クルマ派?バイク派?

昨年末、息子とともにプチ男旅に出かけてきました。

昨年は三月に大掛かりな旅を一回(鹿児島県の大隅半島南端)、それから小規模な旅を数回したんですが、いずれも移動手段は自動車。というのも、息子は大の自動車マニア。異常なほどの執心ぶりで、時間があれば自動車関係の書籍を読んだり、ウェブサイトを覗いたりしています。彼が車について語り出すと、何を話しているのかよく分からない。私、車にほとんど興味がないんですよね。

私はモーターサイクル一辺倒で、自動車を所有するつもりが全くありません。だって、面倒くさいし、お金もかかるし、そもそも自動車を所有すれば今以上にモーターサイクルに乗る時間が減るじゃないですか!(我が家で運転免許を持っているのは私だけなのです。) ありえない。私が車を購入するのは、多分バイクに乗れない年齢になってからだと思います。それも、かなり敗北感や喪失感にまみれながら。

息子からすると、そうした私の嗜好に不満があるようなんですが、その代わりにレンタカーやカーシェアリングで色々な自動車に乗れるだろ、そっちの方が同じ車に乗り続けるより勉強になるだろ、と説得して(ごまかして)おります。

実際、息子に聞くと、私と乗った車種は50種を超えているらしい。「らしい」というのは、私が全く車に興味がないので、全然覚えていないんですよね。こだわりがないので、大抵の場合は一番安くで借り出せる「コンパクトカー」を借りてくるんですが、そんなレベルの車でも、講釈を垂れられまくります。このモデルの特徴はうんたらかんたら、開発思想がどうたらこうたら……。知らんがな(笑)。メーカーも車名もよく分からないまま道具を操っているだけの私です。

「何なん、この加速の鈍さ。停止時から時速100kmぐらいなら、3秒台で到達しろよな〜。」
「何ワケの分からんこと言うてんの?そんな加速すんの、フェラーリとかの超高級スポーツカーしかないよ。」
「マジで?スーパースポーツ(動力性能の高いバイクとお考え下さい)やったら、どれでも3秒台やのに〜。退屈で寝てしまうよ、これ。」
「はぁ……(溜息)。」

「そもそもこんなサスペンションでよくみんな走ってるよ。これ水風船か何かが入ってるの?ボヨンボヨンというかブヨンブヨンというか。コンニャク?」
「しょうがないやんか、この価格帯のコンパクトカーって、必死でコストダウンしてるねんから。」
「確かに見えないとこだけど、なんぼなんでもこれは……。『路面に吸い付くような』とまでは言わないけど、まともなセッティングとか出せないの?」
「分かってないなあ……(溜息)。」

と、いつも同じような問答をしております。まあ、実用目的のコンパクトカーと、趣味的なモーターサイクルを比べても仕方がないんですけどね。

私なりの息子との妥協点は、いわゆるオープンカー。息子とは二人乗りのオープンカーで何度か旅行したことがあるんですが、これはなかなか楽しい。ちょっとだけバイク的な感覚があります。

といっても、やっぱりバイクの10分の1ぐらいの楽しみでして(普通の自動車の運転の楽しみはバイクの100分の1ぐらいだと思う)、現時点でオープンカーを買おうという気には全くならないんですけどね。

また、オープンカーの二人旅の話は別の機会にするとして。


大体、曲がっていく時は、全身を使ってカーブを味わいたいんですよ。ちょっとでも気を抜くと転倒するか、ガードレールを飛び越えていくか、というと大げさですが、やっぱり緊迫感のある乗り物に乗りたい。同じ速度を出すにしても、自動車では全く得られないスピード感が得られることも、この上ない喜びです。

地上を走る乗り物で最も面白いのはモーターサイクルだというのは間違いの無い結論だと思っているんですが、ほとんど賛同は得られません(笑)。

だいたい、乗物に求めているものが、自動車に乗る人と、モーターサイクルに乗る人とでは全く違うんでしょうね。

自動車のテレビCMなんかを見ていると、「安楽に移動できる」「積載性が高い」「家族団欒」「安全性能」なんて事柄が重視されているように思うんですが、これってモーターサイクルの正反対です。モーターサイクルは「全然安楽じゃない」「積載性ほとんどゼロ」「独りぼっちで乗るのが基本」「事故を起こすとあまり安全とはいえない」。

ある人が初めて大きなバイクに乗って言う。「なんでこれが合法なんですか?これって違法な乗り物じゃないんですか?」

いや、もちろん合法なんですけれど、自動車ではシートベルトをしないと道交法違反になってしまうということと、はるかに運動性能の高いバイク(もちろんシートベルトなんてありません)の運転が認められているということの間には、確かに矛盾があるような(笑)。

下に挙げた動画はイギリスのバイクメーカー、トライアンフのイメージビデオ。これ、本当によくできたCMでして、モーターサイクルの本質をよく表現していると思います。

Triumph Motorcycles – FOR THE RIDE

For the leaning in
For the powering out
For the wind in your face
And the sun on your back

For the isolation
And the friendships
For the destination
And the getting there

For the feeling
For the freedom
For the open road
And opening it up

For everything that makes you a rider
And everything you’re still searching for

ところどころ日本語にしてみると、もう「中二病」満開です(笑)。

「顔に浴びる風、背中に浴びる陽光」
「孤独、友情、目的地、到達」
「感情、自由、道を切り開く」
「あなたがいまだ探し続けるあらゆるものの為に」

青臭いと言うか、書生っぽいと言うか。自動車のCMが発しているメッセージとは、正反対といっていいほどでしょう。

ただ、こうしたメッセージが心の琴線に触れる人には(私ですね)、モーターサイクルは比類なく楽しい乗り物。

(ちなみに、この動画で紹介されているバイク、クルーザー系と特殊なものを除けば、ほとんどに乗ってみたことがあるんですが、トライアンフの3気筒エンジンは本当に素晴らしい出来だと思います。特にオンロードモデルは乗っていて笑いが止まらない。)


息子もいずれ自動車の運転免許を取るでしょうから、その暁には、私がバイクで、息子が自動車で一緒に出かけようぜ、という話をしています。しかし息子曰く、その頃には自動運転が一般化して、人間による運転が原則として禁じられているかも、と。

安全かもしれませんが、私たちに親子にとっては、あまり面白くなさそうな未来です。