織田作之助先輩の『夫婦善哉』と夫婦商売

最近知ったんですが、NHKが織田作之助の『夫婦善哉』をドラマ化しているんですね。主演は尾野真千子(蝶子)、森山未來(柳吉)。1回分を見ましたが、キャスティングがいいですね。しっかり者の「やとな」蝶子、もひとつ頼りない「あほぼん」柳吉のムードが良く出ています。この人物像は関西弁をもってしか表現出来ませんが、調べてみると主演の二人とも関西出身。うん、いい。

今年はオダサクこと織田作之助の生誕100周年。実は私、オダサク直系の後輩にあたります。彼の卒業した旧制大阪府立高津中学校は、私の母校大阪府立高津高等学校。彼の通った第三高等学校は今の京大に当たります。オダサク先輩は三高を中退してしまうんですが、ま、それは愛嬌ということで。

そんな事情から、織田作之助先輩の小説にはかなり親近感を持っています。特に短篇『木の都』などは、先輩が私のために書いて下さった小説、私以上にこの小説を心で味わえるものは居まい、とまで思っています。オダサク先輩はこんな不肖の後輩を「こいつ、あほちゃうか」と笑っていらっしゃるとは思いますが(笑)。

織田作之助 木の都

大阪の庶民を描かせて右に出る者はおらぬオダサク先輩ですが、何かブログには書きにくいんですよね。親近感がありすぎて。生まれ育った場所も近所、高校・大学も一緒、最初の奥さんの旧姓は「宮田」(私の親戚ではありません)、墓所は楞厳寺というこれまた近所のお寺。しかもイケメンで夭折、あ、これは私との相違点か。

そうそう、川端康成への私怨を持っていらっしゃったようですが、いきさつを聞いてみると、私としてはとても納得がいきます。後輩という立場を差し引いても、私は織田作之助支持派です。

そんなこんなで、オダサク先輩のことも書いてみたいと思っていたんですが、今日は「夫婦」に話頭を転じようかと。


小説『夫婦善哉』は、夫婦愛の物語(だと私は思う)。この夫婦、二人で商売をしてはしくじるということを繰り返します。読者は「もう、何でそんなスカタン(間抜け)なことするかな」と思いながら読むことになるんですが、それが何となく大阪下町の夫婦っぽい雰囲気をかもし出します。

よく考えてみると、私たち夫婦もある意味「夫婦商売」。二人で塾を営んでいるわけで、ま、格好良く言えば『夫婦善哉』の世界です(笑)。

夫婦で一つの仕事をランニングしてゆくということは、意外に人の興味を引くようで、仕事の話を他人にすると、結構根掘り葉掘り聞かれることがあります。で、大体において反応も決まっています。

多くの男性は私に「奥さんと一緒に仕事できていいなぁ、楽しそうだなぁ」と言い、多くの女性は妻に「いつも御主人といっしょにいててしんどくない?ちょっと可哀想かも」と言う(orそういう雰囲気をにじませる)んですよね……。嗚呼、男と女はかくも違えり。

私「なぁなぁ、夫婦で同じ仕事してるって言うと、女の人ってよく複雑な顔をするよな。どう思う?」

妻(少しニヤニヤして)「……」

私「なんで無言やねん!何か言うてよ!」(涙)

ま、何とかうまくやっているので、あまり詮索しない方がいいのかも。何度か妻と二人で食べたことがありますが、また南地法善寺横丁のぜんざいでも奢って妻の機嫌を取ろうかと思案中(笑)。


ご興味のある方はどうぞ。そんなに長い作品ではありません。
織田作之助 夫婦善哉