画期的な政党名

そろそろ総選挙ですね。私はいつも早めに期日外投票をすることにしておりまして、今回も区役所での用事にあわせて投票を済ませてきました。

期日外投票開始日(10月20日)の朝一番に行くわけですから、「熱心な人」だと区役所の係員には思われていそうですが、別に政治に大いに興味があるとか、支持政党があるとかではないんです(どの党や候補者に投票するかは選挙のたびに考える)。

ただ、民主主義国家における政治参加は義務でもあり権利でもありますからね。自分の意志が国政に一番反映されるよう計算して投票するようにしています。

さて、投票ブースで比例代表制の候補党一覧を見てみると、やたらに長い党名があるじゃないですか。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」という党です。

このブログでは原則として、政治的意見を開陳したり称揚したりということはしておりませんので、あくまでも「政治的観点」ではなく「国語的観点」からのお話だとご理解いただきたいんですが、この党名、かなり画期的なのではないだろうか。

選挙でシングルイシューの可否を問うという趣旨から、論点そのものを党名に据える党というのは別段珍しいことではないと思います。今までにも「税金党」とか「サラリーマン新党」なんてのがありましたよね。「雑民党」は(党名からは分かりにくいものの)実際上は男性間の同性愛を擁護する党だったと記憶しています。

したがって、「NHKがどうたらこうたら」「弁護士法がどうたらこうたら」というシングルイシューを党名に掲げるのは別段新しい話ではないと思います(法的構成はここでは不問に付す)。

ただ、国語塾として気になるのは、党名に「倒置法」を使っているということなんです。そんなの、この党が初めてなんじゃないでしょうか。

本来の語順ならば、
「弁護士法72条違反でNHKと裁判してる党」または
「NHKと弁護士法72条違反で裁判してる党」
となるはずですから、かなり違和感のある党名です。

国語の問題にしてみましょう。

問題
「党名に使われている技法およびその目的を述べよ。」

模範解答
「倒置法。自党が『NHKと裁判している』ということを強調する目的。」

いや、国語の問題にしなくていいんだけどね(笑)。

もう一つ気になるのは、党名が「くだけた口語体」であるというところ。「裁判して『い』る党」ではなくて、「裁判してる党」なんですよね。これまた大変な違和感を覚えるところです。

小学低学年の生徒さんの解答を見ているとよくある表現なんですよね、これ。「お父さんがわらってるから」とか「お母さんがおこってるから」とか。もちろん、我々の方では見逃さずに「お父さんがわらって『い』るから」とか「お母さんがおこって『い』るから」と書くよう指導しています。口語体と文章表記ではおのずと違いがありますからね。

正式名に「くだけた口語体」が出てくるのも、これまた党名としては前代未聞なのではないかと思います。これも国語の問題にしてみましょうか。

問題
「党名に見られる表記上の特徴およびその目的を述べよ。」

模範解答
「正式党名であるにも関わらずくだけた口語体を用いているところ。正式表現をあえて避けることで、有権者との距離感を縮めるという目的。」

正解かどうかは知らんけど……(笑)。

有権者の皆さん、一票を大切にしましょうね。