小論文課題についての参考資料 2009/05/13-1

授業に関係する連絡掲示板としての利用です。
関係のない方はお読み飛ばし下さい。

河合雅雄「進化におけるはみだし者の役割」に関する問題

<設問1>
ニホンザル社会の食文化を観察すれば分かる通り、安全や安定を基本とする世界を破り、新しい文化・価値観を創出してゆくには、弱者や被疎外者、変わり者の力が必要である。その意味で、優勝劣敗という競争原理や社会ダーウィニズム・優生学は強者の一方的論理にすぎず、破綻を来たす性質のものである。進化や進歩は、単層的な社会からは起こりえず、強者と弱者の混在する複層的な社会、多様性を内包する社会からしか生まれ得ない。 (200文字)

※200文字以内という条件ぴったりにしてみました。
※要約の手順は授業で説明します。

<設問2の概要例>
(命題提示)
弱者・被疎外者・変わり者こそが、新しい文化・価値観を生む原動力となるという筆者の主張→賛同する

(多数派を基準とする考えへの理解)
確かに
社会を組成する多数の者を幸福にするという考えも重要
↓また
現代社会では、スピーディーな意思決定が必要であり、多数決的な原理が好まれることも理由のないことではない

(少数者・弱者の立場を尊重する重要性)
しかし
右のような考えが過度に進められれば

多数者は弱者・被疎外者・変わり者を無視することができる、
ひいては支配する権利があるということになりかねない

これが人権無視であることは言うまでもないが、
何より、新しい価値観の創出や社会の進歩を妨げることが問題

(展開)
歴史を振り返るに、多数派は社会制度に安住しているため、社会の不合理性や不備を察知することが難しい

社会の不合理を敏感に感じとり、それを乗り越える新しい価値観を表現するのは、たいていの場合、弱者・被疎外者・変わり者

その表現行為の中に含まれる真理が、他の人々を感化し大きな潮流となってゆく=新しい文化・価値観の誕生

換言すれば、新たな文化・価値観は、弱者・被疎外者による、社会制度への批判から生まれることが多い

(結論)
とすれば
強者が弱者・被疎外者を庇護し、最大限尊重することこそが、新しい価値観の創出や社会の進歩を保証する

筆者の言う、複層的な社会、多様性を内包する社会はこうした社会に他ならない

より具体的には、多数者からすると一見不合理に見える、弱者側の言論や表現行為を受け止める寛容性が重要
∵)一見不合理に見える表現行為の中に真理が含まれている可能性は十分にある

日本社会には、比較的、弱者を軽視しがちな風潮がある
混迷する国際社会で生き抜くためにも、複層的な社会、多様性を内包する社会=真の意味での強さを持った社会を目指すべき

※あくまで参考としての概要なので、少し難しめに書いてあります。実際に書く答案はもっと粗くてもよいと思います。重要概念も含めて授業で解説します。

※本来、多数者=強者ではないんですが、あえてぼやかして使っています。800字程度なら、このあたりは深く踏み込まない方が得策だと思います。