地球温暖化はかっぱえびせんの如し

ようやく暖かい日が続くようになってきました。冬よさようなら。 寒いのが苦手な私は、地球温暖化をもっと早く進めてくれないかな、なんて思うんですが、そんなこと塾ブログで言ってはなりませんね。

地球温暖化が本当に全て人間のせいで進んでいるのかどうかは疑いのあるところですが、ここでは教科書通り「人間の活動によって地球温暖化が進行している」としましょう。また、「ストップ地球温暖化」という掛け声も教科書通り正しいとしましょう。

でも人間が本当にその地球温暖化を止めることができるんでしょうか。私はかなり悲観的です。人間ごときが地球に何ができる。ウイルス一つに翻弄される人間に。ちょっとの地面の揺れに右往左往する人間に。

まあ常々そんな気持ちでいるわけですが、少し前読んだ文章(生徒さんから預かった模試問題)に面白い比喩を見つけました。日高敏隆先生がお書きになったものです。

ある時代から人間は、科学の力で自然を制御できると思いはじめ、今もそう信じているが、それは明らかな間違いだ。

自然には人間がわかっている以上のたくさんの変数があり、自然をいじってダメにすることはできるけれども操ることはできない。

ちょうど、何も知らない素人が、電車を止めることはできても、電車全体を運行させることはできないように。

自然を動かしているシステムはもっと複雑だ。

これは日高先生の面目躍如たる分かりやすい比喩ですね。

確かに電車を止めるのは一個人にも簡単にできることです。イタズラで緊急停止ボタンを押すとか、虚偽の爆破予告をするとか、場合によっては投身するとか。でも、電車運行システムは極めて複雑なものであり、プロ中のプロ達が豊富な経験をもとに運営しているはずで、一個人のコントロールしうるものではありませんよね。

それならもっと複雑な自然を人間がコントロールするなんて、なおのこと無理だよ、とおっしゃるわけです。

もちろん、原子力や遺伝子の操作のように、人間は自然現象の一部分を止めたり進めたりはできるようになったかもしれない。ほかの動物にくらべれば、少しできるようになったのだろう。

しかし全部は無理だ。それでいばってしまったらおしまいだ。

その意味で、地球温暖化もそう簡単に止められないだろうと思う。化石燃料が大気のバランスを壊す一因になったとは思うが、気候変動そのものは、地球に人類が生まれる前から起こっている複雑な自然現象だ。

日高先生のような碩学でさえ、「ストップ地球温暖化」なんてほぼ無理筋だとおっしゃるわけで、能天気に「地球温暖化を止めよう!」と小学生に教えるのが正しいのかどうか甚だ疑問です。まあ、塾がそんな差し出がましいことを言うのも不適切なので、黙って教科書通り「ストップ地球温暖化」と教えているんですけれど……。

そういう意味で、ガソリン車からEVやPHEVのような電気自動車への性急な移行もかなり冷たい視線で眺めています。「電気=クリーン」というのはほとんど洗脳に近いと思うんですけどね(火力発電や原子力発電のもたらす環境負荷は大きい)。

地球温暖化はやめられない止まらない。地球温暖化が「かっぱえびせん」に似ていると思うゆえんです。

ケミストリー、こんなCMに出てたんだ、知らんかった……。