妙にリアルに思えるようになった『小学館』『ペスト』

しかし、新型ウイルス感染症が世界を大混乱に陥れるなんて、去年の今頃は、いや、半年前は思いもしませんでしたよね。

私達も対応に大わらわで、休みも何もあったものではありません。GWも定休日もひたすら仕事です。亡くなられた方々、生命の危険を冒して働いてくださっている方々、経済的に大打撃を受けた方々、そうした人々のことを考えると文句は言えませんが……。

そんな状況下で、妙にリアルに思えるようになったあれこれ。

相対性理論 – 小学館

やくしまるえつこのボーカルが強烈に印象的なバンド「相対性理論」。『小学館』は調べてみると随分前の曲で2010年発表です。アルバム『シンクロニシティーン』が発売された頃、毎日毎日聴いていたんですが、アルバム終盤に収録されたこの曲、歌詞がなんとも「飛んで」います。

今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY
外は大洪水 起きるとあぶないBABY

地球がなくなった 朝飛び起きたら
銀河を漂う わたしの家 OH OH なぜなの

地球がなくなってしまった 気がついたら
銀河のどこかへ消えてしまった OH OH どうしよう

きままな暮らしも もうできないのね
ドキドキしたり 楽しんだりしたいのに

難しいことは わからないけど
ひきつる顔であなたは言った 最後の夜に

今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY
外は大洪水 起きるとあぶないBABY
今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY
外は大混乱 寝てなきゃいけないBABY

作詞:真部脩一
作曲:真部脩一

小学生の描いたようなふにゃふにゃしたジャケット画、イントロ無しでいきなりボーカルから始まる緊迫感、どこか世界の終末を思わせる歌詞、疾走感のある演奏。浮遊感あふれるやくしまるえつこの声がこれらをまとめ上げます。

余談ですが、ファニーボイスの苦手な妻も、彼女の声は媚びるところがなくてとても魅力的だと言います(他のファニーボイス女性シンガーは結構酷評する妻の基準が私にはよくわからない(笑))。

きままな暮らしも もうできないのね
ドキドキしたり 楽しんだりしたいのに

ホントそうなんですよね。好きにどこかに出かけたり、映画を観たりライブを楽しんだり。そんな当たり前の日常が禁じられるなんて。

そもそも政府が感染症で緊急事態宣言を出す日が来るなんて、夢にも思いませんでしたよね。仮にあるとすれば地震か台風か、はたまたミサイルか。考えが浅かった。

今日から三週間 外でちゃダメだよBABY
外は大感染 起きるとあぶないBABY
今日から三週間 外でちゃダメだよBABY
外は大混乱 寝てなきゃいけないBABY

そんな風に読み替えれば、まさに「緊急事態宣言」。

アルバム『シンクロニシティーン』には、『ミス・パラレルワールド』という名曲も収録されているんですが、こちらにはこんな歌詞が。

相対性理論『ミス・パラレルワールド』

ひみつの組織が来て
8時のニュースが大変
都会に危機がせまる
巨大な危機がせまる

作詞:真部脩一/ティカ・α
作曲:やくしまるえつこ/永井聖一/真部脩一/西浦謙助

ちなみに『シンクロニシティーン』の元になったと思われる「シンクロニシティ(synchronicity)」という語は、有名なユング心理学用語で、「共時性」と訳されます。「意味のある偶然の一致」といった意味。

こっちは「一致」しないで欲しいんですが……。


まだ読了はしていないんですが、アルベール・カミュの『ペスト』を最近読み始めました。私も妻もまだ読んだことがなかったなという話になりまして、先日ワリカンで購入(セコイ)。

忙しくなかなか読書に割ける時間がないため、ちょっと読んでは仕事に戻り、ちょっと読んでは寝てという風に細切れ読書になってしまうんですが、そのせいもあって、新型コロナウイルスに翻弄される現実と、ペストの蔓延する小説世界が何かごっちゃになって来ます。

えーっと、あの話は現実だったっけ、小説の中の話だったっけ、みたいな。まあ、こういう読書体験ができる機会もそうそうないでしょうし(そう願いたい)、ある意味貴重な時期なのかもしれませんけれど。

ともあれ、現実世界では健康に過ごしたいですね。皆様もご自愛召しませ。