私も息子も遠い場所に出かけるのが大好きなんですよね。行き先でどんなところに泊まるか、何を食べるか、そんなことはどうでもいいんです。それは私達にとって瑣末なこと。目的地に行くまでの道中こそが、旅行の本体。どんな道を走って、どんな岬を眺めて、どんな峠を抜けて、どんな風に吹かれるのか。それこそが旅の本質。
妻や母には「訳がわからない」と笑われるんですが、そこが女性と男性の違いなんでしょう。いいところに宿泊して、ご馳走を食べる、それを否定するわけではありませんが、私にとっても息子にとってもそれは単なるオマケ。まんじゅうで言えば、皮の部分です。あんこは延々と車で走り続ける道。
だから旅の思い出は大抵「道」になります。
大分県湯布院あたりの素晴らしい山道。高知県の室戸岬に向かう海辺の道。愛媛県から広島県に向かうしまなみ海道。長野県の雄大な山脈を眺めながら走る高速道路。青森県の寒々しい漁村を縫うような国道。大体は私がバイクで走った経験があって、それを息子に紹介してやるという感じなんですが、私と同じセンスなのか、はたまた男心に響くのか、大変ウケがいい。
どんなところに宿泊したかはかなり記憶が曖昧、食事に至ってはほとんんど記憶喪失状態(食に無関心な人間なのです)、でも、道や景色の方はよく覚えている……これ、私も息子も同じ傾向があるようで。
私、運転に関しては非常に耐性がある方でして、一日に12時間以上運転していても平気。バイクで一日に1200km走行したことがありますが(大阪→八戸)、到着時に「もっと乗りたかったな」と感じたぐらいですので、ちょっと異常者なのかも(笑)。通常、300km〜400kmぐらいがツーリングの限界らしいんですが、それ近所のショートツーリングちゃうんみたいな。
自動車の運転は、集中力・労力共にバイク運転の五分の一ぐらいですむ感覚なので、一日1000km程度なら鼻歌交じりです。車内で仮眠もできるし、エアコンもあるし超・快・適!
息子もそれに慣れており、旅行目的地への移動距離が800km未満だと、結構文句を垂れられます。「近すぎてこんなんショートドライブやんか〜!旅行やねんからもっと遠いとこに行こうよ〜!」大阪から800kmといえば、鹿児島の桜島ぐらいなんですけど……(笑)。
そんなこんなで、日本の都道府県はかなりの数を「制覇」しています。息子と車で行ったことのある都道府県はこんな状況。
北海道と(地図には出ていませんが)沖縄県が未踏なのは、仕事の都合上、なかなか日程を組みにくいことが原因です。行くならば、飛行機で行って現地でレンタカーを借りるということになるでしょうが、大阪から全て陸路で移動するという楽しみ・達成感がないのもちょっと寂しいかな。
茨城県と千葉県が未踏なのは、関西人なら分かっていただけるのではないでしょうか。ネズミの国に興味がある方なら別論、関西人にとって千葉や北関東って、どうも馴染みの薄い土地なんですよね。けなしているのではありません。素晴らしい場所がたくさんあるのはよく知っていますが、わざわざ関西から出向くかというと……。都会を求めるなら東京・横浜で足が止まりますし、雄大な自然に触れたいなら、もう少し足を伸ばして東北地方に行きますしね。大阪から千葉に行こうとすると、東京のゴミゴミを越えなくてはならないのも結構辛いですし。自分一人では両県とも行った事があるんですけどね。
ともあれ、息子との間では、47都道府県中43都府県を「制覇」したということになっており、未踏破県は残り4県。
結構色々な場所に息子と出かけたなという達成感もあるにはありますが、むしろ感じるのは残り県の少なさ。もう高校生になった息子が、いつまで一緒に旅に出てくれるか・出られるかは分からず、少し切ない気持ちにもなります。
わが息子、精神的にはまだまだ子供なんですが、さすがに私達の子育てが最終段階に入ってきたことを感じることも増えつつあります。それはもちろん親として嬉しいことではあるんですが、一抹の寂しさを覚えることでもあります。
短歌にすれば、こんなところでしょうか。
親子旅 巡りし国は四十三 残れる国を 指折り思ふ