性アホ説・性愚説・曽我部恵一『バカばっかり』

いきなりですが、性善説とか性悪説ってありますよね。人間の本質が「善」であるか「悪」であるかという話です。

漢文なんかを読んでいると、人間を「善」「悪」のいずれかに措定して論を進めていくものがありますが、人間がそんな単純なものであるはずもなく、なんか説得力を欠くよな、とさすがに思います。45歳にもなると。

でも、強いて人間の本質を言うならば、「阿呆」ということではなかろうか。人間はみんな大なり小なり阿呆なんじゃないか。性アホ説。ちょっとかっこよく言えば性愚説。本当に賢ければ、不合理な世の中、不合理な考え、不合理な行動、そしていつかは死なねばならぬという合理性の無さに耐えられないのではないか。阿呆だからこそ生きていける。「ちょっと足りない」ことこそ生存の必要条件ではないか。もちろん私も自他共に認める阿呆の一人です。

だから、私は「俺の周りは馬鹿ばっかりだ」「どうしてこうも私の関わる人はアホばっかりなのか」という(よくある)言説に同調することができません。それは当然すぎるくらい当然のことです。「私の周りには空気がいっぱい存在している」「どうして水は上から下に流れるんだ」と怒っているに等しい気がするわけです。人間の本質は「阿呆」なんだから怒ったってしようがない。

でも、時に、当たり前のことではあるけれど、そんなことを忘れて「ほんまにアホばっかりやな」と言いたくなる日もあります。弱い立場の人に思いやりを持たない人に出会った日。誠意を欠く人に振り回された日。偽善をむき出しにしている人に困惑させられた日。

誤解のないように書いておきますが、私が賢いなんて主張しているわけではありません。むしろ阿呆の筆頭です。ただ、偽善者や不誠実な人間がちょっと苦手、いや正直に言えば、大嫌いなだけです(笑)。


曽我部恵一「バカばっかり」【Official Music Video】

曽我部恵一(そかべ・けいいち)を見ていると、高校の頃の先輩と話している様な気になります。どことなく進学校っぽい青臭さがある。そしてそれが大好きなんです。私も熱心なリスナーというわけではありませんが、いつも気にかかっているミュージシャンの一人。

バカばっかり
バカばっかり
バカ野郎がまたすべてをめちゃくちゃにしてく

バカばっかり
バカばっかり
バカ野郎がまた言葉に火をつけ燃やしてる

バカばっかり
バカばっかり
バカ野郎が自分の描いた絵に酔って泣いてる

曽我部恵一『バカばっかり』より引用

ふふふ。然り。大いに然り。
2015年5月12日の私の思いの代弁です。
一緒に大声で歌いたい。

そして、怒りを発散したら、(曾我部君のように香川県出身ではないけれど)私もうどんを食べて気を取り直しましょうか。