読書の春

ようやく春が来ました。仕事の方も繁忙期を終え、家庭の方でも息子の浪人生活が終了し、久々に肩の荷が下りた気分がします。

そんなわけで、好きな本を読む時間が以前より長めに取れるようになりました。嬉しい。

以前にも書いたかもしれませんが、私の場合、お風呂時間・トイレ時間・食事時間は必ずといっていいほど何かを読んでいます。ご飯を食べながら本を読むなと叱られそうですが、大人なんだから文句言わせない。というか、食事時間に読まないとなかなか読書時間が取れません。もちろん、家族や友人と食事をする時には、本を読まずに楽しく会話するぐらいの常識は持ち合わせておりますが。

布団の中で好きな本を読むのは最高の気分。夜更かしな私の場合、たいてい妻が隣で先に寝ているので、iPadを使って読書です(部屋の明かりをつけるとウザがられるのです)。

睡眠に関する本を読むと、「寝る直前にスマホやタブレットを使うな」「床についたら電子機器を使うな」とのアドバイスがよく書かれています。何でも、「脳が覚醒して眠れなくなったり睡眠の質を下げる」とのことなんですが、それって個人的には信じ難い。iPhoneやiPadを使って本を読んでいても、そのうち眠たくなってきてそのまま入眠、朝までぐっすりという私のような人も多いんじゃないでしょうか。

この十日ほどで読んで印象的だった本。

辛酸なめ子の世界恋愛文学全集

妻からもらった本。辛酸なめ子の文章と絵が私も妻も大好きです。根本的にとても賢く感受性の鋭い人だと思うんですよね。

高偏差値女子中高生の田山花袋『布団』に対する反応が書かれていて(彼女は東京の某難関女子中高一貫校出身)、超ウケます。上記作品、教科書に掲載されていたようなんですが、教室全員が「キモっ!」と(笑)。私も田山花袋作品の文学的価値というものはある程度認めますが、『布団』ってかなりしょーもない作品だと思っています。

あと、オウィディウス『恋の技法』(Ars Amatōria)、藤原道綱母『蜻蛉日記』が取り上げられているのがとても良き哉。

高丘親王航海記

澁澤龍彦の原作を近藤ようこがコミック化。全4巻。こちらは私が購入して読んだ後、妻も読みました。二人とも大絶賛。澁澤龍彦の遺作となった原作の方は読んでいないんですが、先にコミックで読んで良かったなと思います。独特の浮遊感・非現実感がなんとも言えません。

舞台は平安時代。高丘親王(平城天皇の皇子で嵯峨天皇の皇太子に立てられたが後の薬子の変により廃位)が天竺を目指して旅立ったのち消息を絶ったというのは歴史上の事実。そもそもその歴史的事実自体がなんとも不思議な気にさせられる話ですよね。求法の心止み難く、というのが理由ではあるんですが、平安時代の高貴な老年が命がけで天竺に行くなんて考えるかな、普通。

この作品では、幼年期の親王と藤原薬子(ふじわらのくすこ、父帝の寵姫)との触れ合いが、老年になっても心の奥底で彼を駆り立てているということが何度も示されます。「求法」よりもこっちの方が「人間ってそういうものかもしれないな」と納得させられます。私もそんな女性がいたら天竺に行ってたかも(笑)。

小林標 / ローマ喜劇: 知られざる笑いの源泉

今まさに読んでいる本。ちょっと訳あって、最近西洋古典関連の本をちょこちょこ読んでいます。全く知らなかった紀元前ローマ喜劇についての入門書ですが、めちゃくちゃ面白い。プラウトゥスやテレンティウスの作った喜劇をもとに、当時のローマの社会状況が示されるだけでなく、演劇という人間の営みについても考えさせてくれます。しかし、紀元前でこの演劇レベル。ローマ人凄すぎ。