医学部受験と国語

宮田国語塾の指導対象

ここ数年、宮田国語塾では、大学受験生をお受けするのは最小限にさせていただいて、中学受験生(小学高学年)をメインに指導しています。高校受験のお問い合わせも時々頂くんですが、よほど特殊なケースを除けば、高校入試国語はそれほど難度も高くなく、一般的な塾の国語指導でほぼ足りるかと思います。つまり、当塾のような国語専門塾が乗り込むほどでもないと考えています。

問題のレベルが高く、難しければ難しいほど、当塾の場合は強みが発揮できますので、必然的に主たる対象が中学受験と大学受験になってくるというわけです。

医学部志望者の国語力

大学受験の場合、お問い合わせが多いのは、やはり医学部志望の方と国語の比重が大きい難関大志望の方。国公立大医学部の場合、二次試験で国語が課される大学はそれほど多くはありませんが(今調べてみると山形大学・東京大学・名古屋大学・京都大学の4校)、何と言っても医学部ですから、センター試験で9割程度の得点が欲しいところです。

私のイメージからすると、国公立大医学部の受験って、数学・物理・化学・英語については高得点がとれて当たり前、偏差値70台に乗せられないでどうするんだよみたいな世界です。一般の大学受験生からすると化け物のような人たちですが、こと国語に関しては、意外に高得点が取れない人が多いんですよね。

これには理由があると思います。お子さんを国公立大医学部に進学させたいとお考えのご家庭の場合、私立中高一貫校に進学させることが一般的ですが、中学受験(特に関西圏私立中)では、「算数」が決定的に重要なポイントになります。加えて、算数は国語と異なり勉強すれば得点の伸びがはっきりと出やすいので、どうしても学習の力点が算数に置かれることになります。いきおい算数適性の高い受験生が多くなる。

反対に、国語は算数ほど得点の伸びが見えやすい教科ではありません。より正確に言えば、力を伸ばすのに時間が掛かる教科です。しかし、受験生本人とそのご家庭に時間的余裕はありません。中学受験というシステムを前提にすれば、今すぐに得点を上げたい・偏差値を上げたい!というのは当然の望みでしょう。十年後の10万円より、今日の1万円の方が価値が高いんや!みたいな。いきおい、国語の勉強は後回しになりがちです。

結果、受験生本人も、何となく国語より算数に対しての適性の方が高いというセルフイメージをもって難関中学に入学し、そのままの勉強傾向を維持する。そして気がつくと、大学受験の勉強を本格化させるべき時期が到来している。そろそろセンター試験国語の過去問やってみようかな……うわっ!俺、得点率半分ぐらいしかねぇじゃん!あれれ、私、現代文の意味が全然つかめない!どうしよう!

国語対策は小学生の頃から

上記のような感じの難関中高一貫校の学生が多いんじゃないかと想像するわけですが(実際そういう方からのお問い合わせが多い)、やっぱりもう少し早めに手を打っておくべきだと思うんですよね。具体的には、高いレベルの国語力を望むなら、小学生の頃から地道に取り組んでいった方がいい。その方が合理的かつ安全だし、他教科への好影響も期待できますからね。

国語塾運営者としてのポジション・トークがちょっと入っているんじゃないのと思われそうですね。はい、確かにそれもあることは認めますが(笑)、ただ、色々な受験生を見てきて、本心から思うことでもあるんですよね。大学受験、特に国公立大学医学部受験直前になって国語力を上げようとしても、それはかなり無理のある話です。

国語力と一口に言っても、記述力だけではありません。その基礎になる読解力も重要ですし、共通テストであれば高い正答選択力も必要になります。また、論理的思考力がなければ読解自体がおぼつかない。

国公立大学医学部の合格者数に関しては、私立中高一貫校が公立高校を圧倒しています。これには色々な理由があると思いますが、その一つとして、私立中学を受験する生徒は、小学高学年の段階で高度な文章や論理的な国語問題に触れ、(まがりなりにも)国語力を磨いてきている、ということが挙げられるのは間違いないと考えています。

今後、大学入学共通テストの国語には、記述式問題が入ってきます。また、国公立大医学部の推薦入試の枠も広がってくるでしょう。とすれば、上記の話はますます説得力を増してくると思うんですよね。発表されたモデル問題を見る限り、共通テストの記述問題は決して難しいものではないんです。ただ、国語力が乏しければ致命傷になりかねないことも事実。この問題で大きく失点してしまって、「国公立大学の医学部受験を諦める」なんて人も出てくるのは間違いないでしょう。

(詳しくは「大学入学共通テスト記述式問題の対策・勉強法 – テクストの精読」をご覧下さい。)

医師や医学研究を志すようなレベルの高い人が、ちょっとした国語の問題のせいで、その道を諦めるのは勿体なすぎますし、社会にとっても大きな損失です。ちょっと偉そうに言えば、有為の人材はちゃんと世に出て、そのあるべき処を得て欲しいと思うんですよね。

特に当塾の所在する関西の場合、医学部シフトが顕著で、東大京大に合格するレベルの高校生の多くが、東大京大進学を選択せず、国公立大医学部に進学します。そんなわけで、医学部受験と国語力の関係について一度書いておこうと思った次第。

医学部志望のご家庭

上記のような話は、意識の高い保護者様方には「釈迦に説法」かもしれません。実際、当塾においでになる小学生の保護者様とお話をさせていただくと、こんなパターンがよくあります。

「総合成績を拝見すると、○○中学の合格可能性は90%を越えると思いますよ。国語についても、十分に成績を取っていらっしゃいますしね。入塾をお断りするわけではありませんが、国語の模試偏差値はそれほど変わらないかもしれませんよ。」

「いえ、構わないんです。仮に現時点で合格可能性が90%あるとすれば、それを95%、99%にしてやりたいと思うんです。それに将来は、本人としても家庭としても医師になりたい・ならせてやりたいという強い希望を持っています。そのための国語力・基礎力を付けてやりたいとも考えていまして……。」

「それならばお役に立てるかと存じます。」

もちろん、目先の入試合格も大切です。塾としてもそこはゆるがせには出来ない。しかし、その先こそが本当は一番大事だと思っています。

生徒さんが立派な医師になって、世の中の役に立つ。そうすれば当塾も、ごくごく僅かではありますが、世のお役に立てたと言えるのではないか。指導をご依頼下さるだけでも私どもとしては十分に光栄なことではあるんですが、あわよくば、社会の役に立つことができればとも思います。そして、塾としてそれに勝る喜びはありません。