我が息子(幼稚園年長児)、ようやく自転車に乗れるようになったんですが、それにまつわるお話を。
子供用の自転車を購入したのが、幼稚園年中の秋頃。といっても、親の方としては、購入当初、補助輪付きで乗らせることしか考えていませんでした。
私自身、コマなしの自転車に乗れるようになったのは、小学1年生ぐらいだったような覚えがあるんですが、それであまり不便を感じませんでしたし、そもそも、こんな交通量の多い街中で、フラフラと危うい運転をされても怖くてなりません。本人も、補助輪付きの自転車に乗るだけで、大喜び&鼻高々なのでした。
ところが、去年の秋頃でしたでしょうか、副代表が幼稚園で話を聞いてみると、同じ年長クラスの園児達のほとんど全員が、補助輪なしの自転車にスイスイ乗っているらしい。
私が息子に「お前もコマなしで乗りたいの?」と聞くと、「うん!」と、力強い返事。その日から、親と子の汗と涙の自転車教習が始まったのでした(大げさ)。レンチで補助輪を外し、「もうこれで元には戻られへんで」と告げると、少し不安げに目を泳がせていましたが……。
私や副代表の都合上、なかなか練習時間が取れないんですが、わずかな空き時間を見つけては、近所の公園で少しずつ練習を重ねました。
本人のやる気に任せていたので、公園でウダウダするだけで終わる日があったり、ついつい他の遊びをしてしまう日があったりで、当初はなかなか練習が進みませんでした。子どもの成長に付き合うというのはそういうもの、焦ってみても仕方がありません。のんびり行くしかない。
そんなある日のこと。いつものように自転車後部の支え棒を私が押さえた状態で、二人してヨタヨタと進んでいると、何やら後ろから女の子の声が聞こえてきます。
「遅いな~!あんなん私やったら一発でブチぬけるわ!」
その後、自転車に乗った少女が、キコキコと私たちの横を通り過ぎてゆきます。見たところ、少女は息子より年下の様子。誇らしげな少女とお父さんは、我々を後目に、あっという間にはるか遠くに去っていったのでした。ちらりと息子を見やると、少しブルーになっている……。
その日以来、息子の練習に熱が入るようになりました(笑)。乗れるようになってから、その時のことを息子に聞いてみると、「少し涙が出そうになった」と述懐しておりましたので、この事件、息子にとって大きな契機となったのであろうと思います。
やはり子どもの成長には、それが全てではないにせよ、「競争」という側面が必要なのだとしみじみ思います。塾で生徒達を見ていていつも思うことでもありますが……。
それから数週間経ったある日、息子が起きてきて私に言います。
「今さっき、自転車にスイスイ乗ってる夢見てん!」
そういう夢を見ると言うことは、願望もあるのかもしれませんが、おそらく、脳の中で身体を動かすタイミングなどの情報が整理されてきたことを意味しているんでしょう。
「じゃあ、近いうちに乗れるはずや。もう少し練習頑張ってみよか。」
それからまた数週間後。突然にその日はやってきました。
ある日、自転車に乗せてみると、いきなりスイスイと進んでいきます!昨日はまだ乗れなかったじゃないか……。本人より私たちの方が驚きです。
結局、練習開始から2ヶ月弱で乗れるようになったんですが、鈍くさいところのある息子にしては、比較的スムーズだったような気がします。
今まで塾で色々なお子さんを見てきましたが、何かができるようになるとき、「突然できるようになる」ということが結構あります。こういう時って、目には見えずとも、子どもの脳や身体の内側では、着実に進化が起こっているんだろうと私たちは考えています。やはり、子どもの成長は、長い目で見る必要があります。
先日は、息子と二人して、初の遠乗り。予定していた大阪城公園のドーナツ店が満員だったので、さらに足を伸ばして天満橋まで出かけました。疲れていないか、チラチラと様子を見ながらのサイクリングでしたが、鼻歌交じりにペダルを漕ぐ息子はこの上なく上機嫌。天満橋で明石焼を食べたあと家路に就きましたが、帰路も大変スムーズでした。往復と寄り道で約7km。一月前はまだ乗れなかったのが嘘のようです。
息子と色々語り合いながら、自転車に乗っていると、とても不思議な気持ちがします。数年前はまだこの世に存在しなかった命が、鼻歌を歌いながらキコキコと自転車を漕いで、何やら自分の意見めいたものを言うわけですから……。育児って、本当に面白いものだと思います。