関西の中学入試も本番まであとわずか。年が明けて以降、ひたすら仕事に打ち込んでおります。
私は仕事柄、 毎日毎日中学入試問題を目にしておりますので、近時の中学入試の国語問題が本当に難しくなってきたことを肌で感じています。いや、本当に難しい。
もちろん、大人である私が読んで理解するのに困難を感じるというわけではありません。個人的な感覚からすればとても平易な文章だといっていいでしょう。ただ、これを小学6年生、場合によっては小学5年生に読ませ理解させるというのは、本当に本当に大変なことなんです。
知識に乏しく、レトリックの作法も知らず、論理的思考も危ういところのある小学生に(まだ小学生なんだから当たり前なんですが)、抽象度の高い文章を理解させたり、詩的感覚を要求する文章を納得させたりして、その脳内の理解・納得を透徹した論理性のある文章として表現させる……。これ、どう考えても一般的な小学生には難しい。
もちろん、私も日々苦吟しつつ一生懸命頑張っているわけですが、私だけがいくら頑張っても生徒さんが良い答案を書けるようにはなりません。やはり、生徒さん側にも一定以上の努力が必要です。そこを飲み込んで、しっかり頑張ってくれる生徒さんは必ず成績が伸びますが、そのあたりの認識が甘いとなかなか成績は伸びません(どの科目でも同じことが言えるでしょうが)。
今日はある記事をご紹介したいと思います。令和の中学受験のレベルを客観的に描写する良記事です。
中学受験、親にも解けない難易度 国語は短編小説並み 中学編・安浪京子さん(中学受験カウンセラー) – 日本経済新聞
以下の引用部分は、安浪京子さんによる上記日本経済新聞記事から。
中学受験をするか否かを初めて検討する際、どのような勉強がどの程度必要なのか……までを把握している方はほぼいないだろう。中学入試で出題される問題は、公教育の範囲とレベルを大きく超越しており、専用の勉強が必要だ。
中学受験未経験の親は「小学生が解く内容だし、教科書に毛が生えた程度でしょ」と思われるかもしれない。しかし、高校入試や国立大学の入試と同様の問題が出題されることもある。中学受験経験のある親は「5年生から勉強を始めて合格できた」と自身を振り返るかもしれない。しかし、中学受験の激化によって、昨今の入試問題の難化・範囲の広がりには目を見張るものがある。
では、現在の中学受験の学習内容は具体的にどのようなレベルなのか。
(中略)
国語は50分で約6000字(芥川龍之介の羅生門とほぼ同じ文章量)、そこに設問の文字数が加わって約8000字を読んだ上で考えて解き、解答用紙に記入する必要がある。中には1万4000字を超える学校もあり、時間内に問題文を読み終えられない大人も多いだろう。説明文は新書からの出題は当然として、物語文で三島由紀夫の「豊饒の海」を出題した学校もある。
しれっと時間内に問題文を読み通せないレベルの大人をディスっていらっしゃいますが(笑)、本当に書かれている通りでして、一度保護者様には、実際の難関中国語入試問題を見てもらえれば(できれば解いていただければ)と思います。ほとんどの方が、これを小学6年生が解くの?と驚かれるかと。
昨日オンラインでニュースを見ていると、佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が、中学入試国語の難化について、公立高校の入試よりはるかに難しく、御自身が教鞭をとっていらっしゃる同志社大学の入学試験でも使えるレベルだと書いていらっしゃいました。
私も客観的に見て、難関中の国語問題と同志社大学の国語問題とは(もちろん古文を除いてですが)、それほど差はないように思います。同志社大学の国語は決して簡単な問題ではありません。関関同立の中では間違いなく一番難しいでしょう。それを11歳12歳の子が解かねばならないんですから、本当に並大抵ではありません。
では、そうした問題に対処できるようになるということは、すべての小学生が達成できる事柄なのか。残念ながら、私は首を縦に振ることはできません。
ここで先程の記事に戻ります。
中学受験を検討される際は、ぜひ書店で中学入試用の赤本を見てみてほしい。これを11〜12歳の子どもが解くのだ。そのためには膨大な学習量と時間が必要で、しかも解けるようになるとも限らない。入試問題の難化、及び最難関・難関中の合格者をより確保するため、大手進学塾はテキスト改訂によってより進度と難度を高めている。
この上位層向けの内容にナチュラルについていける子どもはごく少数であり、親のサポートは必至だ。これだけの勉強内容が本当に小学生のうちに必要なのか、ぜひ客観的に問うてみてほしい。
(中略)
“中学受験でしか得られない学び”などない。学びと成長は、本人自身が本気で向き合った時に訪れる。わが子のタイミングがいつなのか、赤本を見ながら考えてみてほしい。
とても納得のいく主張です。私も保護者様と面談をする際、 同趣旨のことをよくお伝えしています。勉強すれば絶対に難関中学に届くだけの学力が身につくかと言うと、それはやはり難しいと言わざるを得ないお子さんもいます。
しかし、それは勉強を諦めるべきだという意味ではありません。タイミング的に高校入学の時点で「受験」という機会を設けた方がいいというだけの話です。もっと言えば、大学受験の段階で思うような道が選べれば良いと思うんですよね。
いや、勉強は何時だって待ってくれています。本当に勉強をしたいのであれば、社会に出てからもいくらでも勉強の機会はあります。大学に戻ったっていい。
当塾としては、バリバリの難関中学を目指す生徒さんにはそれに応じた指導を、中堅校を目指す生徒さんにはそれに応じた指導を、また中学受験はしないがしっかり読解力をつけておき、将来役立てたいという生徒さんにはそれに応じた指導を提供しています。
その底には上記のような考えがあるんですが、今年もさらに充実した指導を提供できるよう努力したいと思います。