米国大統領の就任式には、色々なミュージシャンが参加しますが、その面々から大統領の文化への理解度・教養のレベルが見えてくると思うんですよね。政策面は別論、文化的な側面では、前オバマ大統領はなかなか優れた人だったと思います。
現大統領のトランプには、そうした文化への高い理解・教養が明らかに欠けていると思うんですが、これは政治面では特にハンデにならないというか、支持層によっては有利に働くこともあるんじゃないかと思います。「しちめんどくさい教養なんて知らねえよ、俺たちの合衆国を強くしてくれりゃいいんだよ」式の人たちが支持層である場合ですね。
そんな観点から今回の就任式に参加したミュージシャンを見ると、案の定、オバマの時に比較して、ちょっと、否、かなり見劣りがします。1枚2枚下回るというレベルではなく、5枚6枚下回るという感じ(参加したミュージシャンには悪いですが)。
オバマの大統領就任式に参加したミュージシャンは下記の通り。
ビヨンセ
ブルース・スプリングスティーン
U2
ジョン・レジェンド
ジェームス・テイラー
ジェニファー・ネトルズ
シャキーラ
スティーヴィー・ワンダー
アッシャー
ハービー・ハンコック
メアリー・J・ ブライジ
ベティ・ラヴェット
ジョン・ボン・ジョヴィ
ガース・ブルックス
シェリル・クロウ
ウィル・アイ・アム
ジョン・メレンキャンプ
これなら、かなりの高額チケットでも納得できる一流の面々ですよね。個人的には、ジョン・レジェンドとジェームス・テイラーのステージ、スプリングスティーンのステージが見たかったなあ。
ちなみに、スプリングスティーンは高校生の頃に大阪城ホールで見たんですが、本当に素晴らしいライブでした。今以て「ボス」の名をほしいままにする彼のステージをまた見たいなと。
一方、トランプの大統領就任式。
トビー・キース
3ドアーズ・ダウン
リー・グリーンウッド
ザ・フロントメン・オブ・カントリーミュージック
ピアノ・ガイズ
DJラヴィドラムズ
サム・ムーア
クリセット・ミッシェル
ジャッキー・エヴァンコ
ビッグ＆リッチ
トニー・オーランド
ごめん、全然興味ありません(サム・ムーアのステージはちょっと見たいけれど)。というか、知らないミュージシャンが多い。近所のショッピングモールに営業に来ててもあんまり見にいく気になれないレベル(笑)。
おそらく、色々な著名ミュージシャンに声は掛けたんだろうと思いますが、断られたんじゃないだろうか。もちろん、トランプ自身の選択ではなくて文化面のブレーンが手配しているはずですが、どうも冴えない面々です。
実際、Mobyにオファーがあったらしいんですが、こんなツイートでコケにしまくっています。
Hahahahaha, I was just asked by a booking agent if I would consider djing at one of the inaugural balls for #trump… Hahahahaha, wait, Hahahaha, really? I guess I’d DJ at an inaugural ball if as payment #trump released his tax returns. Also I would probably play public enemy and stockhausen remixes to entertain the republicans. I’m still laughing. Hahahaha. So #trump what do you think, I DJ for you and you release your tax returns?
マジで？笑うわ。ほんま笑えるわ。共和党員を楽しませるために、パブリック・エナミーとシュトックハウゼンのリミックスをお見舞いしてやろうかな。ほんま笑えるわ。
という感じなんですけれど、Moby、仮想プレイリストまで作成するという念の入れよう。好きだな、こういう人(笑)。
Moby’s Trump Inauguration Playlist on Spotify
パブリック・エナミーにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、クラッシュといったハードな面々だけでなく、ディラン、サム・クック、ジョン・レノンのメッセージ性の高い曲も入れているのがとてもいい。
プレイリストの最後を飾るのは、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」。ご存知の方も多いとは思いますが、この曲はまれに見る陰惨なジャズソングです。米国南部の木に揺れる奇妙な果実。それは白人のリンチに遭って吊り下げられた黒人の死体。血が滴り、カラスに啄まれ、腐り果ててゆく遺体。
向こう数年、米国の文化行政は少し後退するのかもしれませんね。
