九州大学が、2012年度から理学部数学科の入試に「女性枠」を設けるという話がありました。しかし、批判が多かったようで、あっという間に撤回。報道によると下記の通り。
asahi.com(朝日新聞社):九州大学が入試「女性枠」を撤回 「差別」批判受けて – 教育
九州大学(福岡市東区)は19日、2012年度の一般入試から理学部数学科の定員に「女性枠」を設ける計画を撤回すると発表した。女性研究者を増やす目的を掲げていたが、「男性への差別だ」との批判や「違憲のおそれ」の指摘を受け、この枠で合格する学生への影響も考慮した。今後も当面、枠は設けない。
九大は昨年3月、数学科の後期日程定員9人のうち5人を女性枠とすると発表。「優秀な女性の人材を育成しないのは社会にとっても損失」「女性ならではの視点と感性で教育、研究に多様性をもたらしたい」などの考えを示した。しかし、電話やメールなどで「男性差別につながる」「法の下の平等の観点から問題があるのではないか」などの批判があったという。
九大の入試に「女性枠」ができるという話を聞いたとき、まず思い浮かんだのが、憲法14条(法の下の平等)のことです。女性や少数民族といったマイノリティー(少数派)を優遇することの是非は、ずいぶん前から、憲法学で「逆差別」として議論されてきた話です。
もちろん、これが「私立」大学であるならば、法的な問題はありません(経営学的には問題があるかもしれませんが)。しかし、九州大学は「国立」大学。しかも旧帝国大学であります。そうした大学が、一般入試でこういう特別枠を設けるのは、やはりインパクトも大きく、問題があるように思います。
中学生の公民の授業でも時々説明しますが、原則として、憲法は、公権力(国や自治体など)と私人の間を規律する法規範です。何やらややこしい説明ですね。もう少し平たく言えば、憲法っていうのは国と一般人の間のルールですよ、一般人同士のルールではありませんよ、ということです(かなり雑な説明ですけれど)。
「僕が皆の中の誰かをえこひいきして、残りを差別しまくったとします。『○○さんは宿題をしなくてもいいよ~、遅刻しても全然かまわないよ~』『××君は宿題やらないと腕立て伏せ5000回だぞ、遅刻したら逆立ち1時間だぞ』××君は、差別だ!法の下の平等に反している!と思うかもしれません。でも、この場合、憲法は関係ありません。なぜなら、僕もみんなも一般人であって、国や大阪府の機関ではないからです。」
授業では、こんな感じで説明しています。
話がすこし脱線しましたが、国立大学が入試に女性枠を設けることには、少々問題があるというわけです。
でも、よく考えてみて下さい。国立大学には「女子大学」があります。具体的には、お茶の水女子大学と奈良女子大学です。そもそも大学自体が「女性枠」だと言えなくもない。男子は、受験機会すらありませんので、国立大学に絞って言えば、女子定員>男子定員ということになっています。
別に目くじらを立てるつもりはありませんが、やっぱり男は辛いですね(笑)。