鰻の小骨が喉に刺さった話 – 羮に懲りて膾を吹く

11月は色々と不運に見舞われたんですが、ブログに書いて厄落とししておきましょうか。「六甲山上からレッカー車の助手席に乗って下山した話」と「ウナギの小骨が喉に刺さった話」とどっちがいいですかね。うん、今日は鰻の話にしておきましょう。

少し前の平日、夜の12時頃に食事を取っていました(平日は仕事の都合上、どうしても夜の11時過ぎに食事を取ることになります。もう慣れっこ)。食にはほとんど関心がないので、普段からそうなんですが、その日は特に疲れていて、もう目の前にある食事を流し込むだけの感じだったんですね。

その日のメニューはうなぎ丼。別段高級な物ではありませんが、今思うとゆっくり食べておけば良かったんですよね。ババッと流し込んで食事を終えたんですが、うむむ?何やら喉に違和感が。

お茶を飲んでも、もう少し他のものを食べてみても、違和感は消えません。あちゃ〜、どうやら鰻の小骨が喉に刺さってしまったようです。就寝前まで喉のチクチクする感覚は消えませんでした。明日の朝も状況が変わらないようなら、耳鼻科に行くしかないな、時間がないのに憂鬱だな、と思いつつその日は就寝。

翌朝、やはり喉の違和感は消えていませんでした。朝一番で、近所のH耳鼻咽喉科に向かいます。家族の者がよくお世話になっている先生なんですが、私は伺うのが初めて。よく考えて見ると、耳鼻咽喉科にかかるのは小学生の時以来なんですよね。35年ぶりぐらいでしょうか。

待つこと暫し、先生に呼ばれて診察室に入ります。簡単に状況を説明すると、優しい先生は「はいはい、分かりました。じゃあ見てみましょうね」と喉奥を見て下さいます。

「ああ、これかな。ちょっと取ってみましょうね。あ〜んと大きく口を開けて。」

「あ〜〜〜ん」

「うむむ、もう少しで届くんだけどなあ、もう少し大きく口を開けて下さいね。」

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

という具合に処置して下さるんですが、喉の奥に器具が当たるのでとても辛い。器具が当たる度に嘔吐反応が起きてしまいます。

「うおぇ、うおぇぇ、うおぇぇっ。す、すいません。」

「ちょっと我慢して下さいね〜」

「うおぇぇっ、うおぇぇ、うおぇぇっ。ひゅいまふぇん。」

「いやいや、誰でもそうなりますからお気になさらずに。もう一度行きますよ〜。」

「うおぇぇ〜、うおぇ、うおぇ〜。」

もう思いっきり涙目になってオエオエ申しておりました。にもかかわらず、なかなか取れない(笑)。もちろん先生の腕の問題ではなく、難しいところに骨を刺さらせてしまった私の責任です。

かなり難しいところだったのか、最後はガーゼで私の舌をくるんで引っ張り、口腔内をクリアにした状態で数度のチャレンジ。ようやく小骨が取れました。

「これだね〜!結構大きかったね!」

「ふぁ、ふぁぃ。ふぁりがとうごふぁいましたぁ」と思いっ切り涙目で礼を述べていると、看護師さんに笑われました(いやな感じの笑いではない)。そりゃ笑いもしますよ、いい歳のおっさんが涙目になってオエオエ言っていれば。それもしょーもない小骨を喉に刺さらせて。何歳やねん、君(笑)。

後で考えてみると、診察室と待合室の間のドアが開けっ放しになっていたので、ウォエウォエ言っているところは待っている人全員に聞こえていたはず。はぁ……。

もうしばらくは鰻を食べたくない気分です。今は、コンニャクもマシュマロも小骨がないか確認してから食べるようにしています(ウソです)。

正に「懲羹吹膾」「羮に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」というやつです。

ちょっと国語の話もしておきましょうか。「羹(あつもの)」というのは、熱い吸い物のこと。「膾(なます)」は、肉を細く刻んだ冷たいあえもの。熱いスープで舌を火傷した者が、それに懲りて冷たい料理までもフウフウと吹く。

つまり、この諺は「失敗に懲りて必要以上に警戒心をもつこと」を意味しているわけです。

膾どころかアイスクリームでも吹いてやるぜ、ってな気分ですね、今は(笑)。