チバユウスケの逝去を悼む

ちょっと、否、かなり驚きの訃報でした。
チバユウスケ逝去、享年五十五。若すぎないか。

日本のロック界で(というか世界を見渡しても同じなんですが)、私が「声」そのものに堪らない魅力を感じる男性ってそう多くはありません。

以前から「声」そのものが魅力的なロック系の日本人男性シンガー三人、という記事を書こうと思っていたんですが、二人は瞬時に思いつきます。一人はチバユウスケ。もう一人は浅井健一。でも、どうしてももう一人が思い浮かばない。

宮本浩次?甲本ヒロト?彼らの歌も好きですが、「声」に魅了されているのではありません。魅かれているのは、彼らの歌唱であったり、曲そのものであったりします。忌野清志郎?佐藤伸治?大好きな人達ですが、もう鬼籍に入られた以上、その声を直接に聞くことは叶いません。早川義夫さんも絶望的なまでに好きな歌手ですが、声に魅かれているのではないという気がします。吉野寿や坂本慎太郎も然り。山下達郎の声は私にとって「快」以外の何物でもありませんが、彼の場合、ロック系というよりはシティ・ポップという方向性にあります。

同性でありながら、その声を聞くこと自体が「快」となるロックシンガーというのはなかなか難しい。存命でいらっしゃってその「快」なる声を直接聞こうと思えば聞ける人。チバユウスケはそんな一人でした。

日本語話者として思う事なんですが、日本語とゲルマン系言語では日常会話で使う音域が違う気がするんですよね。日本語の方が音域が高く、ゲルマン系言語は低い。自分で何か文章を朗読してみても、そういう傾向があるし、色々な人の声・会話を聞いていてもそう思うことが多いんですよね。

そういう意味で私は、日本語で歌うロック系シンガーと、それ以外の言葉で歌うロック系シンガーを、ある程度別のジャンルに属する人達だと考えています。なかなか表現しにくいんですが、同じロックでありつつも、言語的背景が微妙に歌の色彩を変える。

話が大きく逸れましたが、チバユウスケの声は「日本語の声」として素晴らしく、得難いものだったと思います。しわがれたようでいてどこか色気のある声とでも申しますか。彼の声が、彼の紡ぎ出す意味不明な詩を、私の頭の片隅に焼き付ける。

個人的には、ミッシェル・ガン・エレファントより ROSSO や The Birthday 時代の方が、より歌を近しく感じることができましたが、いずれにせよ荒々しい歌や言葉に反して、隠しきれない上品さや知性がチラリと見えることがままあったように思います。そんなところも大好きな人だったな……。

私がよく口ずさむいくつかの曲をご紹介します。

男臭さの極地みたいな曲がいい。Lツインでもボクサーでもパラレルでもいいんですが、二気筒エンジンをアクセルガバ開けで回している感じ。

ROSSO-アウトサイダー

The Birthday – 夢とバッハとカフェインと

涙がこぼれそう / The Birthday

寂しいけれど、ご冥福をお祈り致します。