入試国語 – 抜き出し問題のコツ・解法

いつもどうでもいい記事ばかり書いておりますが、結構な数の方々にご覧いただいているようで、恐縮至極。たまには役立つ記事も書かないとなりませんね。今日は本業の話、「国語の抜出問題の解法・コツ」について書いてみようと思います。

抜き出し問題にも文章の全体的理解が必要

入試問題にしばしば見られる「抜き出し問題」。一口に抜出問題と言っても、さまざまな難度の問題がありますが、今回は「比較的難しめの中学入試問題」を念頭に置いて説明してみましょう。

簡単な問題、例えば小学校内で行われるテスト問題であれば、何も悩むことはありません。問題になっている部分(傍線が引かれている部分)の直前直後を見るだけです。すぐに聞かれている部分が見つかるはず。何のひねりもない問題です。

もちろん、そうした問題にも意義はあります。まだ読解力の乏しい小学低学年の子を、注意深く文章に向き合うように仕向け、文章の中に根拠を求める姿勢を育てるという教育的意義ですね。

しかし、一定以上レベルの中学入試の場合、そんな安易な問題はまずありません。直前直後だけを見て解答が導き出せるのであれば、そもそも読解力を問う問題にならないわけです(余談ながら、受験塾の作る模試などは、そうした類いの問題が含まれていることがままあります。勉強してもほとんど無意味)。

いわゆる難関校の抜き出し問題は、ほとんどの場合、文章の全体的理解を前提としています。つまり、前後だけを探して答えを探し出そうなんて姿勢の受験生を落としにかかっている。国語の苦手な受験生からすると、勘弁してくれよという感じでしょうが、当塾で鍛えた生徒さんなんかは「よっしゃあ!」と思えるはず(少なくともそう思ってもらえるよう指導しております)。

難関中学は、位置的にものすごく離れた部分を抜き出させる問題が好きです。第1段落に傍線が引いてあって、抜きだし部分が第20段落にあるといった問題もザラ。これは「表面的な位置関係」ではなく「文章を全体的に把握したうえで、意味的な内部の連関・位置関係を理解して欲しい」という、国語科の先生方の願いが現れているんだろうと解釈しています。

どうすれば文章を全体的に把握できるのか

では、どうすれば文章の全体的な理解が可能になるのか。より正確に言えば、どうすれば解答部分を抜き出すために必要十分な理解ができるのか。

それにはまず何よりも、取り上げられている話題の位置を大まかでよいので頭の中にプロットしながら読むことです。もっと簡単に言えば、どこの部分に何が書いてあったかを「記憶」しながら読むことです。どの部分にどんなことが書いてあるかを意識しながら文章を読む。

個人的な経験からすると、国語の苦手な人は一様にこの作業が苦手です。漫然と出題文章を読んで、なんとなく分かった気になって、問題に取り掛かっている。

「○○君、この出題文章は『世界中で砂漠化が進行している』ということがテーマになっているのは分かったかな?」
「はい。」
「じゃあ、『中央アジアの砂漠化の話』は何段落に書いてたかな?」

ここで点が取れる人と取れない人の差が出ます。

点が取れる人

「第8段落です。」(即答)

点が取れない人

「えーっと、えーっと……。第5段落、いや違う、第7段落かな?」

第7段落は『南アジアの砂漠化』が取り上げられている段落だったりします。微妙に違う話題が取り上げられている。

こうした読解状況で、「中央アジアの砂漠化の現状をもっとも具体的に説明している一文を抜き出せ」という問題が出たとしましょう。どちらの人が正答に至りやすいかは、火を見るより明らかですよね。

どこに『中央アジアの砂漠化の話』があるかを把握している人は、第8段落をもう一度確認すればいいだけです。高い確率で正答に至ることができるでしょう。しかも、ごくわずかな時間で。

一方、話題の位置が把握できていない人は、出題文章を最初からふたたび読み始めることになります。羅針盤もなく漂う船のごとく、ふらふらと。正答に至るかどうかは運次第です。しかも、長い時間がかかってしまう。

