まれてしまう。「就職?そんなん知らんがな、勝手にどこなり探してこいよ」式の方がやっぱり個人的には好きです。


で、そんな流れで私もアメフト部によく誘われたんですが、完全にお門違いですよね。球技は「ド」が付くぐらい下手くそな私。どんな球技でも平均を下回る自信があります、エヘン(笑)。

バスケをすれば皆によく笑われました。ボールを受けてドリブル。バンバンバン!そしてボールをパス。「宮田のドリブル、意味ないやん!全然移動してないし!」私からすると、どうやってボールをつきながら移動すればいいのか分かりません。皆が器用すぎるだけやん。静止していてすら危ういドリブルに皆大爆笑なのでした……。

サッカーをすればしたで、皆に不安がられます。「宮田のとこにボールが行ったらヒヤヒヤするわ!」いやいや、私の方がよっぽど不安です。蹴ったボールがどこに飛ぶかは全くの運ですから……。

話は逸れましたが、そんなわけで球技をしようなんて気持ちはさらさらありませんでした。ただ、泳ぐ・走るといった原始的なスポーツは好きでしたので、某体育会系のクラブには所属しておりました。

その某クラブから、全日本大学選手権大会に参加していたときのこと。選手として試合に出場するだけでなく、出場しない試合では裏方をする必要があったんですが、ときどき小ずるいまねをする選手がいます。裏方として注意するんですが、当方が1回生ということもあって聞き流される。イラッ。

受験の世界で言うと、皆が試験開始時刻まで問題用紙を開かないで待っているのに、試験官のスキを見てチラチラと何度も問題用紙を開いては閉じるような感じとでもいいますか。

で、よく観察していると、それが全部同じ大学に所属する選手なんです。他大学の選手はそんなことをしないで正々堂々とやっているのに。はは〜ん、なるほど、これは個人の資質ではなく、監督かコーチが小ずるい真似をしろと「指導」しているんだな。そりゃ1回生があれこれ注意しても聞き入れやしないわけだ。

そのことに気付いて以来、自分が試合に出る時は、絶対にその大学の奴等だけには負けまいという思いを胸に秘めてやっていました(そして負けなかった)。

私の中では、未だにその関東の某大学=最低な大学として認定しそうになるんですが(笑)、そんな独断・偏見はいけませんね。真面目な指導者や学生も多くいるはずですから。

ただ、そんなクズ指導をする大人は責められて然るべきだと思います。ましてや、監督と選手間に主従関係類似の関係があったなら。

今回の日大アメフト部の件、そんな腐臭がプンプンしています。スポーツが健全でさわやかなものだなどというのは大きな誤解だと私も思いますが、権力にものを言わせて汚い行為を「部下」にさせ、事が露見すれば「部下の独断でした、あたしゃ知りません」なんていうのは、本当に醜いことだと思います。指導者側に少なからず「大人としての巧妙さ」が見えるのが更に醜さを増しています。

あとは大学側がどう自浄能力を発揮するかですが、事の推移を見ている限り、あまり期待できそうにないなと思う次第。