妻は高校の頃の同級生ですので、ずいぶん長い間一緒にいることになります。数えてみるともう30年以上。図らずも一緒に仕事をすることになったこともあり、おそらくは他のご夫婦より共にしている時間は長いのではないかと。
じゃあ好みが全面的に一致しているかというと、そうでもないんですよね。音楽の好み(いつもマニアックなのを聴いていると思われている)、本の好み(妻は女流作家好き)、乗物の好みなどなど、一致していないところの方がはるかに多い。
特に食の好みはもう正反対なんですよね。妻は複雑な味・新しい味を好む傾向があるんですが、私は単純な味・いつもの味を好みます。まあ、私が食に対する理解力が非常に低いだけなんですけどね。
例えば、外食をする際も、妻は新登場メニューとか変わった料理を頼みがちなんですが、私はいっつも同じものしか頼みません。一度食べておいしかったら、いつもそれでいいじゃん。失敗しなくていいじゃん。ココイチならいつも「チキンカツカレー」。他の物を頼んだ覚えがほとんどありません。新メニューなんかには目も通さない。
そんな考えを、妻にはいつも嘲笑されておりまして、「食の超保守主義者・食の右翼」と呼ばれています(笑)。いいじゃんかよ〜。食事って、人間の身体を形作るものだろう、人間の身体なんてそうそう簡単に進歩するはずがないんだから、食について保守主義になるのは事の道理なんだ、などと理屈をこねてみても、同意してはくれません。
そもそも、私がおいしいなと思うような物は、どうも妻の好みに合わないことが多いんですよね。
私「コーンフレークって、あれ、すっごく……」
私「おいしいよね!」 妻「まずいよね!」
旅行先の朝食にコーンフレークが出たら大喜びの私なんですが(ビュッフェスタイルだったら何杯も食べています)、こんなスカスカな食べ物の何がおいしいのか分からないとのたまわれます。
年齢的にあんまり甘いものをバクバク食べるのもどうかということで、カフェなんかでは二人で一つのパフェをシェアすることも多いんですが、よくありますよね、底の方がコーンフレークになっているタイプのパフェ。妻は「うわっ!上げ底になってた……」と評するんですが、私にとってはご馳走。そんな日は、上部:妻と私 下部:私という担当になります。シャクシャクシャクシャク。
他にも……
私「子どもの頃に食べたシャービック(ハウス食品のアイスの元みたいな製品です)って、あれ、すっごく……」
私「おいしかったよね!」 妻「まずかったよね!」
私「落雁(らくがん)って、あれ、すっごく……」
私「おいしいよね!」 妻「まっずいよね!」
妻「豚汁って、いっぱい具が入ってて……」
妻「おいしいよね!」 私「集中できなくて嫌なんだよな〜」
そんな感じで、ほとんど一致しないんですよね。「もしかして」「わたしたち」「入れ替わってる〜!」みたいにハモることは今後もなさそうです。
まあ、「何から何まで好みが一緒なんです!」「自分がもう一人いるのかと思うぐらい好みがぴったり一致するんです!」なんていうカップルや夫婦に限って、サッサと別れていたりするので、好みの一致と夫婦仲はあんまり関係なさそうなんですけどね……。