井上ひさしさんが亡くなりました。
大ファンというわけではないので、それほど多くの作品を読んでいるわけではありませんが、ユーモアを強く感じさせる小説家だったと思います。
私の伊能忠敬に関するイメージは、彼の『四千万歩の男』という小説でほぼ100パーセント形づくられております。文庫本で全5巻の長編小説ですが、あっという間によんだ覚えが。「一身にして二生を経る人生を全うした」という伊能忠敬の経歴は、長寿化が実現した今こそ振り返られるべきでしょう。
他に印象深いのは『吉里吉里人』。これも長編ですが、面白い面白い。大学生の頃に読んだ覚えがあるんですが、吉里吉里国が独立する際に、国際法を援用するシーンがあります。吉里吉里国の普通のおじさんが、田畑茂二郎先生(国際法の大家)の『国際法講義』を引っ張り出すんですね。折しも、ちょうど大学の授業で使っていた教科書なので大受け。井上ひさしさん、国際法をかなり真剣に勉強・調査されたのではないかと思います。
あと、ちくまの菊池寛選集の後書きが、すこぶる素晴らしい。私が菊池寛のファンになったのは、この人の後押しも大きかったように思います。
ご冥福をお祈り致します。