最近また「奨学金」の話がよく報道で取り上げられているようです。以前に何か似たような話を書いたような気がするなと思って調べてみると、4年前にこんな記事を書いていました。
読み返してみて、その通りだなと思います。自分で書いた文章ですから、当たり前なんですけれど。特に、引用させてもらった純丘曜彰氏の記事は、かなり手厳しいものですが、一般的な奨学金制度の問題点を鋭く突いたものになっていると思います。
こうした実情をしっかり調査していれば、または、高校が生徒達にしっかりとインフォームしていれば、奨学金による破産なんてそうそう発生しないと思うんですけどね。
今後、少子化によって大学の破綻が増加することはほぼ確実なわけで、なりふり構わず学生を入学させようとする大学側が、低い学力にもかかわらず軽い気持ちで大学進学を考えている学生・家庭を、奨学金返済の沼に突き落とす事態はますます増加してゆくのかもしれません。
どうしてこんな話をしているかというと、先日ネットでニュースを読んでいてかなり驚いたからなんですよね。
「奨学金受けた息子亡くし8年、夫婦に265万円の督促状」という、朝日新聞2018年2月14日の記事です。
息子さんの受けていた奨学金の一括返済を求める督促状が、父親の元に届く。総額265万円。息子さんは8年前に死去(39歳の若さで癌でお亡くなりになったとの由)。
内訳は185万円の借用、80万円程度返済済み。残金と利息の合計で123万円。そこに延滞金142万円(割合は不明だが息子さんの死後の延滞金も入っているとの由)が加算されて、総計265万円ということらしい。
息子さんが若くしてお亡くなりになったことは、大いに同情します。我が子を失うことほど、世の中に辛いことはないだろうと私も思います。そして、父親が息子の奨学金返済延滞状態を知らなかったのであれば、息子さん死後の分の延滞金までいきなり請求されることには不合理を感じるのももっともな気がします。
ただ、記事を見ると、父親は奨学金債務の連帯保証人。う〜ん、これはどう考えても支払わなくてはなりません。連帯保証人の責務は非常に重いもの。主たる債務者(息子さん)が支払えなければ、そりゃ連帯保証人に返済請求が来ます。それが連帯保証というシステムですからね。というか、連帯保証人がいる(=返済をバックアップしてくれる人間がいる)からこそ、お金が貸してもらえるわけで。
もちろん、連帯保証制度というのが異常に酷なシステムだ、ということは言えるでしょう(実際、法制度の見直しが行われている)。ただ、連帯保証人になるということを大人として理解・納得して契約しながら、あとで文句を言っても通りません。
社会人としては当たり前すぎるそんな法的常識を、全く否定するかのようなこの記事。個人的には、首を傾げざるをえません。契約というのは重いもの(文学的に言えば一種の「呪い」だと思う)。契約する前によく考えないと。
この歳になるとよく分かるんですが、やっぱり、学問とか勉強とかって、本当に贅沢なことなんですよ。
自分が勉強好きだから余計にそう思うのかもしれませんが、自分の知的好奇心の赴くままに、好きなことを学んだり研究したりするのは、この上なく楽しいことです。正直に言えば、好きなことの勉強・研究だけして暮らせたら、どんなに楽しいかと思うことがしばしば(笑)。いや、仕事も大切ですけどね。
思い切り勉強に専念できる環境にある人は、自分が素晴らしく恵まれた環境にあると認識して欲しいなと思います。そして、その環境を経済的にバックアップしてくれる人々に感謝して欲しいですね。
これに関して、とある医療記者さんが書いていた記事が秀逸でした。
BuzzFeed News「勉強が嫌い」だった私に伝えたいこと
プロフィールや記事を見ると、筆者の朽木誠一郎氏は国立大学医学部を卒業されたものの、医師にはならず、医療記者をなさっている方なんですが、4年後になって国試を再受験された際の感想がまとめられています。
少し引用します。
特に最終学年では、病院実習と部活も終わり、ただ勉強することを求められた。一日中、ひたすら勉強をしていればよかった。その環境がどれだけ貴重か、今ならわかる。
責任のある仕事をするために、勉強をするのは当たり前だ。例えば、医療記者である私がジャーナリズムの本を読んだとしても、誰もほめてはくれない。ましてや一日中、本を読んでいるだけで「仕事」と認められることもない。
仕事は仕事として成果を上げないといけないから、勉強にはプラスアルファの時間が必要になる。「一日中、勉強をしていればいい」なんて、なんと贅沢なことだろう。
勉強が嫌いだった私は、国試に落ちた。それから4年後の秋、2回目、つまり今回の国試を再受験することに決めた。フルタイムで仕事をしながら、合間に勉強をした。思うように勉強の時間は作れなかった。せめて、直前は有給をもらった。
率直な文章で、心を打たれました。今年合格されるのか、来年合格されるのか、それは私も存じ上げません。ただ、きっといい医師(またはさらに優れた医療記者)になられるだろうなと感じました。
長くなってしまいました。まとめ。
奨学金を借りるなら熟考して相当の覚悟を。
学問・勉強は本当に贅沢なこと(だから楽しい)。