貝殻節と『夢千代日記』

どうでもいい話なんですが。

出先でテレビを見ていると(スポーツジムの風呂場でテレビが流れているので否応なく見ることになるのです)、シナリオライター早坂暁氏が昨年亡くなったため、追悼放送をするとの告知をしていました。

亡くなったことも存じ上げなかったんですが、追悼の内容は『夢千代日記』の再放送との由。

私の持ち合わせていた知識は、「NHKの古いドラマ、吉永小百合演ずる芸者さん in 城崎温泉」ぐらいだったんですが、検索して調べてみると間違っていました。

舞台になっていた温泉街は湯村温泉(兵庫県美方郡新温泉町)だったんですね。湯村温泉を利用したことはないんですが、バイクや車で何度も通っているはずで、どこで間違えたのやら。同じ兵庫県日本海側、文学的なイメージ(志賀直哉『城の崎にて』)ということで勘違いしていたんでしょうか。

それはさておき、テレビでは、吉永小百合が「貝殻節」を舞うシーンが流れていました。う〜ん、何だかイメージが違う。

吉永小百合(夢千代)といういかにも垢抜けた美しい女性が、しなやかに舞う。実際に見たらうっとりするぐらい美しいはずで、確かにテレビの映像的には満点だと思うんですよね。しかも白血病(胎内で被爆したという設定なのです)の夢千代は、お座敷を勤める途中で、ふらつき倒れます。これ以上ないほどドラマチックな映像です(ちなみに、その場を取り繕うのが少し年配の芸者、樹木希林。これまたすごくいい演技)。

ただ、貝殻節って私のイメージでは漁師達の労働歌。重労働に耐える男達が、その辛さを忍ぶため歌い継いできた、ある意味泥臭いワークソング。鳥取県の帆立貝漁師の民謡です。

何の因果で 貝殻漕ぎなろた
(カワイヤノー カワイヤノー)
色は黒うなる 身は痩せる
(ヤサホー エーヤ ホーエヤ エーエ ヨイヤサノサッサ ヤンサノエー ヨイヤサノサッサ)

戻る船路にゃ 艪櫂が勇む
(カワイヤノー カワイヤノー)
いとし妻子が 待つほどに
(ヤサホー エーヤ ホーエヤ エーエ ヨイヤサノサッサ ヤンサノエー ヨイヤサノサッサ)

押せよ押せ押せ 港が見える
(カワイヤノー カワイヤノー)
押せば港が 近くなる
(ヤサホー エーヤ ホーエヤ エーエ ヨイヤサノサッサ ヤンサノエー ヨイヤサノサッサ)

歌詞にある通り、海上の重労働で真っ黒に日焼けした男達が、櫂を漕ぎながらオリャ!ヨイヤ!ソイヤ!と歌っているイメージなんですよね。

私も辛い重労働に従事するときは、ついつい口ずさんでしまうんです、というのは嘘ですが、ただ、漁撈のムードがよく出ていて好きな歌なんですよね。作詞家が机上で作った歌詞という感じは全くしません。

ただ、調べてみると、この貝殻節、テレビドラマの『夢千代日記』で全国的に有名になったらしく、案外、美しい女性がお座敷で踊るというのも間違いではないのかも……。

まあ、好きなイメージで楽しめばいいんでしょうね。

貝殻節踊夢千代