取り上げられている話題の「位置」を頭の中で確認・記憶しながら読むこと。この重要性をお分かりいただけたでしょうか。

どのレベルまで文章内容の位置を把握するべきか

別に精密に位置を覚えろと言っているわけではありません。大まかな位置で構わないんです。私個人の感覚で言えば、こんな感じ。

「中央アジアの話は2ページ目の真ん中辺りだったな、その前では南アジアの話をしてたよな、3ページ目に入ったところでアフリカの話に移ってたな。」

そんな感じで十分なんです。どっちみち抜き出し解答を作成する際には、その部分を精読して書き写すわけですから。

こんな話があります。ある研究機関が、被験者に色々な作業・勉強をさせて脳波を測定してみると、「暗算」をしているときと「現代文の読解」をしているときの脳の活動部位がほとんど同じだったらしい。ソースが見当たらないので記憶を元に書いていますが、記事は「(一般にかけ離れていると思われている)算数と国語で脳の同一部位が活発化するというのは何とも不思議なことだ」という趣旨でまとめられていたように記憶しています。

私からすると、これは何の不思議もないどころか、極めて納得のいく話なんですよね。暗算とは「どの桁(位置)にどんな数字が入るかを記憶する」ということに他ならないと思うんですが、文章の読解も「文章のどこに何の話が書いてあるかという『位置情報』を記憶する」ということと極めて密接な関連を持っているからです。

どうやって位置情報を覚えるのか

そんな位置情報なんてなかなか覚えられないよ、という人もいるかもしれません。実はその能力はトレーニングによって向上するんですが、自分で向上させるのはなかなか難しいのかもしれません。

そこで、一つの手段としてお勧めするのは、「文章一般における論理の流れ方」・「文章の一般的な筋運び」をあらかじめ習得しておくという方法です。これ、言葉で書くと難解に思えますが、そんなに難しいことではありません。

平たく言えば、「普通は説明文ってこういう筋書きで進むよな」「論説文って最後の方に筆者の主張がまとめられていることが多いよな」というような知識・先入観を持っておくということです。

他にも、「具体例を列挙 → 一般論としてまとめる」「筆者の意見 → 補強としての他者の意見を引用」などなど色々なパターンがありますが、良質な問題・出題文を丁寧にこなしていけば、すぐに全パターンに触れることができるぐらいの種類しかありません。したがって、それほど労力・時間はかからないはず。

ある程度そうした「型」を身に付けた後は、実戦的に色々な文章・問題に触れて、「文章の意味と位置をリンクさせる能力」を磨いてゆけば良いという寸法です。

宮田国語塾の取り組み

もちろん、当塾ではそれだけではなく色々なことを考えて授業を進めています。生徒さんが文章のどの位置・部分を見ているか、どれぐらいの速度で文章を追っているか、彼らの視線をちらちらとチェックし、他にも様々な要素(理解力や習熟度など)を勘案した上で、適宜補助を出したりあえて放置したりするわけです。

明後日の方向の段落を見ている生徒がいれば、「○○君、この抜き出し問題、何段落を探せばいいと思う?」と誘導・修正し、段落自体が同定できている生徒がいれば、自力で探させるといった具合。

こうしたレベルで抜き出しや読解を指導しようとすると、同時に指導できるのは、どうしても2〜3名ぐらいが限界になります。5〜6名を超えれば、まず充実した指導は難しい。多人数を対象とする「普通の」授業になってしまいます。

これは講師の能力の問題というよりも、物理的な限界だと思います。この指導人数の問題は様々な話につながりますので、ここでは書ききれません(また機会があれば記事にします)。

また、抜き出すべき段落が見つかった後にも、解答を決定する際には細かな注意事項が色々とあります。「問いと解答の品詞レベルでの対応」とか「字数のチェック方法」とか。授業ではいつも注意している内容ですが、これまた、それだけでかなりのボリュームになってしまう話題なので、またそのうちに。

以上、抜き出し問題に関する話の一部だけになってしまいましたが、お役に立てれば幸いです。