家庭内ジャーゴン

夏休みの第1週目が終わりました。ふぅ。長丁場なので体調維持に気を使わねば。

さてさて、今日は家庭内ジャーゴンの話。ジャーゴンというのは「専門語」とか「一般人には分からない隠語」といった意味ですが、どんな家庭にもそうした言葉があるんじゃないでしょうか。

私の母校、高津高校の先輩にあたる方ですが、森村泰昌というアーティストがいらっしゃいます。この森村氏がエッセイ集でよく似た話をお書きになっていたんですが、どうしてもその本が見つかりません。おぼろげな記憶をもとに書くと、こういう趣旨の話。

森村家では、何かをやめてしまう際、「やんぺこちゃん」という言葉を使っていた。「今日は雨が降ってるし、出かけるのは『やんぺこちゃん』にしとこか。」という風に。あまりに自然に使っていたので、大阪弁としてポピュラーな言葉だと思っていたが、長じてから、自家でしか使われていない言葉だと知って驚愕した、という話です。

その話を読んで以来、我が家でも「やんぺこちゃん」という語は市民権を得て、不動の地位を築いていますが(笑)、それとは無縁にいくつもの「家庭内ジャーゴン」が跋扈しているのが我が家です。

例えばこんな感じ。

ひぐる」(五段動詞)

<語義>
突如、攻撃的に怒る。「羆(ひぐま)のように吠える」という語の転。

<使用例>
「今日、コンビニで並んでたら順番抜かしされて、ひぐりかけたわ。」
「何回も電話のセールスを断っているのに、また掛かってきたから軽くひぐってしもたわ。」

あ、ちなみに使用例は実際の生活から採集しています(笑)。

よろこびころこぶ」(五段動詞)

<語義>
小さな子どもなどが、あまりの歓びに身をうち振るわせる。元来「喜ぶ」と「転ぶ」の合成動詞であるが、動詞内で脚韻を踏んで「転こぶ」と転成した。

<使用例>
「誕生日プレゼントを息子に渡したら、よろこびころこんでたよ。」
「パパ、もしも1199スーパーレッジェーラが手に入ったらどうする? — もう、よろこびころこんで、夜も眠れないよ。」

何かすごく間抜けな使用例ですが……。いずれも、日常の会話から自然発生して何年にもわたって使われ続けているジャーゴンです。他家のことを調べたことはありませんが、大なり小なり同様の語をお持ちなのではないかと。

ちなみに、上記の語は近々広辞苑に収録される予定です(本気にしないように)。