今号の雑誌「考える人」の付録に、小林秀雄の対談録音CDが付くようですね。
小林秀雄の対談録音したテープ見つかる NHKニュース
(上記ニュース、動画も含めて分かりやすく紹介されています)
何でも、亡くなる四年前の未公開録音、河上徹太郎との対談とのことで、今から楽しみです。先程、ネット上で今号を注文しました。
小林秀雄といえば、入試現代文の頻出中の頻出評論家。今でこそ流行から外れた感がありますが、私の高校生時代には、嫌というほど模試で出題されていた覚えがあります。私自身、国語は得意でしたので、小林秀雄が難解だとは思いませんでしたが、特に共感を覚えるような内容でもなく、ただの一評論家としか認識していませんでした。
今、この年になってみると、なかなか面白いことを言う人だなと思えるようになってきたんですが、その理由は、小林秀雄の著作がすべて自分の頭で徹底的に考えたことだけで出来ていることにあります。
意外に、自分の頭「だけ」で考えると言うことは難しいものです。前提となる知識が頭の中に詰め込まれていないとなりませんし、そもそも考えること自体がとても苦しい重労働です。これといった正解が用意されているわけではありませんからね。
大学教授などのアカデミックポストについていれば、教務や学内政治といった雑務に追われるため、その苦しさも紛れるかもしれませんが、小林秀雄がそうしたポストに長期間就いたことは無かったはず。思索に沈潜し、その成果を著作にするという孤独な作業をひたすらに行い続けた小林秀雄は、やはり偉大な精神的強者だったであろうと思うのです。
さて、小林秀雄の文章で著された作品は、上記の通りなかなか難解なんですが、講演の録音や対談集はかなり趣が異なります。一言で言えば、取っつきやすい。上質な落語のようにスルッと胸に入ってくるような感じと申しましょうか。何か、古今亭志ん生みたいな感じなんですよね。
私、小林秀雄と天才数学者・岡潔との対談集『人間の建設』を持っているんですが、さすがの小林秀雄も岡潔のぶっ飛んだ感覚にタジタジとなっているところがありまして、こういう人間味が読み取れるのも対談集のいいところです。
今年のセンター試験の平均点が下がったのは、小林秀雄が出題されたからだという説もあるようですが、それはどうでしょう。個人的には、「受験生の勉強不足=堅い評論文に慣れていない」というだけの話であるように思います。
なお、当塾関係者であれば、上記付録の対談CDをお貸しします。聞いてみたい方はお気軽にお声をかけて下さい。