大手塾で国語を伸ばすことができるのは「国語のよくできる子」だけ
色々な方が当塾(宮田国語塾)の門を叩いてくださり、いつもありがたく存じておりますが、その中で比較的よく見るのは、大手中学受験塾に通っているけれど、どうも国語の成績が伸びない→何とかして中学入試に合格するための国語力を身に付けたい、というケースです。
あんまり正直に書くと問題があるかもしれませんが、大手塾で国語を伸ばすことができるのは、国語のよくできる子だけだろうと思います。「国語ができる子だけが国語ができるようになる」って、ほとんど笑い話だなと思うんですが、受験生やその保護者さんにとっては笑い話でも何でもありません。
私の感覚では、大手塾模試で国語の偏差値が少なくとも65ぐらいには達していないと、大手塾の授業は有効活用できていないのではないかと思います。
「聴く力」は「読解力」とほとんど等しい
誤解してほしくないんですが、大手塾の授業や指導が無意味だと言いたいわけではありません。大手塾が指導すべきだと考える内容や課題文を、その授業の中で「しっかりと聴いて理解する」ことができるならば、大いに効果が期待できます(もちろん、そういう生徒さんが合格を盤石なものにするため、当塾で鍛えるというケースもよくあります)。
ただ、読解力がまだ低い子の場合、小学生にとってはかなり抽象的で難解な文章についての解説・問題の解法を聞いても、なかなかスラッと頭には入ってこない。なぜなら、「聴く力」は「読解力」とほとんど等しいからです。「読解力」に乏しければ「聴く力」も乏しく、また逆に、「聴く力」に乏しければ「読解力」にも乏しい(この関係については、以前記事にしておいたので下記を御覧ください)。
そういうお子さんの場合、大手塾の「中学受験」対策国語授業を16歳ぐらいまで漫然と受講していても、国語偏差値はあまり変わらないのではないかと思います。試しに実験してみれば分かる……ってそんな人はいませんけれど。
子供一人一人の状況は大きく異なる
年々難化していく中学入試問題は、鳥瞰的に文章構造を眺めたり、抽象的な概念を理解したり、登場人物の複雑な心境を把握したりということを小学生に求めます。これは普通の小学生にはかなり酷なことであろうと思います。急にそんな能力が身につくわけではないので、地道に文章をたどる練習、人の話をしっかりと聴く練習をコツコツ続けるしかない。
国語の場合、その辺りの適性や進捗状況が、子供一人一人によって大きく異なるため、結局は子供一人一人の状況を細かく見定めて、事細かに指導の内容を調整・修正する必要があります。となると、指導はどうしてもごく少人数でしかできない、ということになります。
当塾も、できれば一クラスを一万人ぐらいにして大阪城ホールで毎週授業開催!なんてできればとてもラクチンですし、実入りも多くなるんですが、上記のような原理からそういう授業は不可能なわけです。
塾長来日ツアー決定!大阪城ホール3DAYS「論説文マ・ン・テ・ンツアー2022」、塾長が「ポイントはコ・コ・だぁ〜〜」と場内狭しと宙乗り、生徒さんはペンライトを振りながら勉強するみたいな。いや、日本人なんで来日も何もありませんが(笑)。
冗談はさておき、集団授業で国語が伸びない場合は、どうしても原理的に生徒さん一人一人の状況を毎授業・毎問題チェックしながら、指導内容を調整・修正するしか方法はありません。そういう意味で、当塾では一クラスを同様の学力帯にある2〜3名の生徒さんで編成しているわけです。結果、同じ問題を取り扱っていても、クラスや生徒さんによって、話す内容や説明する方法はかなり違っています。
あと、指導を進める前に、かなり細かめに保護者様からお話をお聞きしています。今までの勉強のご様子、成績の現状、性格的な側面、ご家族との関係性などなど。無理やりではないですが、学校や家庭でのエピソードなど、細かい点も可能な範囲で伺っておくと、後々指導の上で役立つことがある(それも結構頻繁にある)からです。
大手塾模試問題と難関中学入試問題には大きなズレがある
そうそう、もう一つ付け加えておきましょう。
こと国語に関しては、大手塾の模試問題と、難関中学の入試問題には大きなズレが存しているということです。嘘だと思われるなら両者を見比べていただければと思いますが、問題文の長さや出題形式からして大きく異なることが多い。
もちろん、どちらも広い意味での「国語力」を問うているものではあります。ただ、その方向性が異なっています。喩えて言うなら、「野球」と「ゴルフ」の関係のようなものでしょうか。どちらもスポーツ、しかも球技です。間違いなく共通性はある。
しかし、競技内容や身体の動かし方などは大きく異なるはず。野球の練習をどれだけ頑張っても、ゴルフはあまり上達しないでしょう。そりゃ、棒状のものを振る感覚ぐらいは向上するかもしれませんが、動いている硬球と静止しているゴルフボールでは大きく異なりますからね。ゴルフが上達したいなら、素直にゴルフの練習をするべきでしょう。
最初の話とも関係がありますが、「国語ができる子」は、大手塾の模試問題でも難関中学の入試問題でも、スムーズに得点できることが多いと言えます。これは喩えるなら、そもそも「スポーツ能力」「球技能力」が高いため、「野球」と「ゴルフ」の両方が難なくこなせている状況です。読解力が高いから模試問題にも入試問題にも対応できているわけです。
問題はしからざる場合。読解力がまだ未熟で、大手塾の模試問題と難関中学の入試問題の両方には対処できないという場合です。その場合(時期にもよりますが)、やっぱり入試問題に即応した勉強の方を重視すべきであろうと考えています。野球が上達したいなら素直に野球の練習を、ゴルフが上達したいなら素直にゴルフの練習をするべきであるというのと同じですね。
当塾では、大手塾の模試について疑問や質問があれば伺っていますが、それはせっかく時間を使って模試を受けた以上、身につけておかないともったいないという考え方によるものです。原則として、模試問題を素材にして通常授業をするということはありません。そんな時間があるなら、実際の入試問題を使って勉強するほうが効果的。
ご自宅で保護者様がご指導になっている場合は、文章や問題を上から解説しようとなさらず、お子さんの理解状況を細かくチェックしながら、問題とのギャップを埋めていく意識を持っていただければと存じます。